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6日間留守にした家に帰ると当然のようにお母様からの暴力が待っていた。
躾のためと言われて木の棒で打たれながらも、一切泣き言は言わなかった。
バシッ!
普段のワタシなら泣きながら謝り続けていたかもしれないが、私はそうはしなかった。
「なぜ、困らせるようなことばかりするんだい。生きているだけで、迷惑をかけているんだから、せめて私の役に立て!」
肩や首にめがけて木の棒が振り下ろされる。
バシッ!バシッ!
私が身構えもしないので、お母様は少したじろいだ様子だった。
「今日はやけに萎らしいじゃないか!けどね私の目は誤魔化せないよ」
バシッ!
「はっきり、身体に、分からせないと」
バシッ!
「はぁはぁ、謝罪の言葉はないのかい、6日間も仕事をほったらかしにして」
「ごめんなさい、お母様」
私はお母様の目を真っ直ぐに見つめて満面の笑みを浮かべてみせた。
「あ、あ、なんだい。まだ躾が足らないのかい」
「お母様、お母様の気持ちがよく分かったわ。いくら言葉を尽くしても誠意を尽くしても、心がこもってなければいけないということを」
「そ、そうよ口だけで謝ったって反省していることにはならないんだよ」
いつもと私の様子が違うためか、表情の中に怯えが感じ取れた。
「私は感謝しているの。大切な事をお母様が教えてくださったのだから」
「そ、そうよ。感謝されこそすれ恨まれる筋合いは……」
「お母様!」
語気を強めて、一歩近づくと何故かお母様の方が身を引く。
「な、なんだい」
「恨むだなんて、私そんな事を一言もいいませんわ」
にっこりと私が笑うと、お母様は手に持っていた木の棒を放り上げた。
「反省したなら、部屋に戻りなさい。私がいいと言うまでそこから出ることは許さないからね」
そういって母親は、私を子供部屋に押し込めた。
そこには一切の家具はなく、机代わりの木箱が一つあるだけだった。
寝床代わりに敷かれた毛布は、もはや毛羽立って土にかえりそうな有様だった。
私は、許してと泣き叫ぶかわりに木箱を踏み台にして、窓の鉄格子にピンク色の薄い布切れを結びつけた。
そして、真っ暗な天井に手を伸ばした。
気付くかもしれないし、気付かないかもしれない。
それならそれで、いくらでも方法はあるのだ。
私は待つことにした。
ただ静かに、どんな音も聞き漏らすまいと耳をそばだてることにした。
風の音、酔っぱらいの騒ぐ声、隣りに住んでいる老人のいびき。
どれほどの時間がたったかは分からないが、たしかにそれは聞こえた。
「ンナ、ハンナ!そこに居るのか!」
私は
「ここに居るわ、助けて!」
とカラカラになった喉でその声の主に叫んだ。
躾のためと言われて木の棒で打たれながらも、一切泣き言は言わなかった。
バシッ!
普段のワタシなら泣きながら謝り続けていたかもしれないが、私はそうはしなかった。
「なぜ、困らせるようなことばかりするんだい。生きているだけで、迷惑をかけているんだから、せめて私の役に立て!」
肩や首にめがけて木の棒が振り下ろされる。
バシッ!バシッ!
私が身構えもしないので、お母様は少したじろいだ様子だった。
「今日はやけに萎らしいじゃないか!けどね私の目は誤魔化せないよ」
バシッ!
「はっきり、身体に、分からせないと」
バシッ!
「はぁはぁ、謝罪の言葉はないのかい、6日間も仕事をほったらかしにして」
「ごめんなさい、お母様」
私はお母様の目を真っ直ぐに見つめて満面の笑みを浮かべてみせた。
「あ、あ、なんだい。まだ躾が足らないのかい」
「お母様、お母様の気持ちがよく分かったわ。いくら言葉を尽くしても誠意を尽くしても、心がこもってなければいけないということを」
「そ、そうよ口だけで謝ったって反省していることにはならないんだよ」
いつもと私の様子が違うためか、表情の中に怯えが感じ取れた。
「私は感謝しているの。大切な事をお母様が教えてくださったのだから」
「そ、そうよ。感謝されこそすれ恨まれる筋合いは……」
「お母様!」
語気を強めて、一歩近づくと何故かお母様の方が身を引く。
「な、なんだい」
「恨むだなんて、私そんな事を一言もいいませんわ」
にっこりと私が笑うと、お母様は手に持っていた木の棒を放り上げた。
「反省したなら、部屋に戻りなさい。私がいいと言うまでそこから出ることは許さないからね」
そういって母親は、私を子供部屋に押し込めた。
そこには一切の家具はなく、机代わりの木箱が一つあるだけだった。
寝床代わりに敷かれた毛布は、もはや毛羽立って土にかえりそうな有様だった。
私は、許してと泣き叫ぶかわりに木箱を踏み台にして、窓の鉄格子にピンク色の薄い布切れを結びつけた。
そして、真っ暗な天井に手を伸ばした。
気付くかもしれないし、気付かないかもしれない。
それならそれで、いくらでも方法はあるのだ。
私は待つことにした。
ただ静かに、どんな音も聞き漏らすまいと耳をそばだてることにした。
風の音、酔っぱらいの騒ぐ声、隣りに住んでいる老人のいびき。
どれほどの時間がたったかは分からないが、たしかにそれは聞こえた。
「ンナ、ハンナ!そこに居るのか!」
私は
「ここに居るわ、助けて!」
とカラカラになった喉でその声の主に叫んだ。
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