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第3章
83.最善をつくす
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ゴルブロらとの死闘から一夜明けた9月20日朝。
エイクはアルターからアルマンドを捕らえ、そして処刑した報告を受けていた。
「死体をご確認いたしますか?」
そう問うアルターにエイクが答えた。
「いや、今すぐに確認する必要はない。
それよりもその死体は出来るだけ早く、適当な形で人目に晒すようにしてくれ。
あからさまに殺されたと分かるわけではないが、ある程度の事情を知る者や、後から俺の事を知ろうとした者には、俺による制裁で殺されたと分かる。
そんな感じがいい。
死体の確認はその晒された後の状況でしよう」
「見せしめ、ということでしょうか」
「そうだ。今後の為にもそうしておいた方がいいと思う。何か意見があるか?」
「いえ、適切な処置と拝察いたします。それでは普通なら溺れないような、小さな溝に浮いてもらいましょう。
彼は水死していますので、都合がよいかと」
「頼む」
(それが最善を尽くす行為というべきだ)
エイクはそう思った。
それが、エイクがアルマンドの死体を晒すという判断をした理由だった。
迷宮で無様な敗北を喫し、いずれは自分の片腕になってくれればとまで思っていたアルマンドに裏切られた事から、エイクも今後自分はどうするべきなのかという事を考えさせられていた。
だが、その結果エイクが出した答えは、どんな結果になっても後悔しないように日頃から最善を尽くす。という、余りにもありきたりなものだった。
今回エイクは命に係わる敗北を喫したが、それでも強くなるためには危険な戦いに挑むべきだというエイクの信念はいささかも変わらない。
父の仇を討つためには、できるだけ早くもっと強くならなければならないのは間違いないし、いずれは最強を目指すという意思も揺るぎなかったからだ。
そして、勝って当たり前の戦いばかりしていても強くなれないということは、エイクにとっては自明だった。
(俺はこれからも、今回のような危険な賭けのような戦いにも挑む事を止めない。あえて死地に赴くようなこともするだろう。
当然、敗北し死ぬこともあり得る。その可能性をなくすことは出来ない。
なら出来る事は、今回のように油断したり慢心したり怠ったりして、後で後悔する事がないように、最善を尽くす事だけだ。
危険を承知の上であえて挑むことや、予測不可能な危険に陥ることはあっても、今回のように十分な注意や適切な判断をせずに、不用意に危険に飛び込む事だけは決してしない)
エイクはそう考えていた。
そしてまた、エイクの最善を尽くすという考えは、戦いだけではなく信頼関係の構築という面にも及んでいた。
今回エイクはアルマンドには裏切られてしまったが、反面仲間たちのおかげで勝てたということもしっかりと認識していた。
アルターとセレナ、そして資金提供をしてくれているロアン。彼らの協力がなければゴルブロ一味に勝つことなど全く不可能だった。
そして、目的を達する事も出来なかった
理想を言うなら自分一人で全てをこなし、他者の助力など何も必要としない者になるべきだ。
だが、現実のエイクはそんな完全な者には程遠いのだから、他者の助力が必要である。
つまり信頼できる仲間が必要だということだ。
アルマンドに裏切られたからと言って、今後は誰も信じない、などという態度をとるのは余りにも非効率的すぎる。というよりも非現実的といえるだろう。
実際エイクは今までの経過などから、今でもアルターとセレナとロアンは信頼できると思っている。
だが、一度信頼したからといって、その後も漫然と信頼し続けるのは努力を怠っていると言わざるを得ないだろう。
信頼関係を継続させるためにも、最善を尽くすべきなのだ。
そして、エイクの考えでは、信頼関係の根本にあるのは利害関係である。
自分の味方になっていれば利益がある。裏切れば害がある。そう思うからこそ自分の味方で居続ける。
人柄や関係の緊密さも大事だが、基礎になっていのはやはり利害関係だ。
人柄云々はその後の事だ。エイクはそう思っていた。
特に重視すべきなのは裏切った場合の害の大きさを知らしめることだ。
エイク以上の利益を与える事が出来る存在は、世の中にはいくらでもいる。
つまり、利益の供与だけでは人を引き留めることは出来ない。
味方でいれば利益があるというだけではなく、裏切った場合は死という最悪の報復がなされる事を示してこそ、裏切りを抑制する事が出来るのだ。
よって、自分を裏切った場合は死を与えるということを明らかにすることが、信頼関係を継続させるために最善を尽くすことになる。
エイクはそのように考えた結果、アルマンドの死体を、エイクを裏切った為に制裁として殺されたのだと察する事ができる形で人目に晒すことにしたのだった。
アルマンドは賞金首になっていないので、エイクが私刑で殺した事が明白になってしまえば、エイクが罰せられる。
まあ、この国の法や多くの人々の認識では、状況を踏まえればアルマンドを殺しても大した罪には問われない可能性が高いが、それでも犯罪は犯罪である。ばれないにこしたことはない。
しかし、この国の官憲は、身寄りもない者が多少不自然な状況で死んだからといって、調査などしない。
だから、少し調べればエイクによる制裁によって殺されたと察せられる状態で死んでいても、何ら問題は発生しない。
エイクはそう判断したのだ。
エイクも、この己の行為が“悪”であることは承知している。
だがエイクは、この程度の悪を為すことに最早躊躇いはなかった。
なぜなら彼は、己の目的の為にこれ以上の悪に手を染める事を既に決めていたからだ。
その目的とは、無論父の仇討ちだ。
エイクはその事を踏まて、今後為すべきことを改めて考えていた。
エイクはアルターからアルマンドを捕らえ、そして処刑した報告を受けていた。
「死体をご確認いたしますか?」
そう問うアルターにエイクが答えた。
「いや、今すぐに確認する必要はない。
それよりもその死体は出来るだけ早く、適当な形で人目に晒すようにしてくれ。
あからさまに殺されたと分かるわけではないが、ある程度の事情を知る者や、後から俺の事を知ろうとした者には、俺による制裁で殺されたと分かる。
そんな感じがいい。
死体の確認はその晒された後の状況でしよう」
「見せしめ、ということでしょうか」
「そうだ。今後の為にもそうしておいた方がいいと思う。何か意見があるか?」
「いえ、適切な処置と拝察いたします。それでは普通なら溺れないような、小さな溝に浮いてもらいましょう。
彼は水死していますので、都合がよいかと」
「頼む」
(それが最善を尽くす行為というべきだ)
エイクはそう思った。
それが、エイクがアルマンドの死体を晒すという判断をした理由だった。
迷宮で無様な敗北を喫し、いずれは自分の片腕になってくれればとまで思っていたアルマンドに裏切られた事から、エイクも今後自分はどうするべきなのかという事を考えさせられていた。
だが、その結果エイクが出した答えは、どんな結果になっても後悔しないように日頃から最善を尽くす。という、余りにもありきたりなものだった。
今回エイクは命に係わる敗北を喫したが、それでも強くなるためには危険な戦いに挑むべきだというエイクの信念はいささかも変わらない。
父の仇を討つためには、できるだけ早くもっと強くならなければならないのは間違いないし、いずれは最強を目指すという意思も揺るぎなかったからだ。
そして、勝って当たり前の戦いばかりしていても強くなれないということは、エイクにとっては自明だった。
(俺はこれからも、今回のような危険な賭けのような戦いにも挑む事を止めない。あえて死地に赴くようなこともするだろう。
当然、敗北し死ぬこともあり得る。その可能性をなくすことは出来ない。
なら出来る事は、今回のように油断したり慢心したり怠ったりして、後で後悔する事がないように、最善を尽くす事だけだ。
危険を承知の上であえて挑むことや、予測不可能な危険に陥ることはあっても、今回のように十分な注意や適切な判断をせずに、不用意に危険に飛び込む事だけは決してしない)
エイクはそう考えていた。
そしてまた、エイクの最善を尽くすという考えは、戦いだけではなく信頼関係の構築という面にも及んでいた。
今回エイクはアルマンドには裏切られてしまったが、反面仲間たちのおかげで勝てたということもしっかりと認識していた。
アルターとセレナ、そして資金提供をしてくれているロアン。彼らの協力がなければゴルブロ一味に勝つことなど全く不可能だった。
そして、目的を達する事も出来なかった
理想を言うなら自分一人で全てをこなし、他者の助力など何も必要としない者になるべきだ。
だが、現実のエイクはそんな完全な者には程遠いのだから、他者の助力が必要である。
つまり信頼できる仲間が必要だということだ。
アルマンドに裏切られたからと言って、今後は誰も信じない、などという態度をとるのは余りにも非効率的すぎる。というよりも非現実的といえるだろう。
実際エイクは今までの経過などから、今でもアルターとセレナとロアンは信頼できると思っている。
だが、一度信頼したからといって、その後も漫然と信頼し続けるのは努力を怠っていると言わざるを得ないだろう。
信頼関係を継続させるためにも、最善を尽くすべきなのだ。
そして、エイクの考えでは、信頼関係の根本にあるのは利害関係である。
自分の味方になっていれば利益がある。裏切れば害がある。そう思うからこそ自分の味方で居続ける。
人柄や関係の緊密さも大事だが、基礎になっていのはやはり利害関係だ。
人柄云々はその後の事だ。エイクはそう思っていた。
特に重視すべきなのは裏切った場合の害の大きさを知らしめることだ。
エイク以上の利益を与える事が出来る存在は、世の中にはいくらでもいる。
つまり、利益の供与だけでは人を引き留めることは出来ない。
味方でいれば利益があるというだけではなく、裏切った場合は死という最悪の報復がなされる事を示してこそ、裏切りを抑制する事が出来るのだ。
よって、自分を裏切った場合は死を与えるということを明らかにすることが、信頼関係を継続させるために最善を尽くすことになる。
エイクはそのように考えた結果、アルマンドの死体を、エイクを裏切った為に制裁として殺されたのだと察する事ができる形で人目に晒すことにしたのだった。
アルマンドは賞金首になっていないので、エイクが私刑で殺した事が明白になってしまえば、エイクが罰せられる。
まあ、この国の法や多くの人々の認識では、状況を踏まえればアルマンドを殺しても大した罪には問われない可能性が高いが、それでも犯罪は犯罪である。ばれないにこしたことはない。
しかし、この国の官憲は、身寄りもない者が多少不自然な状況で死んだからといって、調査などしない。
だから、少し調べればエイクによる制裁によって殺されたと察せられる状態で死んでいても、何ら問題は発生しない。
エイクはそう判断したのだ。
エイクも、この己の行為が“悪”であることは承知している。
だがエイクは、この程度の悪を為すことに最早躊躇いはなかった。
なぜなら彼は、己の目的の為にこれ以上の悪に手を染める事を既に決めていたからだ。
その目的とは、無論父の仇討ちだ。
エイクはその事を踏まて、今後為すべきことを改めて考えていた。
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