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神様の子供
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それから、女性達のいる部屋に連れていかれると黄色い歓声があがった。
「きゃぁ、かわいい」
「ほっぺたプニプニじゃない」
「こっちも、ちっちゃいわね」
半裸の女性達の目の光に圧倒され、助手のエミルにしがみつくのが精一杯だった。
「エミルくん、助けてくれ」
情けない甲高い声を出す姿は、人見知りの幼子が母親に助けを求めているようにしか見えないだろう。
「先生、大丈夫ですよ。怖くない、怖くない」
なぜか、子供をあやすように揺らしながら言った。
「えーと、なんでこんなことになったのか整理してみたいんだが」
「わかりました。ちょっとまってくださいね」
エミルは鞄からノートと鉛筆を取り出して手渡そうとした。
だが、上手く握ることが難しく。
鷲づかみにするような持ち方になってしまった。
「うーん先生、字はかけますか?」
「どういう意味かね?」
「見たところ、先生のお姿は2、3歳くらいに見えますがその真ん丸なお手々で字がかけるのかどうか、気になりまして」
「ワシは幼い頃は、神童と呼ばれていたんだ。これくらいは造作も…ん、造作もなくない」
頭の中には、しっかり漢字もローマ字もイメージできているが、指先の神経がまだ発達しておらず、ミミズがダンスをしている絵がそこには現れた。
「えーと、神童と呼ばれたのは10歳くらいだったかな」
「3歳で、ここまで流暢に話せるなら充分神の子といって差し支えないのでは?」
「ん、神の子?そうか、秘祭の時にもしかするとワシ自身が島の洗礼を受けたという事か?」
「え、どういう事ですか?」
「島のものは持ち出せないのがルールだったはずだ」
「はい、外から持ち込まれたもの以外は処分したはずです」
「恐らく、これは仮説だが。洗礼を受けた事でワシは島の所有物になったということだ」
「はぁ、でも島民のみなさんは特にお変わりないようですが」
「彼ら、彼女らは島の外に出稼ぎや交流に出ても、いずれは帰ってくるだろう。しかし、ワシは帰るわけじゃなく島を出ていくんだ」
一つ一つ整理していくと、もう一つ気がつくことがあった。
「しきたりの中に、産まれたままの姿という一文があったのを覚えているか?」
「そう言えば、裸になるって意味だと思っていましたがもしかして、文字通り若返るという意味だったんでしょうか?」
「わからん。そもそもこの令和の時代に、神の力やその罰が下るというのが信じがたい」
「そうですね」
整理した内容を、ノートに書くつもりでペンを動かしていたが、そこには保育園児が描いた意味不明な潰れた丸や三角のイラストが記されていた。
「このまま島を出ても大丈夫なのかは解らないが。少なくとも若返りは収まったようだな」
「先生、ちょっと気になる事があるのですが……」
「ん、なんだ?」
「ちょっと髪の毛がフサフサになっている気がします」
「なんと!成長しているというのか!」
「いえ、たぶんそうではなく」
とエミルは歯切れが悪い。
「ん?」
「もともと無いようなものでしたが、完全に消失したみたいです」
「きゃぁ、かわいい」
「ほっぺたプニプニじゃない」
「こっちも、ちっちゃいわね」
半裸の女性達の目の光に圧倒され、助手のエミルにしがみつくのが精一杯だった。
「エミルくん、助けてくれ」
情けない甲高い声を出す姿は、人見知りの幼子が母親に助けを求めているようにしか見えないだろう。
「先生、大丈夫ですよ。怖くない、怖くない」
なぜか、子供をあやすように揺らしながら言った。
「えーと、なんでこんなことになったのか整理してみたいんだが」
「わかりました。ちょっとまってくださいね」
エミルは鞄からノートと鉛筆を取り出して手渡そうとした。
だが、上手く握ることが難しく。
鷲づかみにするような持ち方になってしまった。
「うーん先生、字はかけますか?」
「どういう意味かね?」
「見たところ、先生のお姿は2、3歳くらいに見えますがその真ん丸なお手々で字がかけるのかどうか、気になりまして」
「ワシは幼い頃は、神童と呼ばれていたんだ。これくらいは造作も…ん、造作もなくない」
頭の中には、しっかり漢字もローマ字もイメージできているが、指先の神経がまだ発達しておらず、ミミズがダンスをしている絵がそこには現れた。
「えーと、神童と呼ばれたのは10歳くらいだったかな」
「3歳で、ここまで流暢に話せるなら充分神の子といって差し支えないのでは?」
「ん、神の子?そうか、秘祭の時にもしかするとワシ自身が島の洗礼を受けたという事か?」
「え、どういう事ですか?」
「島のものは持ち出せないのがルールだったはずだ」
「はい、外から持ち込まれたもの以外は処分したはずです」
「恐らく、これは仮説だが。洗礼を受けた事でワシは島の所有物になったということだ」
「はぁ、でも島民のみなさんは特にお変わりないようですが」
「彼ら、彼女らは島の外に出稼ぎや交流に出ても、いずれは帰ってくるだろう。しかし、ワシは帰るわけじゃなく島を出ていくんだ」
一つ一つ整理していくと、もう一つ気がつくことがあった。
「しきたりの中に、産まれたままの姿という一文があったのを覚えているか?」
「そう言えば、裸になるって意味だと思っていましたがもしかして、文字通り若返るという意味だったんでしょうか?」
「わからん。そもそもこの令和の時代に、神の力やその罰が下るというのが信じがたい」
「そうですね」
整理した内容を、ノートに書くつもりでペンを動かしていたが、そこには保育園児が描いた意味不明な潰れた丸や三角のイラストが記されていた。
「このまま島を出ても大丈夫なのかは解らないが。少なくとも若返りは収まったようだな」
「先生、ちょっと気になる事があるのですが……」
「ん、なんだ?」
「ちょっと髪の毛がフサフサになっている気がします」
「なんと!成長しているというのか!」
「いえ、たぶんそうではなく」
とエミルは歯切れが悪い。
「ん?」
「もともと無いようなものでしたが、完全に消失したみたいです」
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