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第3章
70.孤児院襲撃後の対応
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バルドスが倒れて戦いが決着すると、オルリグは直ぐにブロンズゴーレムと戦っていた盗賊の1人を縛ろうとし始めた。まだ息があることに気付いていたからだ。
そのオルリグにバルバラが声をかけた。
「何をしているのですか」
その声は平素の優しげな声音をどうにか取り戻している。
アルターが優勢な戦いを堅実に進めて確実に敵を倒したことで、彼女もある程度気持ちを落ち着ける事が出来たようだ。
オルリグは作業を続けたまま淡々とした口調で答えた。
「まだ生きているので、縛っておきます」
「オルリグ、今のアルターさんの言葉を聞いていたでしょう?
エイク様はその者達が生きている事を望んでいないのですよ?」
「分かりました」
即答したオルリグは、直ぐにロングソードをその盗賊の首に当て、吹き出す血が自分にかからないように気を付けながらそのまま押し切った。
「それでよいのです」
バルバラはそう言ってから、続けてオルリグに労いの言葉をかけた。
「良く戦ってくれましたオルリグ。おかげで助かりました。とても頼もしかったですよ」
それまで薄い反応しかせず黙々と作業を行っていたオルリグもこの言葉はうれしかったようで、思わずといった様子でバルバラの方に顔を向け「ありがとうございます」と答えた。
だが彼は直ぐに赤面して顔をそらしてしまう。
バルバラはまだ上半身肌着姿だったからだ。
バルバラはそんなオルリグ少年の態度を特に気に留めずに答える。
「こちらこそ、ありがとうオルリグ。さあ、あなたはアルターさんを手伝って片づけを始めてください」
「分かりました」
オルリグそう答えてバルバラの指示に従った。
続いてバルバラは、ゴーレムの後ろでひとかたまりになっている子供達の方に向かう。
子供達の様子は様々だった。
年少の者の多くは恐怖に身を縮めて震えている。泣いている者もいた。
そんな子供達を年長の者の幾人かが庇うように抱きしめている。
武器の扱いを習い始めている者達の中には、いざとなれば自分も飛び出して戦おうと身構えている者もいた。
また中には、激しい戦いに興奮している様子の子供もいる。
そんな子供達に向かって、また優しげな様子でバルバラが語りかける。
「怖い思いをさせましたが、もう大丈夫です。
アルターさんと先生、そしてオルリグ兄さんが敵を倒しましたから。
ですが、あなた達にも分かったと思いますが、もしアルターさんが来てくれなければ、先生達だけではどうしようもありませんでした。
つまり、先生達の強さが足りなければ先生達は負けていたのです。
この敵はとても悪い人たちでしたが、それでも強ければ勝ってしまうのです。それが現実です。
先生達がいつも言っているように、人は正しく生きなければなりません。ですが、正しく生きていれば悪い人に負けないというわけではないのです。良いか悪いか、正しいか間違っているか、それは勝てるか負けるかには関係しません。
関係するのは強いか弱いかだけです。
そして、もしも先生達が負けていれば、あなた方が想像もできないような恐ろしい事が行われ、あなた達もきっと命を落としてしまった事でしょう。
先生達が日頃から、強くなる必要もあると言っている理由が分かりましたね?」
子供達の幾人かは「はい」と返事をした。
他の者達も皆うなずいている。
バルバラは微笑を見せてうなずくと、また優しげな声音で告げた。
「そうです。これからも強くなる事を目指して、いっそう鍛錬に励むのですよ。
今はとりあえず、安全が確認できるまでもう少しここで待っていてください」
そして、年長の子供達に幼い者達の面倒をみるように指示した。
それから彼女は脱ぎ捨てていたローブを羽織り、アルターの下に向かった。
アルターはまだ息があったエルデンに止めを刺し、他の者が生きていないかをオルリグと共に確認していた。
そのアルターにバルバラが声をかける。
「助かりました。アルターさん。こちらに来ていただけるとは思っていませんでした」
アルターが“大樹の学舎”に駆けつけたのは予定されていた行動ではなかった。
そもそも、“大樹の学舎”が襲撃されること、それもこれほど大規模な襲撃が行われることは想定外だった。
そんな想定外の事態を受け、バルバラは本当に我が身一つを犠牲して何とか子供達だけでも守ろうと思っていた。
アルターはその事を率直に詫びた。
「とんでもありません。これこそ間違いなく私の失態です。申し訳ありませんでした。
よもやこれほどの人数をこちらに回すとは……。
被害がでなかったのは本当に幸いでしたが、危ういところでした」
危ういところだったというのも事実である。
結果的には圧勝に終わったが、実のところ紙一重の差だった。
“大樹の学舎”に駆けつけたアルターは、盗賊たちがバルバラに気を取られていることに気付き、背後から奇襲をかけようと試みた。
一兵卒からの叩き上げで、妖魔相手の不正規戦も数多くこなしていたアルターは野伏の技術も一通り習得しており、奇襲は可能なはずだった。
ところが、その動きはバルドスに察知されてしまう。
この時は危うく万事休すとなるところだった。
もしもバルドスがすかさずアルターに接近戦を仕掛けてその動きを封じ、エルデンに自分を援護させ、もう1人の部下にバルバラを拘束するように命じたならば、アルターたちが敗れていただろう。
だがバルドスは、足を悪くしているアルターに対しては距離をおいて攻撃すべきだと思い込んでいたため、とっさに距離をとろうとしてしまった。
このおかげでアルターやバルバラの運が開けた。
アルターはエイクに仕える様になってしばらくたった頃に、エイクから身体欠損回復の霊薬を提供してもらい足を治していた。
しかしその後も、敵対者を油断させるためにその事を厳重な秘密にし、親しい者にも隠して、ずっと足を引きずって歩いていたのだ。
その工作が功を奏したのである。
その直後にアルターは敵の魔術師であるエルデンを何もさせないうちに倒した。
逆にバルバラは魔法を発動させることに成功した。
この差が勝敗を決したのだった。
その結果1人の犠牲も出さずにバルドスらを壊滅させることが出来た。
しかし、ゴルブロ一味がこれほどの人数を“大樹の学舎”に差し向けたこと自体が深刻な意味を持っている。
バルバラがそれに関することを告げる。
「あの盗賊たちは、私達がブロンズゴーレムまで作成して襲撃に備えていたのを見ても驚きませんでした。
それに私が指輪を発動体にして古語魔法を使うことも知っていました」
「そうですか……。
ごく最近の、ここの状況を把握していたという事ですね」
アルターの言葉にバルバラは静かにうなずいた。
子ども達を守ったブロンズゴーレムの材料は、最近エイクから提供された物だった。
エイクはゴルブロという凶悪な盗賊と戦う事になることを知った時点で、“大樹の学舎”が襲われる事を危惧した。
王都内におけるエイクの知り合いの中で、敵に襲われた場合に最も大きな被害を出してしまうのは、無力な子供達を多数抱えるこの孤児院だと思ったからだ。
そしてその事をバルバラに伝えて相談し、バルバラが“限定ゴーレム作成”の魔法によってブロンズゴーレムを作成できることを知ると、その材料を提供すると申し出た。
バルバラは最初その申出を断った。
ゴーレムの材料はかなりの高額になるし、エイクと知り合っているとは言っても、それほど緊密な関係ではない“大樹の学舎”が狙われる可能性は低いと考えたからだ。
だが、エイクからその盗賊団が一般市民すら平気で惨殺する凶悪な者達だという話を聞くうちに、ひょっとしたら本当に襲われるかも知れないという気もしてきた。
自分が遠慮した為に、万が一にも子供達を危険に晒すわけには行かない。
そう思い至ったバルバラは、とても強く恐縮しつつもエイクのその提案を受け入れた。
バルバラの同意を得たエイクは、アルターやロアンと図って、出来うる限り秘密裏のうちにゴーレムの材料となる大量の青銅等を“大樹の学舎”に運び込んだ。
そして、ゴルブロたちが王都に堂々と入り込んできた9月17日に、アルターは“大樹の学舎”に十分に気をつけるように連絡をした。
更に、18日にゴルブロ一味への攻撃をかける前には、事態が収拾するまでは基本的にゴーレムの近くにいて身を守るようにとも伝えていた。
“限定ゴーレム作成”の魔術で作成されたゴーレムは、1日程度の時間しかその体を保っていられない。しかし、基本的にその材料は何度でも使えるので、1日に1回魔術を行使すれば継続してゴーレムを使役できる。
エイクやアルターはこの対応で、“大樹の学舎”の安全は概ね確保できたと考えていた。
まず、エイクとの関わりがそれほど深くはない“大樹の学舎”が攻撃される可能性は、実際それほど高くはない。
仮に攻撃されるにしても、優秀とはいえ魔法使いが1人いるだけの“大樹の学舎”には、せいぜい3・4人程度しか回さないだろうと思われた。
これに対して、実際には“大樹の学舎”にはブロンズゴーレムという優れた護衛が控えており、更にオルリグというそこそこ戦える少年もいるため、5・6人程度の人数で襲われても対処可能である。
エイクやアルター、そしてバルバラもそのように考えていたのだ。
ところが、ゴルブロ一味は“大樹の学舎”のそのような防衛体制を見透かしていたかのように、精鋭を含む8人という、とても対処できない人数で襲撃して来たのだった。
この事態を受け、アルターは自身の見解を述べた。
「ここの情報すら漏洩されていた可能性を考えざるを得ませんな」
バルバラは再度うなずいた。
その顔は悩ましげに歪んでいた。
そこで、オルリグがアルターに話しかけた。
「アルターさん、確認が済みました。もう生きている敵は1人もいません」
「ありがとうオルリグ」
そう返したアルターは、バルバラに向かってまた告げる。
「いずれにしても、私達は今出来る事に全力を尽くすしかありません。
このような状況でこの場を離れるのは心苦しいですが、私は他の場所に向かいます」
バルバラが答える。
「分かりました。十分にお気をつけください」
「あなたもお気をつけて」
そう告げると、アルターは“大樹の学舎”を離れた。
今夜は他の場所でも戦いが起こっているはずである。
今更間に合わない可能性も高いが、それを援護しなければならない。アルターはそう考えていた。
そのオルリグにバルバラが声をかけた。
「何をしているのですか」
その声は平素の優しげな声音をどうにか取り戻している。
アルターが優勢な戦いを堅実に進めて確実に敵を倒したことで、彼女もある程度気持ちを落ち着ける事が出来たようだ。
オルリグは作業を続けたまま淡々とした口調で答えた。
「まだ生きているので、縛っておきます」
「オルリグ、今のアルターさんの言葉を聞いていたでしょう?
エイク様はその者達が生きている事を望んでいないのですよ?」
「分かりました」
即答したオルリグは、直ぐにロングソードをその盗賊の首に当て、吹き出す血が自分にかからないように気を付けながらそのまま押し切った。
「それでよいのです」
バルバラはそう言ってから、続けてオルリグに労いの言葉をかけた。
「良く戦ってくれましたオルリグ。おかげで助かりました。とても頼もしかったですよ」
それまで薄い反応しかせず黙々と作業を行っていたオルリグもこの言葉はうれしかったようで、思わずといった様子でバルバラの方に顔を向け「ありがとうございます」と答えた。
だが彼は直ぐに赤面して顔をそらしてしまう。
バルバラはまだ上半身肌着姿だったからだ。
バルバラはそんなオルリグ少年の態度を特に気に留めずに答える。
「こちらこそ、ありがとうオルリグ。さあ、あなたはアルターさんを手伝って片づけを始めてください」
「分かりました」
オルリグそう答えてバルバラの指示に従った。
続いてバルバラは、ゴーレムの後ろでひとかたまりになっている子供達の方に向かう。
子供達の様子は様々だった。
年少の者の多くは恐怖に身を縮めて震えている。泣いている者もいた。
そんな子供達を年長の者の幾人かが庇うように抱きしめている。
武器の扱いを習い始めている者達の中には、いざとなれば自分も飛び出して戦おうと身構えている者もいた。
また中には、激しい戦いに興奮している様子の子供もいる。
そんな子供達に向かって、また優しげな様子でバルバラが語りかける。
「怖い思いをさせましたが、もう大丈夫です。
アルターさんと先生、そしてオルリグ兄さんが敵を倒しましたから。
ですが、あなた達にも分かったと思いますが、もしアルターさんが来てくれなければ、先生達だけではどうしようもありませんでした。
つまり、先生達の強さが足りなければ先生達は負けていたのです。
この敵はとても悪い人たちでしたが、それでも強ければ勝ってしまうのです。それが現実です。
先生達がいつも言っているように、人は正しく生きなければなりません。ですが、正しく生きていれば悪い人に負けないというわけではないのです。良いか悪いか、正しいか間違っているか、それは勝てるか負けるかには関係しません。
関係するのは強いか弱いかだけです。
そして、もしも先生達が負けていれば、あなた方が想像もできないような恐ろしい事が行われ、あなた達もきっと命を落としてしまった事でしょう。
先生達が日頃から、強くなる必要もあると言っている理由が分かりましたね?」
子供達の幾人かは「はい」と返事をした。
他の者達も皆うなずいている。
バルバラは微笑を見せてうなずくと、また優しげな声音で告げた。
「そうです。これからも強くなる事を目指して、いっそう鍛錬に励むのですよ。
今はとりあえず、安全が確認できるまでもう少しここで待っていてください」
そして、年長の子供達に幼い者達の面倒をみるように指示した。
それから彼女は脱ぎ捨てていたローブを羽織り、アルターの下に向かった。
アルターはまだ息があったエルデンに止めを刺し、他の者が生きていないかをオルリグと共に確認していた。
そのアルターにバルバラが声をかける。
「助かりました。アルターさん。こちらに来ていただけるとは思っていませんでした」
アルターが“大樹の学舎”に駆けつけたのは予定されていた行動ではなかった。
そもそも、“大樹の学舎”が襲撃されること、それもこれほど大規模な襲撃が行われることは想定外だった。
そんな想定外の事態を受け、バルバラは本当に我が身一つを犠牲して何とか子供達だけでも守ろうと思っていた。
アルターはその事を率直に詫びた。
「とんでもありません。これこそ間違いなく私の失態です。申し訳ありませんでした。
よもやこれほどの人数をこちらに回すとは……。
被害がでなかったのは本当に幸いでしたが、危ういところでした」
危ういところだったというのも事実である。
結果的には圧勝に終わったが、実のところ紙一重の差だった。
“大樹の学舎”に駆けつけたアルターは、盗賊たちがバルバラに気を取られていることに気付き、背後から奇襲をかけようと試みた。
一兵卒からの叩き上げで、妖魔相手の不正規戦も数多くこなしていたアルターは野伏の技術も一通り習得しており、奇襲は可能なはずだった。
ところが、その動きはバルドスに察知されてしまう。
この時は危うく万事休すとなるところだった。
もしもバルドスがすかさずアルターに接近戦を仕掛けてその動きを封じ、エルデンに自分を援護させ、もう1人の部下にバルバラを拘束するように命じたならば、アルターたちが敗れていただろう。
だがバルドスは、足を悪くしているアルターに対しては距離をおいて攻撃すべきだと思い込んでいたため、とっさに距離をとろうとしてしまった。
このおかげでアルターやバルバラの運が開けた。
アルターはエイクに仕える様になってしばらくたった頃に、エイクから身体欠損回復の霊薬を提供してもらい足を治していた。
しかしその後も、敵対者を油断させるためにその事を厳重な秘密にし、親しい者にも隠して、ずっと足を引きずって歩いていたのだ。
その工作が功を奏したのである。
その直後にアルターは敵の魔術師であるエルデンを何もさせないうちに倒した。
逆にバルバラは魔法を発動させることに成功した。
この差が勝敗を決したのだった。
その結果1人の犠牲も出さずにバルドスらを壊滅させることが出来た。
しかし、ゴルブロ一味がこれほどの人数を“大樹の学舎”に差し向けたこと自体が深刻な意味を持っている。
バルバラがそれに関することを告げる。
「あの盗賊たちは、私達がブロンズゴーレムまで作成して襲撃に備えていたのを見ても驚きませんでした。
それに私が指輪を発動体にして古語魔法を使うことも知っていました」
「そうですか……。
ごく最近の、ここの状況を把握していたという事ですね」
アルターの言葉にバルバラは静かにうなずいた。
子ども達を守ったブロンズゴーレムの材料は、最近エイクから提供された物だった。
エイクはゴルブロという凶悪な盗賊と戦う事になることを知った時点で、“大樹の学舎”が襲われる事を危惧した。
王都内におけるエイクの知り合いの中で、敵に襲われた場合に最も大きな被害を出してしまうのは、無力な子供達を多数抱えるこの孤児院だと思ったからだ。
そしてその事をバルバラに伝えて相談し、バルバラが“限定ゴーレム作成”の魔法によってブロンズゴーレムを作成できることを知ると、その材料を提供すると申し出た。
バルバラは最初その申出を断った。
ゴーレムの材料はかなりの高額になるし、エイクと知り合っているとは言っても、それほど緊密な関係ではない“大樹の学舎”が狙われる可能性は低いと考えたからだ。
だが、エイクからその盗賊団が一般市民すら平気で惨殺する凶悪な者達だという話を聞くうちに、ひょっとしたら本当に襲われるかも知れないという気もしてきた。
自分が遠慮した為に、万が一にも子供達を危険に晒すわけには行かない。
そう思い至ったバルバラは、とても強く恐縮しつつもエイクのその提案を受け入れた。
バルバラの同意を得たエイクは、アルターやロアンと図って、出来うる限り秘密裏のうちにゴーレムの材料となる大量の青銅等を“大樹の学舎”に運び込んだ。
そして、ゴルブロたちが王都に堂々と入り込んできた9月17日に、アルターは“大樹の学舎”に十分に気をつけるように連絡をした。
更に、18日にゴルブロ一味への攻撃をかける前には、事態が収拾するまでは基本的にゴーレムの近くにいて身を守るようにとも伝えていた。
“限定ゴーレム作成”の魔術で作成されたゴーレムは、1日程度の時間しかその体を保っていられない。しかし、基本的にその材料は何度でも使えるので、1日に1回魔術を行使すれば継続してゴーレムを使役できる。
エイクやアルターはこの対応で、“大樹の学舎”の安全は概ね確保できたと考えていた。
まず、エイクとの関わりがそれほど深くはない“大樹の学舎”が攻撃される可能性は、実際それほど高くはない。
仮に攻撃されるにしても、優秀とはいえ魔法使いが1人いるだけの“大樹の学舎”には、せいぜい3・4人程度しか回さないだろうと思われた。
これに対して、実際には“大樹の学舎”にはブロンズゴーレムという優れた護衛が控えており、更にオルリグというそこそこ戦える少年もいるため、5・6人程度の人数で襲われても対処可能である。
エイクやアルター、そしてバルバラもそのように考えていたのだ。
ところが、ゴルブロ一味は“大樹の学舎”のそのような防衛体制を見透かしていたかのように、精鋭を含む8人という、とても対処できない人数で襲撃して来たのだった。
この事態を受け、アルターは自身の見解を述べた。
「ここの情報すら漏洩されていた可能性を考えざるを得ませんな」
バルバラは再度うなずいた。
その顔は悩ましげに歪んでいた。
そこで、オルリグがアルターに話しかけた。
「アルターさん、確認が済みました。もう生きている敵は1人もいません」
「ありがとうオルリグ」
そう返したアルターは、バルバラに向かってまた告げる。
「いずれにしても、私達は今出来る事に全力を尽くすしかありません。
このような状況でこの場を離れるのは心苦しいですが、私は他の場所に向かいます」
バルバラが答える。
「分かりました。十分にお気をつけください」
「あなたもお気をつけて」
そう告げると、アルターは“大樹の学舎”を離れた。
今夜は他の場所でも戦いが起こっているはずである。
今更間に合わない可能性も高いが、それを援護しなければならない。アルターはそう考えていた。
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