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ビギナー
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「おじさん、退屈だから私達もカードやりたい!」
「しっしっ、餓鬼のお守りはごめんだ。あっちいきな」
「えー、遊びたい!ママにお小遣いもらってきたのに、ねぇナディ」
私達というのは、私と貴族の娘ナディアである。
ナディアは小さく頷いた。
「ほう、嬢ちゃん達、お金を持ってきたのかな」
痩せ型の1人の商人が食いつく。
「おい、やめとけ。小遣い程度で」
「まてまて、ちなみに幾ら持ってきたんだい?」
「えーとねぇ、私数の数え方分からないの。1トルクの半分って幾らなのかな」
「わかんない」
ナディアも分かっていないようだった。
「500ルクか、流石貴族の娘だな」
「はぁ、辞めとけばいいのに」
乗り気なのは痩せた商人1人だけで、あとは渋々といった様子だ。
「私達、子供だから手加減してよね」
「よし、分かった。おじさん達がたっぷり可愛がってやろう」
賭け金はナディアのものではないが、そこは訂正しないでおく。
「ありがとう、おじさん」
私は大袈裟に抱きついてみせる。
「はは、元気のいい嬢ちゃんだ。ルールはわかるのか?」
「うーん、さっき見てただけだからあまり分からない、最初はちょっとだけ賭けていい?」
「あぁ、もちろんだ」
「やったぁ、じゃあこれだけね」
私は手持ちの賭け金の1/5を差し出した。
大人達は思わず顔を見合わせてニヤける。
「ナディ、ここに座ってカードを持っててね」
「うん」
配られたカードをナディアに持たせる。
なかなか悪くない手札だった。
私はナディアの耳元で囁く。
それを聞いたナディアは嬉しそうな顔をしていた。
「ふむ、なかなか難しいな」
私がナディアの後ろにいるので、協力者の男はのぞき見できない。
「さぁ、俺は14だ」
「ちっ ‥バースト」
「私はえーと」
「すごいな嬢ちゃん達の勝ちだぜ」
私達の手は役でいえば最高の手だったようだ。
賭け金は3倍になって戻ってきた。
イカサマでは、最初に鴨に華をもたせる事が多いが、たまたまだろうか。
「じゃあね、今もらったやつ全部かけるね」
私は300ルクを、そのまま差し出した。
「いいねぇ、チマチマ賭けるよりツキがあるうちに勝負したほうがいいからね」
「ナディア、じゃあまたカードを持ってね」
私はわざと、後ろの商人から手札が見える位置に立ってみた。
コホッ、コホッ。
わざとらしい咳払いが聞こえる。
今度の手はあまり良くないので、追加でカードを引いてみたが合計しても9にしかならない。
ナディアはあからさまに残念な顔をしている。
「どうしようかなぁ、自信ないし俺はこのままいく」
「俺もそうするぜ」
男達は追加のカードを引かなかった。
結果は10と12だった。
本来なら、追加して高い役を狙うのが定石だが、イカサマでこちらの手が分かっていたからだろう。
「あーあ、せっかく勝ったのに無くなっちゃった」
「そういうもんさ、運がなかなったな」
「じゃあねぇ、次は残り全部賭けるね」
私達は400ルクを躊躇わず差し出す。
この勝負で全てが決まるということだ。
「おっと、なかなか強気だが。負けたら全部無くなっちゃうぞ」
「次は勝てるもん」
「いいだろう、さぁカードを配ろう」
私は配られたカードは確認せずに、所定の位置についた。
後ろの商人からはギリギリ見えない。
「ナディ、あとはお願いね。私が神様に祈ってあげる。だから、絶対に負けないはずよ」
私はその場でクルクルと回りながら舞を披露する。
コホ、コホ、ゴフ。
ナディアの表情は落胆している。
「うーん、俺は辞めようかな」
「俺は引くぞ」
痩せた商人はカードを引き、もう1人は降りる。
ナディアは新しいカードを引かなかった。
1人目は14、2人目は19だった。
そして私達のカードは20だ。
「な、なに」
「そんな、バカな」
男達は戸惑っていた。
「これって、私達の勝ちだよね。やっぱり神様にお祈りしたおかげかな」
手元のお金は1200ルクに増える。
「すごいな、嬢ちゃん達は本当についているな」
「まさにビギナーズラックだな」
「このまま勝たれたら、おじさん達大損だよ」
「えへへ、じゃあこれで」
私達は1200ルクを全部放出した。
男達の表情が少しだけ焦っているのが分かる。
「ちょっと待ってくれないか」
「んー、どうしたの」
「少しだけ、喉が乾いたから水を飲んでくる」
太った1人の男が立ち上がり、他の商人に何か話している。
「すまない、じゃあ再開しようか」
そして、カードが配られる。
「しっしっ、餓鬼のお守りはごめんだ。あっちいきな」
「えー、遊びたい!ママにお小遣いもらってきたのに、ねぇナディ」
私達というのは、私と貴族の娘ナディアである。
ナディアは小さく頷いた。
「ほう、嬢ちゃん達、お金を持ってきたのかな」
痩せ型の1人の商人が食いつく。
「おい、やめとけ。小遣い程度で」
「まてまて、ちなみに幾ら持ってきたんだい?」
「えーとねぇ、私数の数え方分からないの。1トルクの半分って幾らなのかな」
「わかんない」
ナディアも分かっていないようだった。
「500ルクか、流石貴族の娘だな」
「はぁ、辞めとけばいいのに」
乗り気なのは痩せた商人1人だけで、あとは渋々といった様子だ。
「私達、子供だから手加減してよね」
「よし、分かった。おじさん達がたっぷり可愛がってやろう」
賭け金はナディアのものではないが、そこは訂正しないでおく。
「ありがとう、おじさん」
私は大袈裟に抱きついてみせる。
「はは、元気のいい嬢ちゃんだ。ルールはわかるのか?」
「うーん、さっき見てただけだからあまり分からない、最初はちょっとだけ賭けていい?」
「あぁ、もちろんだ」
「やったぁ、じゃあこれだけね」
私は手持ちの賭け金の1/5を差し出した。
大人達は思わず顔を見合わせてニヤける。
「ナディ、ここに座ってカードを持っててね」
「うん」
配られたカードをナディアに持たせる。
なかなか悪くない手札だった。
私はナディアの耳元で囁く。
それを聞いたナディアは嬉しそうな顔をしていた。
「ふむ、なかなか難しいな」
私がナディアの後ろにいるので、協力者の男はのぞき見できない。
「さぁ、俺は14だ」
「ちっ ‥バースト」
「私はえーと」
「すごいな嬢ちゃん達の勝ちだぜ」
私達の手は役でいえば最高の手だったようだ。
賭け金は3倍になって戻ってきた。
イカサマでは、最初に鴨に華をもたせる事が多いが、たまたまだろうか。
「じゃあね、今もらったやつ全部かけるね」
私は300ルクを、そのまま差し出した。
「いいねぇ、チマチマ賭けるよりツキがあるうちに勝負したほうがいいからね」
「ナディア、じゃあまたカードを持ってね」
私はわざと、後ろの商人から手札が見える位置に立ってみた。
コホッ、コホッ。
わざとらしい咳払いが聞こえる。
今度の手はあまり良くないので、追加でカードを引いてみたが合計しても9にしかならない。
ナディアはあからさまに残念な顔をしている。
「どうしようかなぁ、自信ないし俺はこのままいく」
「俺もそうするぜ」
男達は追加のカードを引かなかった。
結果は10と12だった。
本来なら、追加して高い役を狙うのが定石だが、イカサマでこちらの手が分かっていたからだろう。
「あーあ、せっかく勝ったのに無くなっちゃった」
「そういうもんさ、運がなかなったな」
「じゃあねぇ、次は残り全部賭けるね」
私達は400ルクを躊躇わず差し出す。
この勝負で全てが決まるということだ。
「おっと、なかなか強気だが。負けたら全部無くなっちゃうぞ」
「次は勝てるもん」
「いいだろう、さぁカードを配ろう」
私は配られたカードは確認せずに、所定の位置についた。
後ろの商人からはギリギリ見えない。
「ナディ、あとはお願いね。私が神様に祈ってあげる。だから、絶対に負けないはずよ」
私はその場でクルクルと回りながら舞を披露する。
コホ、コホ、ゴフ。
ナディアの表情は落胆している。
「うーん、俺は辞めようかな」
「俺は引くぞ」
痩せた商人はカードを引き、もう1人は降りる。
ナディアは新しいカードを引かなかった。
1人目は14、2人目は19だった。
そして私達のカードは20だ。
「な、なに」
「そんな、バカな」
男達は戸惑っていた。
「これって、私達の勝ちだよね。やっぱり神様にお祈りしたおかげかな」
手元のお金は1200ルクに増える。
「すごいな、嬢ちゃん達は本当についているな」
「まさにビギナーズラックだな」
「このまま勝たれたら、おじさん達大損だよ」
「えへへ、じゃあこれで」
私達は1200ルクを全部放出した。
男達の表情が少しだけ焦っているのが分かる。
「ちょっと待ってくれないか」
「んー、どうしたの」
「少しだけ、喉が乾いたから水を飲んでくる」
太った1人の男が立ち上がり、他の商人に何か話している。
「すまない、じゃあ再開しようか」
そして、カードが配られる。
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