彼女の理想に近づく為に、僕は何度でも繰返す

トン之助

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第6話 彼女との交渉

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  僕は藤宮さんとの鬼ヶ島フードファイトを経て確信した事がある。

 それは、彼女は食べるのが大好きだ!

 だってカレーを食べる彼女の横顔は眩しい程に輝いていた。

 勝負に負けて話しかけるなと言われだが、僕は一つの妙案を思いついていた!

「ふふふっ!  藤宮さん。君のその氷のような表情を僕が溶かしてあげる。勝負には負けたけど試合には勝たせてもらうよ!」

 しかし今日の藤宮さんとはよく目が合う。合うたたびに睨まれているが何故だろう?

 僕の事が好きになったのかな?

 それに僕が近づくと、藤宮さんは勢いよく離れていく。なるほど、これが好き避けってやつか!

「んもぅ!  藤宮さんってば素直じゃない」

 ペンが弾丸の如く飛んできておでこにヘッドショットだ。


 昼休みになると藤宮さんは席を立ち一目散に学食へ向かった。新学期を迎え上級生も入り混じる中、悠然と歩を進める。まるでステージを歩くモデルのように迷いがない。

「コレを使うわ!」

 学食の受付にたどり着くと黄金に輝く一枚のカードを差し出した。それは以前ゲットした食券一ヶ月分の優待券。ちなみに全メニュー好きなだけ食べることができる。

「おぉ!」
「彼女が噂の」
「しかもダブルで鬼ヶ島を倒したんだろ?」

「ダブル鬼ヶ島!!」
「すげー」
「しかも美人」

 歓声の雨あられだ、僕も鼻が高い。

「ハンバーグ定食大盛りとフライドポテト、納豆と冷奴追加で!それとチョコレートパフェにレアチーズケーキ」

「「「「食べ過ぎだぁぁぁぁ」」」」

 そんな言葉を他所に次々に注文する藤宮さん。

 厨房のお姉さんは嬉しそうだ。

 僕は物陰からそっとその様子を見ると、ニヤリと笑う。そして……

「勝った!」

 と心の中でガッツポーズをする。決戦は放課後だ!

「うぃーす。んじゃホームルーム終わるぞ。委員長はプリント整理と日誌書いて私の机に置いて帰れよ」


「「さようならー」」

 先生の挨拶の後、解散になり僕と藤宮さんの二人きりの時間が訪れる。

 仕掛けるならここだぁ!

 藤宮さんが教卓でプリントを整理している。僕は藤宮さんの目の前に行き秘密兵器を教卓の上に置く。


「藤宮さん、これが何かわかる?」
「んあ?」

 少し視線を上げる藤宮さん。

「こ、これは!」

 氷の表情の藤宮さんでもさすがにコレは見逃せない。

「ど、どこで手に入れた?」
「お店に並んで買ってきた」

「ば、馬鹿な!?  あそこの商品は昼と夜の二回、開店と同時になくなるんだぞ?」


 もはや約束は霧散したかのように問いただす藤宮さん。


「ふふーんさっき買ってきたんだ!」
「なっ?  昼休みか?」

「うん!」
「どおりで昼の授業いなかった訳か」

「よく見てるんだね藤宮さん!僕の事好きになったの?」
「黙れ小僧っ!!」


 山犬もビックリなお声……


「ごめんなさいコレあげるので許してください」


 教卓の上に置かれている包み。綺麗に包装された中身は、黄金と麦色が美しい超人気店の高級食パンだ!


「くっこれしきで……」

「これもつけよう!」

「なん……だと……」


 僕はもう一つの切り札、食券優待券(僕の分)を取り出した。ちなみに使い始めからカウントされるので使用期限は問題ない。


「しかし、それではお前が……」

「僕は藤宮さんとお話がしたい!その為ならこの程度問題ない!むしろ受け取って欲しい」

「なんでそこまで……」


 彼女はよほど衝撃だったのだろう……振っても無視しても貶してもそれでも話しかける僕の事が。だから僕はありのままを告げる。


「初めから言ってるじゃん。キミの事が好きですって」


 それに……


「藤宮さんは笑ってた方がいい!食べてる時の表情が一番可愛い!」


「……」


 この時の言葉を彼女がどう受けとったかはわからない。でも決して悪い方ではないような気がした。


「これで……手を打とう」


 僕からカードと食パンを受けとったその顔は夕日に照らされて赤く染まっていた。


「よし!  交渉成立だね!  付き合おう」

「図に乗るな」


 バゴッ



 プリントも 塵も積もれば 鈍器かな

 黒江 渚

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