傾国童女〜これから国を滅ぼします〜

絃屋さん  

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バランス

私達は2人で1枚ずつカードを手にしていた。
後ろの商人からは恐らくナディアのカードしか見えない。
ふぁ~。
わざとらしい欠伸が聞こえる。
「じゃあ、私達は1枚引くね」
その時点で、私達のカードの合計は17だった。
「俺も引くぞ」
男は先程とは違い、ゆっくりとカードを引く。
しかも、なぜか一番上ではなく下のカードを引いたようだ。
「は?、な、なんだこれは」
「ん、どうしたんだ」
しかし、予想が外れたようだ。
「なぁ、お前も引いた方がいいんじゃないか」
なぜか新たにカードを引くようにもう1人 の男に促す。
「え、でも」
本来ならば、最初の痩せた男が引いた時点で私達が負けるはずだったのだろう。
2人目の太った商人は、勝負をしなくてはならない。
「ちくしょう、バーストだ」
男達は何故か勝てるはずの勝負に負ける。
「はい、17」
「11だ」
痩せた男の目は全く笑っていない。
3600ルクは、大金なのだろう。
「全部賭けるね」
「ちょっと待て、そんなに焦る事はないだろう。馬車ももうすぐ目的地に着く頃だし」
「え?私達、焦ってないですよ。すごく退屈だったから皆さんが遊んでくださって、楽しく過ごせました」
「ん、あぁ」
「あ、分かってますよ。皆さんがちゃんと手加減して下さったことは。じゃなかったら、子供の私達がこんなに上手く勝てるわけないですよね」
「そ、そうだな。まぁ、所詮は遊びだからな」
「どうしますか?最後にもうひと勝負する?」
ここまで来たら何が何でも男たちは賭け金を回収したいところだろう。
「やってやる。これで負けても泣くんじゃないぞ」
どちらかというと、男たちの方が泣きたい気持ちだろう。
「じゃあ、3600ルクス全部で」
「いいだろう」
カードが配られる。
手札はかなり弱めだ。1と6
「結局は最後に勝てばいいのよ」
太った商人は逆に強い手のようだ。
後ろから合図をおくっていた商人が咳払いをする。
「俺は勝負しない」
「じゃあ、私達は引くね」
別にイカサマをしている訳ではなかった。
それは先程、男が自分達だけにわかるようにつけた印がついたカードだと気付いた。
「20」
「俺も20だ」
「ってことは引き分けだね」
「ふう、ひさびさにハラハラしたぜ。さぁ、目的地に着く頃だしこの辺で」
痩せた男がカードを片付けようとする。
「まだだ、うちの島では引き分けになったらコイツで勝敗を決めるんだ」
太った男は、ポケットからコインを取り出した。
そしてそれを上に弾いて手の甲に乗せる。
「私達、どっちが表でどっちが裏か分からないんです 
「チャシャ公の顔が描いているほうが表だ。さぁどっち?」
私は悩んでも分からないので、ナディアに任せる事にした。
「うーん、じゃあ表かなぁ」
「表でいいんだな」
「うん、私もそれでいいよ」
男は細工をしていないということをアピールするために、手の甲をそのままテーブルに横滑りさせた。
そして、まさにその手を開こうとした瞬間にいつのまにか近くにいたフレイが男の手首をひねり上げた。
「いてて」
「あっ……」
男の手からゲームの勝敗を決するであろうコインが落ちる。
だが、なぜかそこには2枚のコインが現れた。
「な、なんだお前は」
「お兄さん、あんまりこの子達を虐めないでやってくれよ」
「なんだと!」
「ここにいるみんなが証人だ、さぁコインは裏か表か検分しようじゃないか」
2枚のコインを見たギャラリーは、このペテン師たち罵倒を浴びせる。
「皆さん、コインは表ですか?裏ですか?」
「おもてに決まっているだろー」
ほとんどの乗客が表だと宣言した。
カードのイカサマで協力していた商人達ですら、コインは表だと。
しまいには、痩せた商人も表だと言うしかない状況だった。
「わかってると思うがこの失態はボスに報告させてもらう。子供相手だからとすぐバレるようなイカサマを持ちかけた時点でお前の負けだ」
「そ、そんなぁ」
「108000ルクスはあんたらのものだ。そして、これも受け取ってくれ」
痩せた男はさらに、1000ルクス上乗せで配当金を渡してくる。
「この金はお詫びだ。せっかくの楽しいゲームに水をさしてしまった」
「大丈夫です、別に言いふらしたりしませんから」
「助かる」
意外にもすんなり、お金の受け渡しがされることになった。
ナディアの母親は、一切お金を受け取らず。
「遊び相手になってくれてありがとう」
とお礼を言われた。
「また遊ぼうね」
「うん、またね」
私達は無事に馬車を降りることができた。
「この世界では騙されたやつが悪い。だが、騙すやつのほうが悪いのは間違いない」
「フレイさん、ありがとうございました。最後まで、打ち合わせ通りに動いてくださって」
「流石にヒヤヒヤしたが、退屈な馬車の旅を有意義に過ごせてなによりだ」
「約束通り、前借りしたお給料はお返ししますね」
「はは、律儀だな」
「大金を持って歩くのは怖いですね。さっきの馬車に乗っていた人間なら女と子供が金を持って歩いてるというのを知っていますし」
「そうね、余計なリスクを背負ってしまったとも言えるけど。とりあえず次の街に知り合いがいるからボディーガードでも雇いましょう」
「はい」
今回はなんとか馬車の運賃ぐらいは稼ぐことができた。
しかし、相手がイカサマをしてこなければ危なかったかもしれない。
私達は、次の目的地に向かった。


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