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第9話 むしろ……嬉しかった
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俺達はポップコーンを食べながら、映画にのめり込んでいく。あまりに集中し過ぎて、お互いの指がコツンっと当たると、顔を見合わせて、微笑んだ。
物語が終盤を迎える──渚はいつまでもズルズル引き摺っていても仕方ないと、ダンススクールを辞める事を決意する。
その事を伝えようと渚はダンススクールで一人、先生を待っていた。ガチャっとダンススクールのドアが開き、そこに現れたのは──翼だった。
『翼! どうしてここに!?』と、驚きながら尋ねる渚に、翔は『正直な気持ちを伝えにきた』と答える。
『正直な気持ち?』
『うん』と翼は返事をして、ゆっくり渚に近づき──向き合うように立ち止まる。
『ダンスを続けるか、続けないかは君が決める事……だから俺が口出す事じゃない。そう思ってずっと黙っていた』
翼は暗い面持ちで眉を顰め、うつむく。
『だけど……昨日、君からダンスを辞めると打ち明けて貰った時、それでいいのか? って、一晩中、すごく悩んだ』
翼は顔を真っ直ぐにして、真剣な眼差しで渚の顔を見つめる。
『俺……活き活きと踊っている君が好きだ。だからもう一度、俺と踊ってくれませんか?』
翼はそう言って、渚に向かって手を差し出す。渚は黙って俯き『でも……上手に踊れるか分からないし……』と不安を口にした。
翼は優しく微笑む。
『大丈夫、俺が君を支える』
渚は少しの間、躊躇っていたが、手を差し出し『──分かった』
そこから、しっとりとした涙を誘う曲が流れ、クライマックスを迎える──感動のあまり鼻をすすっていると、星恵さんがスッとティッシュを差し出す。
俺は小声で「ありがとう」と言って、受け取った──エンドロールが流れ終わり、劇場内が明るくなると俺達は外に出る。
「これから、どうする?」
「そうねぇ……感想を言い合いたいから、ちょっと喫茶店に行こうか?」
「良いね」
──俺達は映画館を出ると、隣にある喫茶店に向かう。中に入ると、窓際の二人席に座った。
「何にするかぁー……」と、メニューを開き──俺はコーヒー、星恵さんは紅茶を店員さんに頼む。
俺はメニューを元の位置に戻し、「あ!」と、声を漏らすとジャケットの胸ポケットからティッシュを取り出す。
「これ、ありがとう」と、俺が星恵さんにティッシュを差し出すと、星恵さんは受け取り「どう致しまして」
「あぁ……にしても、感動したな。話が分かっているから、そんなに感動しないだろうって思ってた」
「曲がつくとヤバいよね」
「それな! 曲がヤバいんだ。SNSで予告映像を観た時から、鳥肌が止まらなかったもん!」
「分かる!」
──店員さんが運んできてくれた飲み物を飲みながら、しばし俺達は映画の内容で盛り上がる。
「──ポップコーンも美味しかったし、最高だったね」と星恵さんは言って、カップをテーブルに置く。
「あ。思い出したけど、指を当てちゃって、ごめん」
星恵さんは黙って首を横に振り「うぅん、大丈夫」と返事をする。そして俯き加減で「むしろ……嬉しかった」とボソッと言った。
「え……」
「私、そのシチュエーションに憧れていたから……」
嬉しさのあまり、言葉を失う。俺はとりあえず「──はは……俺で良かったかは分からないけど、憧れに貢献できて光栄だよ」と返した。
星恵さんはそれを聞いて、嬉しそうに微笑みながら頬を掻く。何だか凄く良い雰囲気だ。俺達はこのまま世間話を続け、良い雰囲気のまま帰宅をした。
物語が終盤を迎える──渚はいつまでもズルズル引き摺っていても仕方ないと、ダンススクールを辞める事を決意する。
その事を伝えようと渚はダンススクールで一人、先生を待っていた。ガチャっとダンススクールのドアが開き、そこに現れたのは──翼だった。
『翼! どうしてここに!?』と、驚きながら尋ねる渚に、翔は『正直な気持ちを伝えにきた』と答える。
『正直な気持ち?』
『うん』と翼は返事をして、ゆっくり渚に近づき──向き合うように立ち止まる。
『ダンスを続けるか、続けないかは君が決める事……だから俺が口出す事じゃない。そう思ってずっと黙っていた』
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翼はそう言って、渚に向かって手を差し出す。渚は黙って俯き『でも……上手に踊れるか分からないし……』と不安を口にした。
翼は優しく微笑む。
『大丈夫、俺が君を支える』
渚は少しの間、躊躇っていたが、手を差し出し『──分かった』
そこから、しっとりとした涙を誘う曲が流れ、クライマックスを迎える──感動のあまり鼻をすすっていると、星恵さんがスッとティッシュを差し出す。
俺は小声で「ありがとう」と言って、受け取った──エンドロールが流れ終わり、劇場内が明るくなると俺達は外に出る。
「これから、どうする?」
「そうねぇ……感想を言い合いたいから、ちょっと喫茶店に行こうか?」
「良いね」
──俺達は映画館を出ると、隣にある喫茶店に向かう。中に入ると、窓際の二人席に座った。
「何にするかぁー……」と、メニューを開き──俺はコーヒー、星恵さんは紅茶を店員さんに頼む。
俺はメニューを元の位置に戻し、「あ!」と、声を漏らすとジャケットの胸ポケットからティッシュを取り出す。
「これ、ありがとう」と、俺が星恵さんにティッシュを差し出すと、星恵さんは受け取り「どう致しまして」
「あぁ……にしても、感動したな。話が分かっているから、そんなに感動しないだろうって思ってた」
「曲がつくとヤバいよね」
「それな! 曲がヤバいんだ。SNSで予告映像を観た時から、鳥肌が止まらなかったもん!」
「分かる!」
──店員さんが運んできてくれた飲み物を飲みながら、しばし俺達は映画の内容で盛り上がる。
「──ポップコーンも美味しかったし、最高だったね」と星恵さんは言って、カップをテーブルに置く。
「あ。思い出したけど、指を当てちゃって、ごめん」
星恵さんは黙って首を横に振り「うぅん、大丈夫」と返事をする。そして俯き加減で「むしろ……嬉しかった」とボソッと言った。
「え……」
「私、そのシチュエーションに憧れていたから……」
嬉しさのあまり、言葉を失う。俺はとりあえず「──はは……俺で良かったかは分からないけど、憧れに貢献できて光栄だよ」と返した。
星恵さんはそれを聞いて、嬉しそうに微笑みながら頬を掻く。何だか凄く良い雰囲気だ。俺達はこのまま世間話を続け、良い雰囲気のまま帰宅をした。
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