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第1章
17.アルター指導員の講義――魔法――
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現在良く知られている魔法は、主に三つに分かれます。
古語魔法
精霊魔法
神聖魔法
の三つです。
なお、このうち複数の魔法を習得している者も存在しています。
これらの魔法を扱うものは、全てひっくるめて魔法使いと呼ばれます。
古語魔法は、神々が世界の創造の際に用いたとされる古の言葉を用いて、世界創造の御技を限定的に再現するものです。
この魔法を使う者は魔術師とも呼ばれます。
古語魔法を使う為には発動体と呼ばれる道具を持つ必要があります。
発動体は杖・指輪・小剣など様々な形をしている物がありますが、もっとも多いのは杖です。杖を発動体とするのがもっとも魔法を発動し易いらしく、初心者は専ら杖を使います。
また、より強力な付加効果を得る発動体は杖の形をしている場合が多く、熟練の魔術師にはそういった特殊な杖を使う者もいます。
発動するのに複雑な身振り手振りも必要であり、堅い鎧を身に着けていては発動できません。
この魔法を使う魔術師達が、かつて巨大な帝国を築き、暴虐の限りを尽くした果てに滅びた事、その為邪悪な魔法と思われていた事、しかし大魔道師ヨシュアの活躍で復権した事は、以前語ったとおりです。
精霊魔法は、世界の自然を司る光・闇・炎・風・氷水・岩土の六つの精霊と契約して、その力を借りて行使する魔法です。精霊術とも呼ばれます。
自然の力だけではなく、光の精霊は癒しの力、闇の精霊は精神の働きにも関係しておりこの魔法には多彩な術が含まれています。
この魔法を扱うものは精霊術師とも呼ばれます。
精霊達は金属を嫌う傾向があり、金属鎧を身に着けていると、この魔法を使う事はできません。
例外はミスリル銀で出来ている場合だけですな。
精霊術師は自然と触れ合う事を好む者が多く、一般的には国の高位高官に就く事や戦で活躍する事などには興味がない場合が多いといわれます。しかし、絶対にそうだというわけではありません。
この国ではなんと言っても、オフィーリア女王を助けた大精霊使いが有名ですな。
古語魔法と違い、この魔法を邪悪だと思う者はほとんどいません。しかし、妖魔にも精霊魔法を使う者がいることからもわかるように、善良ではない者でも精霊との契約は可能です。このことは注意が必要ですな。
神聖魔法は、魔法を使う素質がある者が、特定の神を信仰し、そしてその神の許可を得る事で使用が可能になる魔法です。
神聖術とも呼ばれます。この魔法の使用者は、神官、司祭、などとも呼ばれますが、これは正確には教団における役職のことです。この魔法の使い手を指す言葉としては、神聖術師が正解でしょう。
神聖魔法は、私達にとってもっとも身近な魔法といえます。しかし私は、神聖魔法はもっとも誤解されやすい魔法であり、その認識には注意が必要だと考えています。
まず最も大事なのは、扱う神聖魔法の強さと信仰心の篤さは、必ず一致しているわけではない、ということです。
そもそも魔法というものは、全て持って生まれた才能が無ければ扱えないものです。
このことは神聖魔法においても同様です。
つまり、どれほど篤い信仰心を持っていても神聖魔法が使えない者は存在します。このことは光の神々の神託によって、はっきりと示されています。
神託によって、魔法を使う才能があるかどうかは、その者の優劣には関係がなく、「個性」である。故に魔法が使えなくても偉大な者は存在する。
このことは神聖魔法の場合も例外ではない。神聖魔法が使えなくても偉大な信仰者である者は存在しえる。という事が示されています。
このような主旨の神託は、特に光の神々から比較的頻繁に出されており、神々が魔法が使えない者が不当に扱われる事がないように心を砕いている事が分かります。
このため、魔法は使えないが偉大な聖職者であるという者も存在するということは、半ば常識になっています。
とはいっても、一般人や平信者にとっては、魔法で直接的な利益を与えてくれる者の方がありがたいのも事実なので、どうしても魔法が使える聖職者の方が支持を得やすく、優位な立場になる傾向は生じてしまっています。
更に注意すべきなのは、神聖魔法を扱える者が例外なくその神の教えに忠実とは断言できない、ということです。
神聖魔法を使うには、一度は信仰する神の許可を得なければなりません。
当然神の御心にそぐわない者には許可は与えられないので、少なくとも許可を得たその瞬間は神の教えに忠実だったといえます。
しかし、人の心は変わるものですから、その後もずっと忠実とは言い切れません。
そして、以前もお伝えしたとおり、神々はその力のほとんどを“母”の封印に費やしており、現世を見守る為に使える力は限られています。
そもそも、神々はもとより全知の存在ではありません。つまり、神々は全てを見通しているわけではないのです。その結果、信仰を失った事を神に知られていない神聖術師という者も存在しえます。
つまり、光の神々の神聖魔法を扱うからといって、その者が絶対に善人だとは限らないわけです。このことは注意すべきです。
もっとも、強い神聖魔法を使う者は神々に対しても目立つ存在になるので、そのような者が信仰を失っていた場合は、神にも知られ易いと考えられています。
当然信仰を失った事を神に知られれば、神聖魔法は使えなくなってしまいます。
ですので、強大な神聖魔法を使える者が信仰を失っている可能性は比較的低いと言えるでしょう。
なお、神聖魔法は基本的にどのような装備をしていても使う事が出来ます。
概略はざっとこのくらいですかな。
え?魔法使いとの戦い方ですか?
それは我々にとっては重要な事ですな。
まあ、基本的には接近しての攻撃でしょうな。
魔法使いと戦士の戦いは、基本的には互いの弱点を攻める事になります。
魔法は基本的に鎧では防げませんので、戦士は魔法攻撃に対して弱いと言えます。
そして、神聖魔法を除く魔法を使う為には、防具の装備に制限があるので、魔法使いは基本的に武器攻撃に弱くなるわけです。
ちなみに熟練した魔法使いは、自らのマナを活性化させ魔力を帯びた攻撃のダメージを軽減できると言います。このことを考えても、魔法使いを攻撃するなら魔法より武器でしょうな。
魔法使いが魔物になる?ふむ、ありえることですな。
古の三英雄の1人である魔法使いが古竜に変じた話しは有名です。まあ、さすがに古竜は誇張でしょうが、魔物に変ずる魔法は実在するといわれています。
しかし、そのような魔法はかなり高度なものですので、そのような魔法を扱える術師は、普通の攻撃魔法も相当に上手く扱うはずです。ですので、やはり戦士が距離を取って戦うのは愚策でしょう。
近接戦闘の術もあるかもしれない事を注意しつつも、やはり接近戦を挑むしかないでしょうな。
いずれにしても魔法使いと戦う場合は速やかに接近戦に持ち込むのが基本です。
私としては、接近戦を挑む事を予測されて、予め罠でも仕掛けられる可能性にこそ、注意すべきだと思いますな。
さあ、それでは、そろそろ鍛錬を再開いたしましょう。
古語魔法
精霊魔法
神聖魔法
の三つです。
なお、このうち複数の魔法を習得している者も存在しています。
これらの魔法を扱うものは、全てひっくるめて魔法使いと呼ばれます。
古語魔法は、神々が世界の創造の際に用いたとされる古の言葉を用いて、世界創造の御技を限定的に再現するものです。
この魔法を使う者は魔術師とも呼ばれます。
古語魔法を使う為には発動体と呼ばれる道具を持つ必要があります。
発動体は杖・指輪・小剣など様々な形をしている物がありますが、もっとも多いのは杖です。杖を発動体とするのがもっとも魔法を発動し易いらしく、初心者は専ら杖を使います。
また、より強力な付加効果を得る発動体は杖の形をしている場合が多く、熟練の魔術師にはそういった特殊な杖を使う者もいます。
発動するのに複雑な身振り手振りも必要であり、堅い鎧を身に着けていては発動できません。
この魔法を使う魔術師達が、かつて巨大な帝国を築き、暴虐の限りを尽くした果てに滅びた事、その為邪悪な魔法と思われていた事、しかし大魔道師ヨシュアの活躍で復権した事は、以前語ったとおりです。
精霊魔法は、世界の自然を司る光・闇・炎・風・氷水・岩土の六つの精霊と契約して、その力を借りて行使する魔法です。精霊術とも呼ばれます。
自然の力だけではなく、光の精霊は癒しの力、闇の精霊は精神の働きにも関係しておりこの魔法には多彩な術が含まれています。
この魔法を扱うものは精霊術師とも呼ばれます。
精霊達は金属を嫌う傾向があり、金属鎧を身に着けていると、この魔法を使う事はできません。
例外はミスリル銀で出来ている場合だけですな。
精霊術師は自然と触れ合う事を好む者が多く、一般的には国の高位高官に就く事や戦で活躍する事などには興味がない場合が多いといわれます。しかし、絶対にそうだというわけではありません。
この国ではなんと言っても、オフィーリア女王を助けた大精霊使いが有名ですな。
古語魔法と違い、この魔法を邪悪だと思う者はほとんどいません。しかし、妖魔にも精霊魔法を使う者がいることからもわかるように、善良ではない者でも精霊との契約は可能です。このことは注意が必要ですな。
神聖魔法は、魔法を使う素質がある者が、特定の神を信仰し、そしてその神の許可を得る事で使用が可能になる魔法です。
神聖術とも呼ばれます。この魔法の使用者は、神官、司祭、などとも呼ばれますが、これは正確には教団における役職のことです。この魔法の使い手を指す言葉としては、神聖術師が正解でしょう。
神聖魔法は、私達にとってもっとも身近な魔法といえます。しかし私は、神聖魔法はもっとも誤解されやすい魔法であり、その認識には注意が必要だと考えています。
まず最も大事なのは、扱う神聖魔法の強さと信仰心の篤さは、必ず一致しているわけではない、ということです。
そもそも魔法というものは、全て持って生まれた才能が無ければ扱えないものです。
このことは神聖魔法においても同様です。
つまり、どれほど篤い信仰心を持っていても神聖魔法が使えない者は存在します。このことは光の神々の神託によって、はっきりと示されています。
神託によって、魔法を使う才能があるかどうかは、その者の優劣には関係がなく、「個性」である。故に魔法が使えなくても偉大な者は存在する。
このことは神聖魔法の場合も例外ではない。神聖魔法が使えなくても偉大な信仰者である者は存在しえる。という事が示されています。
このような主旨の神託は、特に光の神々から比較的頻繁に出されており、神々が魔法が使えない者が不当に扱われる事がないように心を砕いている事が分かります。
このため、魔法は使えないが偉大な聖職者であるという者も存在するということは、半ば常識になっています。
とはいっても、一般人や平信者にとっては、魔法で直接的な利益を与えてくれる者の方がありがたいのも事実なので、どうしても魔法が使える聖職者の方が支持を得やすく、優位な立場になる傾向は生じてしまっています。
更に注意すべきなのは、神聖魔法を扱える者が例外なくその神の教えに忠実とは断言できない、ということです。
神聖魔法を使うには、一度は信仰する神の許可を得なければなりません。
当然神の御心にそぐわない者には許可は与えられないので、少なくとも許可を得たその瞬間は神の教えに忠実だったといえます。
しかし、人の心は変わるものですから、その後もずっと忠実とは言い切れません。
そして、以前もお伝えしたとおり、神々はその力のほとんどを“母”の封印に費やしており、現世を見守る為に使える力は限られています。
そもそも、神々はもとより全知の存在ではありません。つまり、神々は全てを見通しているわけではないのです。その結果、信仰を失った事を神に知られていない神聖術師という者も存在しえます。
つまり、光の神々の神聖魔法を扱うからといって、その者が絶対に善人だとは限らないわけです。このことは注意すべきです。
もっとも、強い神聖魔法を使う者は神々に対しても目立つ存在になるので、そのような者が信仰を失っていた場合は、神にも知られ易いと考えられています。
当然信仰を失った事を神に知られれば、神聖魔法は使えなくなってしまいます。
ですので、強大な神聖魔法を使える者が信仰を失っている可能性は比較的低いと言えるでしょう。
なお、神聖魔法は基本的にどのような装備をしていても使う事が出来ます。
概略はざっとこのくらいですかな。
え?魔法使いとの戦い方ですか?
それは我々にとっては重要な事ですな。
まあ、基本的には接近しての攻撃でしょうな。
魔法使いと戦士の戦いは、基本的には互いの弱点を攻める事になります。
魔法は基本的に鎧では防げませんので、戦士は魔法攻撃に対して弱いと言えます。
そして、神聖魔法を除く魔法を使う為には、防具の装備に制限があるので、魔法使いは基本的に武器攻撃に弱くなるわけです。
ちなみに熟練した魔法使いは、自らのマナを活性化させ魔力を帯びた攻撃のダメージを軽減できると言います。このことを考えても、魔法使いを攻撃するなら魔法より武器でしょうな。
魔法使いが魔物になる?ふむ、ありえることですな。
古の三英雄の1人である魔法使いが古竜に変じた話しは有名です。まあ、さすがに古竜は誇張でしょうが、魔物に変ずる魔法は実在するといわれています。
しかし、そのような魔法はかなり高度なものですので、そのような魔法を扱える術師は、普通の攻撃魔法も相当に上手く扱うはずです。ですので、やはり戦士が距離を取って戦うのは愚策でしょう。
近接戦闘の術もあるかもしれない事を注意しつつも、やはり接近戦を挑むしかないでしょうな。
いずれにしても魔法使いと戦う場合は速やかに接近戦に持ち込むのが基本です。
私としては、接近戦を挑む事を予測されて、予め罠でも仕掛けられる可能性にこそ、注意すべきだと思いますな。
さあ、それでは、そろそろ鍛錬を再開いたしましょう。
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