災厄のななつのこ

予感

私達は、心霊スポットの撮影の為にある神社に来ていた。
神社といっても、小高い丘の上にある古い祠があるだけの小さな神社だった。
木製の鳥居を潜り石段を少し駆け上がると、あっけないほどに容易くたどり着いた。
「ここが、子供が行方不明になった神社ですね」
「ええ、黄昏時には絶対に近づいてはいけないと近所では評判でした。もっとも、私達は誘拐や変質者に出合わない為に親達が考えたウソだと思っていましたが」
「実際に同級生が行方不明になった？」
「噂ですがね。たんに転校したのかもしれないし。ただ、その話は結構有名で新聞にも行方不明事件として載った気がします」
「はい、カット。オープニングはこんな感じかな」
馬場の声を聞いて、私はカメラを止めた。
少し郊外に出ただけだが、町の喧騒から離れたからか、風の音以外に一切音がしなかった。
神秘的で厳かな雰囲気に、圧倒されたのか私も直里も押し黙ってしまった。
馬場がカメラの写り具合をチェックしていた。
聞き耳を立てると、風にまじるように微かな子供の笑い声を聞いた気がした。
身震いし、周囲を見渡すが近所の子供がいるような様子はない。
「何か聞こえた？」
私が直里に確認するが何も聞こえなかったようだ。
馬場の合図でもう一度、カメラを回りし始め撮影を再開した。