そして俺は〇〇になりました。

ふとん☆まくら〜れん(F.M.)

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そして、俺は呪いの剣の鞘になりました。その1

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 時間は遡る。


 男の名はアサヒ=ハザマ。
 馴染み良く表すと『狭間 旭』…とある世界の住民であった。


 簡単に言うと、
 ある程度の事はすぐにこなせる様にはなるが、
 ある程度以上には到達出来ない器用貧乏。

 それらを自覚した後に、
 悪目立ちしない様に身に付けた性格である八方美人で無色透明…
 ソレが彼である。


 本人的にも友人と呼んで良いのか判断に困る程度の、
 実際に接する相手とはなんとか上手くやれていたのだが…



 どうしてもひと所に馴染む事が出来ずに転々と彼方此方をを往来する中、
 内面的な孤独を極めた彼は…
 いつしか似たような環境を持つ人達が集う、
 ネット内のちょっとしたコミュニティで
 顔も声も知らない知人達との世界に没頭していった。



 浅く広いだけの知識が功を奏して顔も知らない知人が増えて…
 やがて自己肯定感はピークを迎え、

 仲間内での、とあるオフ会などが催され、
 ちょっと顔を出してみようかな?

 などと…

 『足に括り付けられていた重石の鍵』

 を外して自意識を解放すべく待ち合わせの居酒屋へと歩き出したりしてみちゃったのである…。





 楽しく過ごした時間を記憶の傍に残している。
 
 帰りの道中の駅の椅子にでも座った後だろうか?

 目の前の物全ての輪郭が消えて行くのに呼応して意識を失ったようで…


 
 その次に我に返ると…

 むせかえる様草原に横たわり、
 風が心地良く空は青く何処までも澄み切っている。

 
 何処だここは!?


 混乱しながらも理解して事態を呑み込む。


『ああ、夢か』と。



 やがて、呑み込んだ事態は覚めることなく一日、数日、数ヶ月と続いた…。



「あぁ…こりゃ起きたら記憶飛んでるやつだなぁ…。
 周りに迷惑かけてなきゃ良いけど…。
 早く覚めないかな…

 あ、目が覚めても仕事か…それもやだなぁ…。」




 バシャン!と、冷たい衝撃が走る。
 と、少し遅れて今となっては馴染んでしまった声がフェードインしてくる…。



「目が覚めてなくても仕事は仕事よぉ~。
 なんとか意識を保ちなさいなぁ~。」


「ん…今回は悪ノリが過ぎた事は認める。
 とりあえずギルドに着くまでは生きてて…。
 依頼の達成が認められた後なら好きなだけ死んでて大丈夫だから…。
 ほら、聖水。」

 バシャン!


 アサヒは宙に浮いた荷車に寝かされた状態で運ばれていた。


 定期的に頭に掛けられる聖水は、
 モグモグと何かを咀嚼しながら本を読む傍らの少女が振り下ろす手のひらに
 一定の量が貯まる度に雑にぶつけられる。


「…いや、本当に死にそうなんですけど…。
 ねぇリアさん、間に合うのかなぁ?これ…」


 パタパタと背中の小さな翼を羽ばたかせながら飛び、
 魔力で荷車を浮かせて運んでいるリアはチラッと振り返り微笑みながら…。


「うっる…っさいわねぇ!知らないわよ!
 …コレでも精一杯なのよぉ!
 後はまぁ、あなた次第?
 何にしてもアタシは荷物を運ぶだけだよぉ…

 ああ、早くお酒飲みたいわぁ…!

 …まぁ一応、報酬の額に係るから…
 出来れば絶命までには届けたいとは思ってはいるわぁ~。」



 イメージとしては指先に引っ掛けたロープか何かで引っ張っている様な魔法?
 で荷車を運んでくれている彼女に運ばれている側としては、
 コチラの状態がどの様であれ…アサヒはこれ以上は何も言えない。


「ん、まぁそれでいいと思う。
 安全運転でヨロ、リア。」


 そんな事はお構いなしに傍らで欠伸をしながら分厚い本を読んでいるシュミカの手から…

 パシャンっ!

 と、また有難い聖水が振り掛けられる。


 自らの胸に刺さった禍々しく光る短剣を眺めながら…
 アサヒは大嫌いだった社畜の日々を渇望した。

 『上司の文句言うだけで平和に生きていられるなら…
  まだアッチの方がマシだったよな。』と。
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