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第4章
87.魔族の本隊を攻める③
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エイクは、最初にやって来た6体の妖魔を手早く倒した後、死体を目に付かないところに移そうとした。
戦いの痕跡を短時間で完全に消すのは不可能だが、せめて、遠くから悟られないようにしようと考えたからだ。
そして、その作業をしている最中に、魔族の本隊から21のオドが動いてくるのを感知した。
(隊を分けたか、少し面倒だな)
エイクはそう考えた。彼は出来れば全員でこちらに向かって来て欲しいと思っていたのである。
全員で動くなら、必然的にその中に敵の首領がいる。そして、気配を消して木々の合間に身を隠せば、この多数の罠を設置した場所で一気に首領に肉薄する事も出来るだろう。
そうすれば、かなり有利に戦えるはずだった。
(だがまあ、全員で守りを固められたり、バラバラに動かれたりするよりはましだ。
とりあえず、残った方を優先して叩くべきだな。
……不審には思われてしまうだろうが、やむを得ない)
エイクはそう判断した。
残ったオドの方が多い事を踏まえても、首領は後に残っている可能性が高い。まずは、そちらを潰すべきだろう。
また、不審に思われてしまうというのは、フィントリッドらに自分の行動を見られていることを想定して考えたことだ。
確かに、折角多数の罠を設置したのに、そこで待ち構えずに離れるという行為は不自然だ。不審に思われる事だろう。
場合によっては何らかの方法で魔族の動きを感知したからではないかと推測され、オドの感知能力がばれるきっかけになってしまうかもしれない。
だが、今の状況でそれを気にして、手薄になっている敵首領を攻撃しないという手はない。
こちらに向かってきている21名を先に討てば、その間に後方に残っているだろう首領に最大限に警戒されてしまうに違いない。逃げられてしまう可能性もある。
(俺の能力が確実にばれてしまうというほどの、決定的な行動ではないはずだ。
敵の本隊の様子を自分の目で確かめたかったとか、解釈の余地もあるからな)
エイクはそう考えて自分を納得させた。
そして、妖魔の死体を直ぐには見つからないような付近の木陰まで移して、落ち葉で覆って最低限の偽装をすると、その場を離れて魔族の本隊の方へと向かったのだった。
モニサが周囲の異常を察知し周りを警戒していた頃、エイクは既にエレシエス率いる魔族本隊の後方に回り込んでいた。
そして、このまま攻撃を仕掛ける事を決めていた。
伺い見る限り警戒が必要なほどの強者はいないし、厄介な罠等も設置されてはいないと見て取ったからだ。
もちろん、魔法に長けたオーガやダークエルフ達は魔法を扱うだろう。そして、その実力がどれほどのものかは見ただけでは分からない。
妖魔の数も侮るべきではない。
また、実力を隠している者がいるかも知れないし、未知の特殊能力を持っている者がいる可能性もある。
だが、エイクの魔法に対する耐性はかなり強い上に、格下相手なら相当の数でもなぎ払えるだけの技量がある。
そして、全ての可能性を考慮して完全な安全を確保する事など、どの道無理な事だ。エイクは最初からそう割り切っている。つまり、今の状況で戦いを躊躇う理由は、エイクにはない。
エイクは今までと同様に、多少の危険は承知の上で戦いを挑むつもりだった。
エイクはエレシエスから20mほどにある木の陰にまで至った。
(これ以上隠れて接近するのは無理だな)
そして、そう判断した。
エレシエスは見張りの者達を信頼して、この場所の安全性は高いと思っていた。
また、少し前に、警戒を命じるモニサの声を聞き取っており、まもなくモニサ達と敵の戦いが始まるだろうと考え、そちらに注意を向けていた。
だが、だからといって周囲の警戒を怠るような愚か者ではなかった。
この場に残っている魔族たちを自分を囲むように配置し、抜かりなく周囲を警戒させている。エイクが潜む後方を注意して見ている者もいた。
エイクは錬生術の奥義を用いて完全に気配を消す事が出来るが、透明になれる訳ではない。
身を隠す物がなければ、注意してこちらを見ている者の目を、真正面から誤魔化すのは流石に無理だ。
この場が比較的開けている事もあり、これ以上気付かれずに接近する事は不可能だった。
そして、そう判断すると同時に次の行動に出た。
躊躇いなく突撃を敢行したのである。
標的はもちろんエレシエスだ。
窺い知れる強さや魔族の配置から、そのオーガが首領だろうということは分かっていた。
「ブハッ!?」
エイクの姿を認めたオークがそんな声をあげる。
そのオークは、誰もいないと思っていた木陰から突然エイクが姿を現した事に驚愕した。
だが、それでも己のすべき事を忘れてはいなかった。
「敵襲!!」
即座にそう叫ぶ。
その声を聞き、エイクの方を見た他の魔族達も驚きを隠す事は出来なかった。だが、一瞬の後にはエレシエスを庇うよう動く。
「爆ぜろ」
エイクはキーワードを口にして、予め用意していた爆裂の魔石を鋭く投じる。狙うのはエレシエスの手前の地面である。
「爆裂の魔石だ!」
エレシエスの傍らに立っていたダークエルフ――リシアーネが、そのことに気付いて声をあげ、同時にエレシエスの前に立とうとした。
その声を受けて他の魔族達も動く。
エレシエスの近くに身を寄せ、その身を守ろうとしたのだ。
だが間に合わない。
地面に落ちた爆裂の魔石が炸裂する。
2体のボガードが間近でその衝撃を受け、弾き飛ばされた。死んではいないがその意識は失われている。
他にもリシアーネを含めて7名の魔族が爆発に巻き込まれた。ダメージは命に別状はない程度だったが、爆風に煽られ体勢を崩す。
そして爆煙が上がり、木の葉や土が巻き上がって、魔族達の視界を塞いだ。
エイクはその間も全力で駆けていた。そして、真っ直ぐに爆煙の中に突っ込んだ。
爆煙に紛れて、一気にエレシエスを襲うつもりなのである。
戦いの痕跡を短時間で完全に消すのは不可能だが、せめて、遠くから悟られないようにしようと考えたからだ。
そして、その作業をしている最中に、魔族の本隊から21のオドが動いてくるのを感知した。
(隊を分けたか、少し面倒だな)
エイクはそう考えた。彼は出来れば全員でこちらに向かって来て欲しいと思っていたのである。
全員で動くなら、必然的にその中に敵の首領がいる。そして、気配を消して木々の合間に身を隠せば、この多数の罠を設置した場所で一気に首領に肉薄する事も出来るだろう。
そうすれば、かなり有利に戦えるはずだった。
(だがまあ、全員で守りを固められたり、バラバラに動かれたりするよりはましだ。
とりあえず、残った方を優先して叩くべきだな。
……不審には思われてしまうだろうが、やむを得ない)
エイクはそう判断した。
残ったオドの方が多い事を踏まえても、首領は後に残っている可能性が高い。まずは、そちらを潰すべきだろう。
また、不審に思われてしまうというのは、フィントリッドらに自分の行動を見られていることを想定して考えたことだ。
確かに、折角多数の罠を設置したのに、そこで待ち構えずに離れるという行為は不自然だ。不審に思われる事だろう。
場合によっては何らかの方法で魔族の動きを感知したからではないかと推測され、オドの感知能力がばれるきっかけになってしまうかもしれない。
だが、今の状況でそれを気にして、手薄になっている敵首領を攻撃しないという手はない。
こちらに向かってきている21名を先に討てば、その間に後方に残っているだろう首領に最大限に警戒されてしまうに違いない。逃げられてしまう可能性もある。
(俺の能力が確実にばれてしまうというほどの、決定的な行動ではないはずだ。
敵の本隊の様子を自分の目で確かめたかったとか、解釈の余地もあるからな)
エイクはそう考えて自分を納得させた。
そして、妖魔の死体を直ぐには見つからないような付近の木陰まで移して、落ち葉で覆って最低限の偽装をすると、その場を離れて魔族の本隊の方へと向かったのだった。
モニサが周囲の異常を察知し周りを警戒していた頃、エイクは既にエレシエス率いる魔族本隊の後方に回り込んでいた。
そして、このまま攻撃を仕掛ける事を決めていた。
伺い見る限り警戒が必要なほどの強者はいないし、厄介な罠等も設置されてはいないと見て取ったからだ。
もちろん、魔法に長けたオーガやダークエルフ達は魔法を扱うだろう。そして、その実力がどれほどのものかは見ただけでは分からない。
妖魔の数も侮るべきではない。
また、実力を隠している者がいるかも知れないし、未知の特殊能力を持っている者がいる可能性もある。
だが、エイクの魔法に対する耐性はかなり強い上に、格下相手なら相当の数でもなぎ払えるだけの技量がある。
そして、全ての可能性を考慮して完全な安全を確保する事など、どの道無理な事だ。エイクは最初からそう割り切っている。つまり、今の状況で戦いを躊躇う理由は、エイクにはない。
エイクは今までと同様に、多少の危険は承知の上で戦いを挑むつもりだった。
エイクはエレシエスから20mほどにある木の陰にまで至った。
(これ以上隠れて接近するのは無理だな)
そして、そう判断した。
エレシエスは見張りの者達を信頼して、この場所の安全性は高いと思っていた。
また、少し前に、警戒を命じるモニサの声を聞き取っており、まもなくモニサ達と敵の戦いが始まるだろうと考え、そちらに注意を向けていた。
だが、だからといって周囲の警戒を怠るような愚か者ではなかった。
この場に残っている魔族たちを自分を囲むように配置し、抜かりなく周囲を警戒させている。エイクが潜む後方を注意して見ている者もいた。
エイクは錬生術の奥義を用いて完全に気配を消す事が出来るが、透明になれる訳ではない。
身を隠す物がなければ、注意してこちらを見ている者の目を、真正面から誤魔化すのは流石に無理だ。
この場が比較的開けている事もあり、これ以上気付かれずに接近する事は不可能だった。
そして、そう判断すると同時に次の行動に出た。
躊躇いなく突撃を敢行したのである。
標的はもちろんエレシエスだ。
窺い知れる強さや魔族の配置から、そのオーガが首領だろうということは分かっていた。
「ブハッ!?」
エイクの姿を認めたオークがそんな声をあげる。
そのオークは、誰もいないと思っていた木陰から突然エイクが姿を現した事に驚愕した。
だが、それでも己のすべき事を忘れてはいなかった。
「敵襲!!」
即座にそう叫ぶ。
その声を聞き、エイクの方を見た他の魔族達も驚きを隠す事は出来なかった。だが、一瞬の後にはエレシエスを庇うよう動く。
「爆ぜろ」
エイクはキーワードを口にして、予め用意していた爆裂の魔石を鋭く投じる。狙うのはエレシエスの手前の地面である。
「爆裂の魔石だ!」
エレシエスの傍らに立っていたダークエルフ――リシアーネが、そのことに気付いて声をあげ、同時にエレシエスの前に立とうとした。
その声を受けて他の魔族達も動く。
エレシエスの近くに身を寄せ、その身を守ろうとしたのだ。
だが間に合わない。
地面に落ちた爆裂の魔石が炸裂する。
2体のボガードが間近でその衝撃を受け、弾き飛ばされた。死んではいないがその意識は失われている。
他にもリシアーネを含めて7名の魔族が爆発に巻き込まれた。ダメージは命に別状はない程度だったが、爆風に煽られ体勢を崩す。
そして爆煙が上がり、木の葉や土が巻き上がって、魔族達の視界を塞いだ。
エイクはその間も全力で駆けていた。そして、真っ直ぐに爆煙の中に突っ込んだ。
爆煙に紛れて、一気にエレシエスを襲うつもりなのである。
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