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第3章
15.協定締結
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「それでは具体的な協力の内容を相談しよう」
フィントリッドがそう言って話を進めた。
「私は、そなたから情報の提供を受け対価を支払うという関係を望んでいる。それ以上の協力関係は望まない。具体的に言えば、そなたと協力してダグダロア信者と戦うつもりまではない。
ダグダロア信者は私の敵だが、わざわざ探し出して殲滅しようとまでは思っていないからだ。
もしもダグダロア信者の標的がアストゥーリア王国や北方都市連合で、森の深部にまで手を出してこないなら、私は無理に奴らと戦おうとは思わない。
これはそなたも同じだろう?
もしもダグダロア信者がそなたの父君の仇ではなく、しかもその標的が私だった場合、そなたはダグダロア信者と無理に戦おうとは思わないのではないかな?」
それは正しい指摘だった。
確かに、もしもダグダロア信者が父の仇と関係がなく、しかも自分を攻撃してこないならば、エイクが進んでダグダロア信者と戦う事はないだろう。少なくとも父の仇討ちを終えるまでは。
ダグダロア信者はダグダロア信者以外の者すべてにとって敵といえる存在だが、エイクにとってはダグダロア信者と戦う事よりも父の仇討ちの方が重要だからだ。
「ええ、そうですね。それでよいと思います」
だからエイクはそう答えた。
フィントリッドは頷いて話しを続ける。
「それ以外に頼みたい事が出来た場合には、お互いその度に相談する事としよう」
「分かりました」
「それでは契約は概ね成立だな。そうなればその堅苦しい言葉遣いは止めてくれ。私達は対等な契約者同士ということになるのだからな」
「ああ、わかった」
エイクの答えを聞き、フィントリッドはもう一度満足気に頷いてから、さらに話しを続けた。
「では、手付け代わりに、まずはこちらから伝えられるだけの情報を伝えよう。
妖魔たちは北方都市連合の領域とアストゥーリア王国の2つのルートから森に侵入してきている。
このうち都市連合からの侵入してきている者達は、ユアン半島に現れた魔王の命を受けていることは確認済みだ。
都市連合領には私の仲間に行ってもらい詳しく調べている。
彼の調査の結果、魔王がダグダロアの徒であること、更に魔王とは別口のダグダロア信者も都市連合領で活発に動いている事を確認している。
そして彼独自の判断によって、既に暗闘が始まってしまっている。この件について詳しいことは伝えられない。不用意に情報を広める事は彼の戦いの邪魔になりかねないからだ。
そして、ここ2年ほどアストゥーリア王国からの侵入が目立つようになっている。
そいつらの一部を捕らえて聞き出した限りでは、連中は10年以上も前からドゥムラント半島から移動してきて、この国の国境付近に巣くっていたらしい。それが森に移動してきたというわけだ。更に新たにドゥムラントから直接移動して来ている者もいる」
ドゥムラント半島というのは、レシア王国やラベルナ王国など大陸西方の南に位置する国々の、更に南に広がる広大な半島だ。
その広さはアースマニス大陸全体の5分の1ほどにもなるといわれており、そのほぼ全土が魔族の領域となっている。面積としては大陸最大の魔族領域だ。
現在この地を統一する者は存在せず、幾人もの強大な魔族が魔王を名乗り覇権を争っているといわれている。
また、長く争いを続けているアストゥーリア王国と、レシア王国、クミル・ヴィント二重王国の国境には、それぞれの国の支配が及ばない領域がそれなりの広さで存在している。
その領域に多数の妖魔がいることは周知の事実だったが、光の担い手達の支配が及ばない場所が妖魔の領域になってしまうのはよくあることで、特に注意されていなかった。
しかし、フィントリッドが言うには、そこに住み着いた妖魔たちは何者かに導かれてドゥムラント半島からやって来た、ということのようだ。
「誰が、どうやってそんな広い範囲の妖魔を動かしているんだ?」
「私が捕らえた者達は、そろって神託に従ったと言っている。それなりに厳しく調べたから嘘ではなさそうだ。
だが、そのように動いている妖魔の数は相当のものだ。いかにダグダロアが神託を下しやすい神だといっても、余りにも数が多すぎる。恐らく奴らが受けたのは純粋な意味での神託ではないだろう」
「ッ!?……それは。つまり、預言者が現れたと?」
エイクは一瞬言いよどんでからそう発言した。
その表情は事態の深刻さを察して険しくしかめられていた。
フィントリッドがそう言って話を進めた。
「私は、そなたから情報の提供を受け対価を支払うという関係を望んでいる。それ以上の協力関係は望まない。具体的に言えば、そなたと協力してダグダロア信者と戦うつもりまではない。
ダグダロア信者は私の敵だが、わざわざ探し出して殲滅しようとまでは思っていないからだ。
もしもダグダロア信者の標的がアストゥーリア王国や北方都市連合で、森の深部にまで手を出してこないなら、私は無理に奴らと戦おうとは思わない。
これはそなたも同じだろう?
もしもダグダロア信者がそなたの父君の仇ではなく、しかもその標的が私だった場合、そなたはダグダロア信者と無理に戦おうとは思わないのではないかな?」
それは正しい指摘だった。
確かに、もしもダグダロア信者が父の仇と関係がなく、しかも自分を攻撃してこないならば、エイクが進んでダグダロア信者と戦う事はないだろう。少なくとも父の仇討ちを終えるまでは。
ダグダロア信者はダグダロア信者以外の者すべてにとって敵といえる存在だが、エイクにとってはダグダロア信者と戦う事よりも父の仇討ちの方が重要だからだ。
「ええ、そうですね。それでよいと思います」
だからエイクはそう答えた。
フィントリッドは頷いて話しを続ける。
「それ以外に頼みたい事が出来た場合には、お互いその度に相談する事としよう」
「分かりました」
「それでは契約は概ね成立だな。そうなればその堅苦しい言葉遣いは止めてくれ。私達は対等な契約者同士ということになるのだからな」
「ああ、わかった」
エイクの答えを聞き、フィントリッドはもう一度満足気に頷いてから、さらに話しを続けた。
「では、手付け代わりに、まずはこちらから伝えられるだけの情報を伝えよう。
妖魔たちは北方都市連合の領域とアストゥーリア王国の2つのルートから森に侵入してきている。
このうち都市連合からの侵入してきている者達は、ユアン半島に現れた魔王の命を受けていることは確認済みだ。
都市連合領には私の仲間に行ってもらい詳しく調べている。
彼の調査の結果、魔王がダグダロアの徒であること、更に魔王とは別口のダグダロア信者も都市連合領で活発に動いている事を確認している。
そして彼独自の判断によって、既に暗闘が始まってしまっている。この件について詳しいことは伝えられない。不用意に情報を広める事は彼の戦いの邪魔になりかねないからだ。
そして、ここ2年ほどアストゥーリア王国からの侵入が目立つようになっている。
そいつらの一部を捕らえて聞き出した限りでは、連中は10年以上も前からドゥムラント半島から移動してきて、この国の国境付近に巣くっていたらしい。それが森に移動してきたというわけだ。更に新たにドゥムラントから直接移動して来ている者もいる」
ドゥムラント半島というのは、レシア王国やラベルナ王国など大陸西方の南に位置する国々の、更に南に広がる広大な半島だ。
その広さはアースマニス大陸全体の5分の1ほどにもなるといわれており、そのほぼ全土が魔族の領域となっている。面積としては大陸最大の魔族領域だ。
現在この地を統一する者は存在せず、幾人もの強大な魔族が魔王を名乗り覇権を争っているといわれている。
また、長く争いを続けているアストゥーリア王国と、レシア王国、クミル・ヴィント二重王国の国境には、それぞれの国の支配が及ばない領域がそれなりの広さで存在している。
その領域に多数の妖魔がいることは周知の事実だったが、光の担い手達の支配が及ばない場所が妖魔の領域になってしまうのはよくあることで、特に注意されていなかった。
しかし、フィントリッドが言うには、そこに住み着いた妖魔たちは何者かに導かれてドゥムラント半島からやって来た、ということのようだ。
「誰が、どうやってそんな広い範囲の妖魔を動かしているんだ?」
「私が捕らえた者達は、そろって神託に従ったと言っている。それなりに厳しく調べたから嘘ではなさそうだ。
だが、そのように動いている妖魔の数は相当のものだ。いかにダグダロアが神託を下しやすい神だといっても、余りにも数が多すぎる。恐らく奴らが受けたのは純粋な意味での神託ではないだろう」
「ッ!?……それは。つまり、預言者が現れたと?」
エイクは一瞬言いよどんでからそう発言した。
その表情は事態の深刻さを察して険しくしかめられていた。
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