傾国童女〜これから国を滅ぼします〜

ロード

馬車を降りると、そこもまた田舎町のようだった。
ただ、しばらく歩くと道が石畳に代わり、見たこともないような景色が広がっていた。
「あれはなんですか？　」
「ここはスアン街道と呼ばれる街道だよ。この道は首都まで伸びる3つの大きな道の1つね」
「へぇ、これが道……大きな河かと思いました」
「レーベン山道、ヴァナハ鉄道、そしてこのスアン街道を辿れば必ず首都にたどり着ける」
「なるほど、でもこんなに大きな道を作る意味はあるんですか？」
「そうね、単に物資を運ぶ為に道が整備されているというのもあるけれど人が行き来する事で経済を動かす意味もあるの」
「そうなんですね」
「わざわざ荒れ地や森林を通らなくても商隊が荷物を運べるというのは重要なことよ、それに……」
「それに？」
「軍の派遣のしやすさ、関所で通行料を取り立てたり、道は繁栄の象徴とも言えるわね」
村にいた頃は、こんな広い世界を見ることができるとは思わなかった。
ただ、目の前のこと、生きるのに必死で。
「さっきのイカサマ商人たち、追ってきませんね」
「顔を見られているから、迂闊な事はしないと思うけれど、念には念を入れておきましょう」
「護衛を雇うんですか？」
「雇うんじゃない、傭兵は稼業の1つなんだから。もうすぐよ」
街道に併設するように、その兵舎はそびえ立っていた。
オニキス商会の旗とともに。