秘密の島の童唄

絃屋さん  

文字の大きさ
5 / 6

神様の子供

しおりを挟む
それから、女性達のいる部屋に連れていかれると黄色い歓声があがった。
「きゃぁ、かわいい」
「ほっぺたプニプニじゃない」
「こっちも、ちっちゃいわね」
半裸の女性達の目の光に圧倒され、助手のエミルにしがみつくのが精一杯だった。
「エミルくん、助けてくれ」
情けない甲高い声を出す姿は、人見知りの幼子が母親に助けを求めているようにしか見えないだろう。
「先生、大丈夫ですよ。怖くない、怖くない」
なぜか、子供をあやすように揺らしながら言った。
「えーと、なんでこんなことになったのか整理してみたいんだが」
「わかりました。ちょっとまってくださいね」
エミルは鞄からノートと鉛筆を取り出して手渡そうとした。
だが、上手く握ることが難しく。
鷲づかみにするような持ち方になってしまった。
「うーん先生、字はかけますか?」
「どういう意味かね?」
「見たところ、先生のお姿は2、3歳くらいに見えますがその真ん丸なお手々で字がかけるのかどうか、気になりまして」
「ワシは幼い頃は、神童と呼ばれていたんだ。これくらいは造作も…ん、造作もなくない」
頭の中には、しっかり漢字もローマ字もイメージできているが、指先の神経がまだ発達しておらず、ミミズがダンスをしている絵がそこには現れた。
「えーと、神童と呼ばれたのは10歳くらいだったかな」
「3歳で、ここまで流暢に話せるなら充分神の子といって差し支えないのでは?」
「ん、神の子?そうか、秘祭の時にもしかするとワシ自身が島の洗礼を受けたという事か?」
「え、どういう事ですか?」
「島のものは持ち出せないのがルールだったはずだ」
「はい、外から持ち込まれたもの以外は処分したはずです」
「恐らく、これは仮説だが。洗礼を受けた事でワシは島の所有物になったということだ」
「はぁ、でも島民のみなさんは特にお変わりないようですが」
「彼ら、彼女らは島の外に出稼ぎや交流に出ても、いずれは帰ってくるだろう。しかし、ワシは帰るわけじゃなく島を出ていくんだ」
一つ一つ整理していくと、もう一つ気がつくことがあった。
「しきたりの中に、産まれたままの姿という一文があったのを覚えているか?」
「そう言えば、裸になるって意味だと思っていましたがもしかして、文字通り若返るという意味だったんでしょうか?」
「わからん。そもそもこの令和の時代に、神の力やその罰が下るというのが信じがたい」
「そうですね」
整理した内容を、ノートに書くつもりでペンを動かしていたが、そこには保育園児が描いた意味不明な潰れた丸や三角のイラストが記されていた。
「このまま島を出ても大丈夫なのかは解らないが。少なくとも若返りは収まったようだな」
「先生、ちょっと気になる事があるのですが……」
「ん、なんだ?」
「ちょっと髪の毛がフサフサになっている気がします」
「なんと!成長しているというのか!」
「いえ、たぶんそうではなく」
とエミルは歯切れが悪い。
「ん?」
「もともと無いようなものでしたが、完全に消失したみたいです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...