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新しい玩具
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「退院おめでとさん」
マシェルモビア軍に砦を奪われてしまったが無事に撤退する事が出来た。
負傷した兵士は全て戦線を離脱、俺とエクレールもハルツールの首都サーナタルエに戻ってこれた。
俺の右肩の骨はフロルドの槍の一撃により砕かれ、肩の一部が欠損している事もあり、今回も完治するまでには3週間コース、その右肩は完全に固定され腕は吊るされている。
動かそうとしたり何かに当たると痛みがあるが、普通にしていたら何も問題ない、かなり不便ではあるが仕方が無いだろう。
その他、右肩以外の負傷は既に完治し、軍本部の治療院を退院していた。
「わざわざすまないな隊長」
そして、今日は頭部を負傷してしまったエクレールが俺に遅れて退院をした。
エクレールはフロルドの『水』魔法で顔を包まれ、それを取り除くために魔法を付与した矢で貫き、爆発を起こした。
水の魔法なので兜の中にまで入り込んでおり、その状態での爆発、ほぼ密閉した状態での爆発の為、威力が増し尚且つ顔に直接的な衝撃を受けたため、首から上に重傷を負った。
皮膚がただれその下から筋肉が露出した状態、エクレールの顔はまるでゾンビのようになっていた。
話が出来るようになったエクレールにその事を伝えると
「顔が半分欠けていた隊長よりはましだろう」
と笑われてしまった。ソルセリーの『消滅』魔法の余波を喰らった時の俺よりはいいと。
今のエクレールは怪我は完治したが、頭皮までやられてしまった彼女は、まだ髪の毛がやっと生えてきたくらいで頭には帽子をかぶっている。
野球少年の様に坊主頭になっていた。
その野球少年エクレールの生え際を見て思う事がある。
何故女性の額の生え際は丸いのか? 男性の場合は角ばっている、男女の体の違いはあるとはいえ今急に不思議に思ってしまった。
元の世界にいたのならちょちょっと調べればわかるだろうけど、こっちの世界ではそれも出来ない
「生え際の違い? 男と女だから違って当然だろう?」
多分その言葉しか返ってこないと思う、そこまで知りたいわけでは無いが、疑問に思ってしまうと少し残念でもある。
今日エクレールを治療院まで迎えに来た理由は2つ
「では隊長行こうか」
その内の一つはエクレールの家の魔道具の修理、実は任務に付く前、家の魔道具の一つが壊れてしまい、当初は帰って来てから買い替える予定だった。
だが彼女は『破壊の一族』の部隊から外れることになったため、特別手当が貰えなくなってしまっい、買い替える事も修理する事も出来なくなってしまったそうな‥‥
基本の給料でローンなど支払いをしているが、手元には殆ど残らないという。
その代わり、給料とは別途の収入となる『破壊の一族』の特別手当だけをを当てにし、今まで何とかやり繰りをして来たそうな。
唯一の救いが特別手当だけとか‥‥チョコレートを箱買いしている余裕はないんじゃないの?
という訳で、今回はエクレールのお宅にお邪魔し、俺が魔道具の修理を無料で行う事となった。
「隊長はどうやってきたのだ?」
「歩いてきたよ、そう遠くもない距離だし」
右肩が負傷しているためバギーはまだ乗れないし、召喚獣に乗ると都市条例に違反して逮捕されちゃうからね
「そうか、わざわざすまなかったな、帰りは私が家まで送るから心配しないでくれ」
「うん助かるよ」
「用事があったのはこっちだからな、さて行こうか」
行こうかと言ってもここには移動する手段が無い、まずは車を取りに行く必要がある。大陸東部緩衝地帯へ続く最後の移転門、そこにバギーもエクレールの車も止めてある。
ここから公共機関で移転門へ、そこからエクレールの車に乗り込み、移転門を使いまたサーナタルエに戻ってくる。
そしてエクレールの家にに移動する。俺のバギーはまだ腕の怪我のせいで運転できないので、この場に置いておくという計画
・・・・・
・・・・
はい、駐車場に到着
「さあ、乗ってくれ」
俺は助手席に乗り込み
「はいはい」
移転門を潜り、エクレールの家に向かう事にした。
・・・・
・・・・
「ここが私の家だ」
エクレールの運転する車は一軒の少し大きい家に到着する、一人で住むには少し大きい広さで、その庭には似合わない小さい車が停車する。
俺が首相から与えられている家よりは小さいが、一つの家族が普通に暮らすには十分な大きさがあった。
「結構デカい家だね」
「まあな、無理して買ったんだが少し持て余しているほどだよ」
カギを取り出しそしてドアを開ける
「そんなには散らかって無いと思うが、まぁ上がってくれ」
「それじゃ、お邪魔しまーす」
玄関に入るとある事に気付く
靴が少ない‥‥
女性にしては靴が並んでなかった、1人暮らしなのは知っているが
下駄箱の中か?
ヒョイっと下駄箱を開いてみても靴は入ってはいない
「ちょっと! 隊長何してる!?」
「いやね、あんまりにも少ないから、ここに靴が入っているのかなと思って」
「勝手に開けないで欲しい! 靴は十分にあるから」
これで全部か? おかしいな‥‥姉の洋子は靴の入った箱が積み上がる程ため込んでいたのに、それを見習ってデュラ子にも同じように靴を買え与えていたのに
「そうか、ごめんね勝手に開けちゃって」
「まあいい、さぁ直して欲しい物はこっちにあるんだ」
エクレールの後をついて行き家の中を見てみるが、普通の女性が済む家としては殺風景と言う言葉が似あう家だった。
飾り物も少なく、今日直す予定の家具なども一人用の使い古したような物が多い、この家の広さからしたら不釣り合いの家具ばかりだった。
「必要な部品はこの棚の中にそろっている‥‥と思う。すまないが頼む、私は少し買い出しをしてくる」
飯くらいは作ってくれるという事だったので、ありがたくごちそうになろう
「はいよ、いってらっしゃい」
俺がそう言うと、少し照れたような困った様な顔をし出かけて行った
「さてと、直しますか‥‥出番だぞ」
「ういっす! 任せてくだせぇ」
黄色の魔法陣からノーム3人が姿を現す
右手が使えない今、修理にはこいつらの力が必要になる
「じゃあ取りあえずこの部品をバラしてくれ」
「えっ? 一人暮らしの女の家っすよ大将、パンツとか探さないんですかい?」
ノームはわざとらしく驚いた顔を作っているが
「そういうの、マジでいいから始めてくれる?」
俺はただの下着には興味が無い、身に着けてこそ下着は輝くのだ。
「ういっす」
ガタイのいいノームが、3人がかりで小さなコンロをバラして行く、別に3人もいらないだろうと思うのだけど、こいつらはいつもこんな感じだった。
今回直すのは2つ、コンロと冷蔵庫だった。
コンロは単身用のマンションによく有る一つしかないやつで、小さな物だった。
この世界の家電、もとい魔道具は、電気を使う地球の家電と違い中身の構造が簡単に出来ている。電化製品は電気を熱に変換して、そのためにはスイッチの配線がありそれを電気で動かして‥‥‥‥
など家電の中身は配線やら部品やらでぎっしり詰まっている。
対してこの世界の魔道具は玩具かと思うように簡単に出来ている、今直そうとしているコンロも熱を発する人工魔石が剥き出しになっており、そこに鍋を直接置くタイプになっている。
そこからスイッチ用のストロー程の太さの配線が、ちょろっと伸びている、それを隠すようにガワが付いているだけ
今回は配線となる部分が壊れ、スイッチが起動しなくなっただけなので、本体となる人工魔石から配線を『分離』で切り離し、新しい配線を『合成』でくっ付けるだけ、この部品自体は安いが、コレを修理に出すと結構金額がかかる、これを俺が直すと無料だ。
「おしまい、これ組みなおしておいて」
コンロの組み立てはノームに任る、同じように冷蔵庫も修理していく。
冷蔵庫は安物だったらしく、本体となる人工魔石に付与されている『氷』魔法の効果が低下している為、冷えにくくなってしまっていた。
なのでもう一度、人工魔石に『氷』魔法を付与し直しただけで冷蔵庫の修理は終わった。
俺からしたらなんてことない作業だが、これらは全て特定の魔法を契約出来た者以外は修理は不可能、修理に出した場合これらすべて高額の金額がかかる、普通こういう修理『付与』魔法を出来る者は高額の給料をもらい引っ張りだこのはずなんだが‥‥
これらの修理なら何でもできる俺だが、未だに企業からのお誘いの連絡が全くない、軍を辞めたら自分で会社を起業するのもいいか? なんて思ってしまう。
「全部終わったから、人工魔石はめといてね」
最後に電池替わりとなる人工魔石をはめるようにノームに指示し、居間の方で休むことにする
「実に簡単なお仕事だったな」
広い居間には古い小さな机と安っぽい椅子が2脚、そして小さなソファー。部屋の隅にある小さな棚には本が数冊と、地球で言ったらテレビとなる魔道具━━
貧乏
と言う言葉がピッタリの部屋、お金に困っていると聞いていたがここまで何もないと少し「うーん」と唸ってしまう。今回俺が魔道具の修理をしたのも、お金がないからという理由でだったが‥‥本当に生活出来ているのだろうか? 何かあったら無利子で貸してあげようかと思ってしまう
安っぽい椅子にどっこいしょと腰を下ろした時、目の前にある小さな棚の本が気になり、何か面白い本が無いかと思い、すぐに腰を上げる
「何の本があるかな~」
女性らしく女性誌が数冊、その中にアルバムのような物があった
「アルバム~‥‥ん~‥‥居間に置いてあるんだから見ても大丈夫だろう」
アルバムを棚から取り出しテーブルの上にアルバムを置き、それを開くと‥‥そこには俺の知らない兵士達が写っていた。
アルバムには大体同じような人物が写っており、これがエクレールが前に所属していたバリス隊だという事が何となくわかった。
その中でよく写っている男性兵士が一人、赤茶けた癖のある髪の一人の男性兵士
これは‥‥そうか、エクレールの
多分この男性がエクレールの婚約者だったのだろう、爽やかな笑顔をした好青年という感じだった。エクレールと一緒に移っている写真もあったが、にこやかな男性兵士と違いエクレールはどちらかと言うとムスッとした顔をしている
どのページを開いてもアルバムに写るエクレールは同じムスッとした顔をしていた。いつもは表情豊かなエクレールだが、今思うと最初に会った時はこの写真と同じ顔だった。
今ではタクティアと並ぶ部隊の弄られキャラ、という立ち位置だがそれもソルセリーとかかわる事が多くなってからだろう。
自分の知らない兵士達の写真が続く中、ページを開いて行くと知っている女性が写っている写真があった。
「ん? ニーア」
そこには3人の女性兵士が写っていた。
俺と同じカナル部隊に所属していたニーア、それともう一人の女性兵士、モッサリとした髪型で、何となく性格が暗そうというか‥‥「貞子」という名前がピッタリの容姿だった。
ニーアは嫌がるエクレールと貞子の肩に腕を周し、満面の笑みで写真に写っている、まるで今から酒でも飲みに行きそうな笑顔だった。
誰だろう? この貞子は、他の部隊の女性かな?
「何だ、ここにいたか」
その時、後ろから不意に声が掛かる
「おわぁ!」
突然の不意打ちに声が上がり、体が震える
「おお、エクレールかビックリしたな、おかえり」
「ん、ああ‥‥ただいま」
少しだけ頬が緩むエクレールは
「アルバムを見ていたのか」
何となく貞子が気になった俺は聞いてみることにした
「悪いね勝手に見て。所でさ、この一緒に写っている女性って他の部隊の人なの?」
「ああ、これはミ‥‥‥‥」
そこまで言ってエクレールは止まった
「み?」
エクレールの口は「み」の発音の形をしたまま止まっており、目は明らかに泳いでいた
◆◇
どうしよう! 言っていいものか
エクレールの心は激しく動揺していた。その写真に写っているのはカナル隊のミラ、変身前の彼女の姿だった。
隊長のハヤトとミラは詳しくは聞いていないが、前の部隊でそういった関係になったという事は知っていた。
だがハヤトは変身前のミラの姿を知らないはず、現に「誰?」と聞いてきた。
これは言ってしまったらまずいのではないか? ミラはこの事を過去の姿を隠していたいのでは無いか? どう答えれば正解なのか? もし本当の事を言ってしまったらハヤトはどう思うか?
エクレールが返答に困っている時間が長くなるほど、ハヤトは訝しげな目を強めてくる
どうする! どう答える!!
エクレールは窮地に立たされる、そして無理やり思いついたのが‥‥‥‥
「こ、この時はその場にいた、み、皆と一緒に撮ったんだ。その中には知らない部隊の者もいてな、実はその女性兵士が誰なのかは知らないんだ、すまないな」
「そうか‥‥いやいいんだ、何となく気になっただけだから」
納得したハヤトは
「今更だけど、これ続き見ても大丈夫?」
「ああ、いいぞ」
良かった、納得したようだ。 ホッと胸を撫でおろす
「私は食事を作ってくるから、修理は全て終わったのだろう?」
「うん、全部終わっているから」
「そうか、ありがとう腕によりを掛けて食事を作るから待っていてくれ」
エクレールはキッチンに行き、買ってきた物を取りあえず冷蔵庫に入れる
うん、ちゃんと直っているな、さて! 作るか
久々に男性に作る料理にエクレールは少しだけ心が躍った
◆◇
甘いっすわ‥‥‥‥
そうでしたそうでした。甘い料理がこの世界の基準でした。
甘い料理=ソルセリーというのが頭の中に刷り込まれており、すっかりその事を忘れていた。
「どうだろうか? ソルセリ―に比べたら劣ると思うが、そこそこの出来だと思うぞ?」
「そうだね、美味しいよ」
ソルセリ―に比べたら劣るね甘さの具合が、こっちの方が食べやすいです。ただ、あと糖分を90%程カットしてくれたら凄く美味しいと思います。
出された食事はちゃんと食べる、親から教わった大事な事なのでちゃんと平らげる事にする
エクレールは俺の食べる姿を見て、嬉しそうな‥‥それでいて少し寂しそうな顔をしていた。
・・・・
・・・・
「ほいコレ、頼まれていた物ね」
食事もごちそうになり、全ての要件が終え。帰る前にお願いされていたもう一つの要件を終わらせる事にする
「おお! もう出来たのか!」
一張の弓と数本の矢を手渡す
俺が弓を貸した時、甚くそれを気に入ったようで、それを譲ってほしいと言われた。
ただ、俺も使う事があるかもしれないので、新しくエクレール用に作ったのだ。
エクレールの身長に合わせた大型の和弓で、一部金属製で出来ている。『重力』を付与し軽くしており、重さを全く感じずまるで羽のように軽い、それがいいのか逆に悪いのかは分からないが。
それと矢と交わる部分籐頭、と呼ばれる個所に『放出』を付与し矢の発射速度を増すように改良
そして弓の上下に、俺やデュラ子が盾や重装甲用のパーツを付けるために装着している、『重力』を付与してあるキューブ、それを装着してある。
そこに太めの三日月の形をした盾を2つ装着できるようにしてある、しかも矢を射るのに邪魔にならぬようになっている。
盾が必要ない場合は『収納』に入れて置けばいい
こうしてタクティアが持っている武器に続き、俺が弄る新しい玩具が誕生した。斬新な発想があったら随時アップデートして行こうと思う。
それと色々な魔法を付与した矢をセットで渡した。
「これは隊長が使っている盾と同じやつか!」
盾を出し入れしてみたり、弦を引いてみたりなど嬉しそうにしている
「それでこれは何と言う名前なのだ?」
「名前?」
「この弓の名前だ」
「特には、エクレールが付けたら?」
武器に名前とか(笑) ライカと同じで武器に名前を付ける気か? 少し笑いそうになったけど、俺も自分の刀に名前を付けていたのを思い出し、その笑いを引っ込めた。
「んー、そうだな‥‥そうだ、隊長が付けてくれないか?」
「俺が?」
「隊長が付ける名前は独特で変わっていし、それに中々良い名が多い。召喚獣に付けた名など素晴らしいからな」
なるほどな、こっちの世界には無い名前だからな
「ん~、だったら」
三日月型の盾が付いた弓を持つエクレールを見て、パッと思いついた
「アルテミス」
「アルテミス‥‥‥か、良い名だな!」
気に入ってくれたみたいだ。ちなみにエクレールが男なら多分「与一」が思いついただろう
ビョンビョンを弦を引いてその感触を確かめているエクレール、気に入ってくれたならそれでいい
「んじゃ悪いけど送ってもらえる? 本部まででいいから」
「本部? また戻るのか?」
「用事を思い出してね」
・・・・
・・・・
エクレールに本部まで送ってもらい、今後のハヤト隊について確認することになる、タクティアに全て任せていたが今はいない、なので自身で確認する必要があった。
自分達が守っていた砦はマシェルモビア軍により陥落し、ハルツールは戦線を大きく後退した。
我が軍が優勢な大陸東部緩衝地帯東地区と違い、西地区は逆に侵略される形になった。軍は部隊を最編成、ハヤト隊隊長の俺とエクレールは暫く2人だけの部隊として西地区を転々とし、途中隊員の補充もあり、その後。一時的に分かれていたタクティア率いるタクティア隊を編入、東地区に配属される事になる
マシェルモビア軍に砦を奪われてしまったが無事に撤退する事が出来た。
負傷した兵士は全て戦線を離脱、俺とエクレールもハルツールの首都サーナタルエに戻ってこれた。
俺の右肩の骨はフロルドの槍の一撃により砕かれ、肩の一部が欠損している事もあり、今回も完治するまでには3週間コース、その右肩は完全に固定され腕は吊るされている。
動かそうとしたり何かに当たると痛みがあるが、普通にしていたら何も問題ない、かなり不便ではあるが仕方が無いだろう。
その他、右肩以外の負傷は既に完治し、軍本部の治療院を退院していた。
「わざわざすまないな隊長」
そして、今日は頭部を負傷してしまったエクレールが俺に遅れて退院をした。
エクレールはフロルドの『水』魔法で顔を包まれ、それを取り除くために魔法を付与した矢で貫き、爆発を起こした。
水の魔法なので兜の中にまで入り込んでおり、その状態での爆発、ほぼ密閉した状態での爆発の為、威力が増し尚且つ顔に直接的な衝撃を受けたため、首から上に重傷を負った。
皮膚がただれその下から筋肉が露出した状態、エクレールの顔はまるでゾンビのようになっていた。
話が出来るようになったエクレールにその事を伝えると
「顔が半分欠けていた隊長よりはましだろう」
と笑われてしまった。ソルセリーの『消滅』魔法の余波を喰らった時の俺よりはいいと。
今のエクレールは怪我は完治したが、頭皮までやられてしまった彼女は、まだ髪の毛がやっと生えてきたくらいで頭には帽子をかぶっている。
野球少年の様に坊主頭になっていた。
その野球少年エクレールの生え際を見て思う事がある。
何故女性の額の生え際は丸いのか? 男性の場合は角ばっている、男女の体の違いはあるとはいえ今急に不思議に思ってしまった。
元の世界にいたのならちょちょっと調べればわかるだろうけど、こっちの世界ではそれも出来ない
「生え際の違い? 男と女だから違って当然だろう?」
多分その言葉しか返ってこないと思う、そこまで知りたいわけでは無いが、疑問に思ってしまうと少し残念でもある。
今日エクレールを治療院まで迎えに来た理由は2つ
「では隊長行こうか」
その内の一つはエクレールの家の魔道具の修理、実は任務に付く前、家の魔道具の一つが壊れてしまい、当初は帰って来てから買い替える予定だった。
だが彼女は『破壊の一族』の部隊から外れることになったため、特別手当が貰えなくなってしまっい、買い替える事も修理する事も出来なくなってしまったそうな‥‥
基本の給料でローンなど支払いをしているが、手元には殆ど残らないという。
その代わり、給料とは別途の収入となる『破壊の一族』の特別手当だけをを当てにし、今まで何とかやり繰りをして来たそうな。
唯一の救いが特別手当だけとか‥‥チョコレートを箱買いしている余裕はないんじゃないの?
という訳で、今回はエクレールのお宅にお邪魔し、俺が魔道具の修理を無料で行う事となった。
「隊長はどうやってきたのだ?」
「歩いてきたよ、そう遠くもない距離だし」
右肩が負傷しているためバギーはまだ乗れないし、召喚獣に乗ると都市条例に違反して逮捕されちゃうからね
「そうか、わざわざすまなかったな、帰りは私が家まで送るから心配しないでくれ」
「うん助かるよ」
「用事があったのはこっちだからな、さて行こうか」
行こうかと言ってもここには移動する手段が無い、まずは車を取りに行く必要がある。大陸東部緩衝地帯へ続く最後の移転門、そこにバギーもエクレールの車も止めてある。
ここから公共機関で移転門へ、そこからエクレールの車に乗り込み、移転門を使いまたサーナタルエに戻ってくる。
そしてエクレールの家にに移動する。俺のバギーはまだ腕の怪我のせいで運転できないので、この場に置いておくという計画
・・・・・
・・・・
はい、駐車場に到着
「さあ、乗ってくれ」
俺は助手席に乗り込み
「はいはい」
移転門を潜り、エクレールの家に向かう事にした。
・・・・
・・・・
「ここが私の家だ」
エクレールの運転する車は一軒の少し大きい家に到着する、一人で住むには少し大きい広さで、その庭には似合わない小さい車が停車する。
俺が首相から与えられている家よりは小さいが、一つの家族が普通に暮らすには十分な大きさがあった。
「結構デカい家だね」
「まあな、無理して買ったんだが少し持て余しているほどだよ」
カギを取り出しそしてドアを開ける
「そんなには散らかって無いと思うが、まぁ上がってくれ」
「それじゃ、お邪魔しまーす」
玄関に入るとある事に気付く
靴が少ない‥‥
女性にしては靴が並んでなかった、1人暮らしなのは知っているが
下駄箱の中か?
ヒョイっと下駄箱を開いてみても靴は入ってはいない
「ちょっと! 隊長何してる!?」
「いやね、あんまりにも少ないから、ここに靴が入っているのかなと思って」
「勝手に開けないで欲しい! 靴は十分にあるから」
これで全部か? おかしいな‥‥姉の洋子は靴の入った箱が積み上がる程ため込んでいたのに、それを見習ってデュラ子にも同じように靴を買え与えていたのに
「そうか、ごめんね勝手に開けちゃって」
「まあいい、さぁ直して欲しい物はこっちにあるんだ」
エクレールの後をついて行き家の中を見てみるが、普通の女性が済む家としては殺風景と言う言葉が似あう家だった。
飾り物も少なく、今日直す予定の家具なども一人用の使い古したような物が多い、この家の広さからしたら不釣り合いの家具ばかりだった。
「必要な部品はこの棚の中にそろっている‥‥と思う。すまないが頼む、私は少し買い出しをしてくる」
飯くらいは作ってくれるという事だったので、ありがたくごちそうになろう
「はいよ、いってらっしゃい」
俺がそう言うと、少し照れたような困った様な顔をし出かけて行った
「さてと、直しますか‥‥出番だぞ」
「ういっす! 任せてくだせぇ」
黄色の魔法陣からノーム3人が姿を現す
右手が使えない今、修理にはこいつらの力が必要になる
「じゃあ取りあえずこの部品をバラしてくれ」
「えっ? 一人暮らしの女の家っすよ大将、パンツとか探さないんですかい?」
ノームはわざとらしく驚いた顔を作っているが
「そういうの、マジでいいから始めてくれる?」
俺はただの下着には興味が無い、身に着けてこそ下着は輝くのだ。
「ういっす」
ガタイのいいノームが、3人がかりで小さなコンロをバラして行く、別に3人もいらないだろうと思うのだけど、こいつらはいつもこんな感じだった。
今回直すのは2つ、コンロと冷蔵庫だった。
コンロは単身用のマンションによく有る一つしかないやつで、小さな物だった。
この世界の家電、もとい魔道具は、電気を使う地球の家電と違い中身の構造が簡単に出来ている。電化製品は電気を熱に変換して、そのためにはスイッチの配線がありそれを電気で動かして‥‥‥‥
など家電の中身は配線やら部品やらでぎっしり詰まっている。
対してこの世界の魔道具は玩具かと思うように簡単に出来ている、今直そうとしているコンロも熱を発する人工魔石が剥き出しになっており、そこに鍋を直接置くタイプになっている。
そこからスイッチ用のストロー程の太さの配線が、ちょろっと伸びている、それを隠すようにガワが付いているだけ
今回は配線となる部分が壊れ、スイッチが起動しなくなっただけなので、本体となる人工魔石から配線を『分離』で切り離し、新しい配線を『合成』でくっ付けるだけ、この部品自体は安いが、コレを修理に出すと結構金額がかかる、これを俺が直すと無料だ。
「おしまい、これ組みなおしておいて」
コンロの組み立てはノームに任る、同じように冷蔵庫も修理していく。
冷蔵庫は安物だったらしく、本体となる人工魔石に付与されている『氷』魔法の効果が低下している為、冷えにくくなってしまっていた。
なのでもう一度、人工魔石に『氷』魔法を付与し直しただけで冷蔵庫の修理は終わった。
俺からしたらなんてことない作業だが、これらは全て特定の魔法を契約出来た者以外は修理は不可能、修理に出した場合これらすべて高額の金額がかかる、普通こういう修理『付与』魔法を出来る者は高額の給料をもらい引っ張りだこのはずなんだが‥‥
これらの修理なら何でもできる俺だが、未だに企業からのお誘いの連絡が全くない、軍を辞めたら自分で会社を起業するのもいいか? なんて思ってしまう。
「全部終わったから、人工魔石はめといてね」
最後に電池替わりとなる人工魔石をはめるようにノームに指示し、居間の方で休むことにする
「実に簡単なお仕事だったな」
広い居間には古い小さな机と安っぽい椅子が2脚、そして小さなソファー。部屋の隅にある小さな棚には本が数冊と、地球で言ったらテレビとなる魔道具━━
貧乏
と言う言葉がピッタリの部屋、お金に困っていると聞いていたがここまで何もないと少し「うーん」と唸ってしまう。今回俺が魔道具の修理をしたのも、お金がないからという理由でだったが‥‥本当に生活出来ているのだろうか? 何かあったら無利子で貸してあげようかと思ってしまう
安っぽい椅子にどっこいしょと腰を下ろした時、目の前にある小さな棚の本が気になり、何か面白い本が無いかと思い、すぐに腰を上げる
「何の本があるかな~」
女性らしく女性誌が数冊、その中にアルバムのような物があった
「アルバム~‥‥ん~‥‥居間に置いてあるんだから見ても大丈夫だろう」
アルバムを棚から取り出しテーブルの上にアルバムを置き、それを開くと‥‥そこには俺の知らない兵士達が写っていた。
アルバムには大体同じような人物が写っており、これがエクレールが前に所属していたバリス隊だという事が何となくわかった。
その中でよく写っている男性兵士が一人、赤茶けた癖のある髪の一人の男性兵士
これは‥‥そうか、エクレールの
多分この男性がエクレールの婚約者だったのだろう、爽やかな笑顔をした好青年という感じだった。エクレールと一緒に移っている写真もあったが、にこやかな男性兵士と違いエクレールはどちらかと言うとムスッとした顔をしている
どのページを開いてもアルバムに写るエクレールは同じムスッとした顔をしていた。いつもは表情豊かなエクレールだが、今思うと最初に会った時はこの写真と同じ顔だった。
今ではタクティアと並ぶ部隊の弄られキャラ、という立ち位置だがそれもソルセリーとかかわる事が多くなってからだろう。
自分の知らない兵士達の写真が続く中、ページを開いて行くと知っている女性が写っている写真があった。
「ん? ニーア」
そこには3人の女性兵士が写っていた。
俺と同じカナル部隊に所属していたニーア、それともう一人の女性兵士、モッサリとした髪型で、何となく性格が暗そうというか‥‥「貞子」という名前がピッタリの容姿だった。
ニーアは嫌がるエクレールと貞子の肩に腕を周し、満面の笑みで写真に写っている、まるで今から酒でも飲みに行きそうな笑顔だった。
誰だろう? この貞子は、他の部隊の女性かな?
「何だ、ここにいたか」
その時、後ろから不意に声が掛かる
「おわぁ!」
突然の不意打ちに声が上がり、体が震える
「おお、エクレールかビックリしたな、おかえり」
「ん、ああ‥‥ただいま」
少しだけ頬が緩むエクレールは
「アルバムを見ていたのか」
何となく貞子が気になった俺は聞いてみることにした
「悪いね勝手に見て。所でさ、この一緒に写っている女性って他の部隊の人なの?」
「ああ、これはミ‥‥‥‥」
そこまで言ってエクレールは止まった
「み?」
エクレールの口は「み」の発音の形をしたまま止まっており、目は明らかに泳いでいた
◆◇
どうしよう! 言っていいものか
エクレールの心は激しく動揺していた。その写真に写っているのはカナル隊のミラ、変身前の彼女の姿だった。
隊長のハヤトとミラは詳しくは聞いていないが、前の部隊でそういった関係になったという事は知っていた。
だがハヤトは変身前のミラの姿を知らないはず、現に「誰?」と聞いてきた。
これは言ってしまったらまずいのではないか? ミラはこの事を過去の姿を隠していたいのでは無いか? どう答えれば正解なのか? もし本当の事を言ってしまったらハヤトはどう思うか?
エクレールが返答に困っている時間が長くなるほど、ハヤトは訝しげな目を強めてくる
どうする! どう答える!!
エクレールは窮地に立たされる、そして無理やり思いついたのが‥‥‥‥
「こ、この時はその場にいた、み、皆と一緒に撮ったんだ。その中には知らない部隊の者もいてな、実はその女性兵士が誰なのかは知らないんだ、すまないな」
「そうか‥‥いやいいんだ、何となく気になっただけだから」
納得したハヤトは
「今更だけど、これ続き見ても大丈夫?」
「ああ、いいぞ」
良かった、納得したようだ。 ホッと胸を撫でおろす
「私は食事を作ってくるから、修理は全て終わったのだろう?」
「うん、全部終わっているから」
「そうか、ありがとう腕によりを掛けて食事を作るから待っていてくれ」
エクレールはキッチンに行き、買ってきた物を取りあえず冷蔵庫に入れる
うん、ちゃんと直っているな、さて! 作るか
久々に男性に作る料理にエクレールは少しだけ心が躍った
◆◇
甘いっすわ‥‥‥‥
そうでしたそうでした。甘い料理がこの世界の基準でした。
甘い料理=ソルセリーというのが頭の中に刷り込まれており、すっかりその事を忘れていた。
「どうだろうか? ソルセリ―に比べたら劣ると思うが、そこそこの出来だと思うぞ?」
「そうだね、美味しいよ」
ソルセリ―に比べたら劣るね甘さの具合が、こっちの方が食べやすいです。ただ、あと糖分を90%程カットしてくれたら凄く美味しいと思います。
出された食事はちゃんと食べる、親から教わった大事な事なのでちゃんと平らげる事にする
エクレールは俺の食べる姿を見て、嬉しそうな‥‥それでいて少し寂しそうな顔をしていた。
・・・・
・・・・
「ほいコレ、頼まれていた物ね」
食事もごちそうになり、全ての要件が終え。帰る前にお願いされていたもう一つの要件を終わらせる事にする
「おお! もう出来たのか!」
一張の弓と数本の矢を手渡す
俺が弓を貸した時、甚くそれを気に入ったようで、それを譲ってほしいと言われた。
ただ、俺も使う事があるかもしれないので、新しくエクレール用に作ったのだ。
エクレールの身長に合わせた大型の和弓で、一部金属製で出来ている。『重力』を付与し軽くしており、重さを全く感じずまるで羽のように軽い、それがいいのか逆に悪いのかは分からないが。
それと矢と交わる部分籐頭、と呼ばれる個所に『放出』を付与し矢の発射速度を増すように改良
そして弓の上下に、俺やデュラ子が盾や重装甲用のパーツを付けるために装着している、『重力』を付与してあるキューブ、それを装着してある。
そこに太めの三日月の形をした盾を2つ装着できるようにしてある、しかも矢を射るのに邪魔にならぬようになっている。
盾が必要ない場合は『収納』に入れて置けばいい
こうしてタクティアが持っている武器に続き、俺が弄る新しい玩具が誕生した。斬新な発想があったら随時アップデートして行こうと思う。
それと色々な魔法を付与した矢をセットで渡した。
「これは隊長が使っている盾と同じやつか!」
盾を出し入れしてみたり、弦を引いてみたりなど嬉しそうにしている
「それでこれは何と言う名前なのだ?」
「名前?」
「この弓の名前だ」
「特には、エクレールが付けたら?」
武器に名前とか(笑) ライカと同じで武器に名前を付ける気か? 少し笑いそうになったけど、俺も自分の刀に名前を付けていたのを思い出し、その笑いを引っ込めた。
「んー、そうだな‥‥そうだ、隊長が付けてくれないか?」
「俺が?」
「隊長が付ける名前は独特で変わっていし、それに中々良い名が多い。召喚獣に付けた名など素晴らしいからな」
なるほどな、こっちの世界には無い名前だからな
「ん~、だったら」
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「アルテミス」
「アルテミス‥‥‥か、良い名だな!」
気に入ってくれたみたいだ。ちなみにエクレールが男なら多分「与一」が思いついただろう
ビョンビョンを弦を引いてその感触を確かめているエクレール、気に入ってくれたならそれでいい
「んじゃ悪いけど送ってもらえる? 本部まででいいから」
「本部? また戻るのか?」
「用事を思い出してね」
・・・・
・・・・
エクレールに本部まで送ってもらい、今後のハヤト隊について確認することになる、タクティアに全て任せていたが今はいない、なので自身で確認する必要があった。
自分達が守っていた砦はマシェルモビア軍により陥落し、ハルツールは戦線を大きく後退した。
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