そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、俺は呪いの剣の鞘になりました。その2

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 この状況に至るには複数の要因がある。


 アサヒがこの世界に来てしまったのは招かれたから。


 この世界を作り、彩り、構成するのは精霊であり、
 その精霊はヒマを持て余していて
 時折近接する別世界からの迷い人を招き入れるらしい。

 神隠しと呼ばれる誘拐である。



 気がつけばだだっ広い草原の真っ只中に居て、
 右も左も分からない状態のアサヒを拾ったのは十数人で構成された一つのキャラバン。


 異世界からの迷い人はこの世界では客人と呼ばれ、
 害すると精霊の機嫌を損ねて災いが降りかかるとの教えから、
 逆に大切にすれば恩恵があるかも?
 との事で家族の様に優遇されるのだ。

 そうこうしてこの世界を旅する事になったアサヒはこの二人、
 リアとシュミカの玩具となる…。



 面白い事であれば万事オッケーな精霊さんはこの二人に災いを課す事なく、
 二人の些細な悪戯のせいで大陸を渡る船に乗り遅れてしまった三人は
 家族と引き離され、
 日銭を稼ぐ為にギルドの依頼をこなしているのである。



 何の実績も保証も無い、
 今の彼らが選び得る『墓掘り屋」と呼ばれるこの職業は
 冒険者としては最下層であり、
 
 どれほど腕っ節が強かろうが強力な魔法が使えようが、
 金銭と信用を得る為に所属せざるを得ない
 『ギルド』に入る為には必要な絶対の登竜門であった。
 
 それはこの世界の神の様な存在である精霊の優しさで、
 初心者やアサヒのような何の能力も無い異世界からの客人にとって、
 この世界に馴染むための簡単なチュートリアル的な意味も有る。


 普通はパーティの能力値に見合ったクエストを一つ二つ終わらせれば良いだけなのだが…。

 幸い…?いや、この後災いとなるのだが…
 アサヒは残念ながらとても残念な二人の仲間に恵まれていた。


 この世界に存在する種族と特性としては無駄にレアなその存在的性質は、
 この世界…いや、何処の世界に居ようが普通に面倒臭い精神的且つ…
 能力、特性的性質を持っていた。




 黒髪の女性リアは『竜人』である。

 文字どおり竜族の血脈で、
 ほぼほぼ最強の種だが怠惰であり酒と色と欲求に正直な『頭の中は』平和な種族である。

 特定の精霊に加護された故郷の『レイヴン帝国』以外での繁殖例が無くはないが稀な為、
 妖精、エルフ族に次ぐ希少種とされている。

 何故か鳥と馬に憧れていて、
 パーティに居れば当たり前のように馬車馬の役を買って出る。
 寧ろ馬車を馬と奪い合った挙句に友情を育んだりもする
 独特な世界観を展開するので本当に面倒臭い。




 若草色の髪の少女シュミカは人間だが『神職』。

 この世界で唯一、
 精霊や霊体を目視できて必要であれば大きな魔力を代償に顕現したり
 会話をしたり出来る血脈の子孫のみが持つ特性である。


 彼女が使う魔法は『精霊祈』。

 
 文字面的にはカッコ良さそうだが、
 やってる事は近くに居る精霊に
 「ちょっとこれ頼みたいんだけどできる?」
 と独自の精神的言語を介して行う、
 魔力や体力を代償にしてのネゴシエーションだ。

 馬鹿馬鹿しいが、
 その場にいた精霊の気持ちや感情…
 術者本人の精霊からの好感度次第ではとんでもないことが起きたりもする。
 何も起きなかったりもする。 

 ちなみに他の者達が使う魔法も、
 基本的には同様に精霊に願う物だが…殆どが出来ることは決まっている。

 交渉次第で出来ることが変わるのが大きな違いだ。 


 さて、『墓掘り屋』が選ぶ事のできる仕事はいくつかあるが、
 主なものは…


 ・荷運びや素材採集などの雑務。

 ・村や街周辺のモンスター討伐。

 ・多少慣れてきた者はダンジョンでの宝探し、その中でのモンスター討伐。

 ・エレメンタルダンジョンと呼ばれる精霊が各地に遊びで作った迷宮の探索。マッピング等。

  尚、そのダンジョンは定期的に変化する為、
  特にマッピング作業は上層階にしか挑めない実力でも
  細やかな収入源としては重宝されている。

 ・それらのクエストで帰ってこなかった者達の遺品等の捜索。
  その対象はギルドに加入し、
  精霊の加護を得た者に限られるが…
  その条件を満たしていれば髪の毛一本であろうが
  帰らぬ人の物と断定される。
  ただし生死は不問。

 
 その他いろいろ有りはするが、
 要は単発バイトのような物だ。
 数回こなせば認められて、
 より高い報酬を得られるランクに上がれる。
 どこの世界にでも有る良くあるが真っ当な仕組みだ。


 その中で比較的報酬の高いのは遺品回収クエストであるのだが…
 遺品を回収するのである。

 何故その物が遺品であるのかを考えれば報酬の高さも納得出来るだろう…
 
 持ち主であった対象は死んでいるのだ。

 ごく稀に生き延びている事もあるが、
 その周囲が危険な場所である事は明白である。
 その様な事に思考を巡らせることもなく、


 『ん!遺品回収でサクッと儲けちゃえ作戦♪』


 …を立案したのはシュミカであり、


 「良いわねぇ~、
  中でもこの依頼が高い割に楽そうだわぁ!
  呪い案件のドクロ7つだけど…一桁だから平気よぉ♪なんせ神職のシュミカが居るんだものぉ!」 


 と、リアがこの世界の文字を知らないアサヒにささっと見せて勢いで頷かせて、
 苦笑いを浮かべる受付嬢に申請した。

 サクッと終わらせての晩酌にしか興味のないリアは、


 クエスト

 『麗しの未亡人なんてイヤ!出来れば本人、
  もしもの場合は遺品回収をお願いします!』


 に、秒で登録した結果…、
 今まさに、
 アサヒがドクロ7つの呪いの短剣を文字通り身に宿しての帰還の最中であった。



 鼻歌混じりにノンビリと荷車を浮かせて運んでいるリアを視界の隅に置き、
 アサヒは痛みと苦しみに耐えながらシュミカに素朴な疑問を投げ掛ける。



 「…なぁ、何でいつもは要領の悪いリアが率先して進んで…げふっ…、
  すぐにあの死体を見つけた?

  何で…遺品にこの呪われた短剣を選んだ?しかも…

  『あ、これは依代が必要なヤツねぇ~、エイっ♪』
  …て、何の躊躇も無く俺に突き立てた?」



 読書の邪魔をされたシュミカは
 面倒臭そうな目を向けながらため息を吐いて答える。


 「ん~…、アナタ息が血生臭いから少し黙る…。

  僕は優秀なの…。
  だから本当に死んだりはしないから…
  貴重な体験を楽しんでて…。」

 「楽しめるか!
  お前が優秀なのはわかってますけど!
  だからこんな状況でも取り乱さずに…ゲフっ!」

 「んん~…、アナタは本当にめんどいなぁ…。
  精霊さん、苦痛はだけは残しつつ…
  緩やかに死なない程度を保って静かにさせて…ね。」


 シュミカがその三白眼で面倒臭そうに目配せをすると、
 アサヒは生暖かい空気に包まれた。
 ちょっと臭い。


 「お…ま…えぇぇ…。」

 「ん…あの依頼書ね、
  初心者に向けた『協会』のトラップ…なの。
  呪いとかの実験のね…。
  僕達も駆け出しの頃にいっぱい引っ掛かったから文面で大体わかる…。」

 「…ちっくしょう!」

 「ん~♪
  でも魔王達は人間の価値観に無頓着だから報酬が良い!
  僕みたいに優秀な者がいないとヤバいけど…ね☆」


 『ね☆』…じゃねぇわ!と思いながらも、
  アサヒはふと出て来た単語にこの世界の常識を呪う。



 『魔王協会』



 それは、意識高く…自己犠牲を伴いながらも相手の真理を試し、
 破壊と創造を持って冒険者達の日々の生活を後押しする…


 確実に敵対してはいるが、
 マッチポンプな…ギルドとは共存共栄関係の組織である!


 …この世界は平和な営みを求めたり、
 世の中に干渉せずに研究や知識のみを求めたり…と
 様々な性格の精霊達の遊び場であり、
 その中に悪戯好きや暴力的なものも存在している。


 その様な人智を遥かに超えた壮大な『鬼ごっこ』がこの世界を支える根幹なのだ。



 そして、生きて屍にもなれないアサヒは…
 クエストクリアの為に短剣の鞘として運ばれる。
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