41 / 50
第41話 こういうのも悪くないなって
しおりを挟む
俺は御土産屋に入ると、ウサギをモチーフにしたマスコットキャラクターがプリントされた白いハンドタオルを買う。
外に出ると、直ぐにビニール袋から取り出し「買ってきたよ」と星恵ちゃんに近づいた。
「可愛いタオルだね」
「でしょ?」と俺は返事をして、星恵ちゃんの後ろに回って立ち止まる。
「拭いてあげるから、ジッとしてて」
「え。じ、自分で拭けるよ」
「良いから」
俺がそう言って拭き始めると、星恵ちゃんは緊張しているようで、ジッとしながら肩を強張らせていた。
「──何だか、彼氏に髪を拭かれるって、恥ずかしいね」
「そうかな?」
「そうだよ……」
拭いていると、柔らかい星恵ちゃんの髪からフワァっとシャンプー? の良い匂いがしてきて、何だか風呂上がりの髪を拭いている気分になる。た、確かに恥ずかしい──かも。
それでも俺は無言で拭き続け、ある程度、乾いたのを確認すると「これぐらいで良いかな?」
「うん、後は自分でやるから良いよ。ありがとう」
「どう致しまして」
俺は正面に移動すると、タオルを渡し、ポップコーンを受け取る。
「待ってる間、わたし食べたから、あと全部食べて良いよ」
「味が三種類あって、迷ったからSサイズにしたんだけどさ。量、足りた?」
「うん、足りたよ」
「そう、なら良かった」
俺はポップコーンをパクパクと食べながら「次、どうしようか?」
「そうねぇ……この後、ちょっとトイレに行かせて」
「了解」
「戻ってきたら、最後にメリーゴーランドに乗って帰ろうか?」
「メリーゴーランドか、いいね」
──星恵ちゃんが戻ってくると、俺達はメリーゴーランドに向かう。乗り場に着くと、直ぐにスタッフさんに案内された。
俺が馬車に座ろうと進むと、星恵ちゃんは何故か馬の方に進む。
「あれ? 一緒に座らないの?」
「うん。私は馬の方が好きなの」
「そうなんだ。じゃあ俺も馬にするかな」
俺はそう言って、星恵ちゃんの後ろの馬に座る──少ししてスタッフが注意事項をアナウンスして、ジリリリリ……と出発音が鳴った。馬がゆっくり動き出し、メルヘンチックな音楽が流れる。
──周りの景色を眺めて楽しんでいると、星恵ちゃんが後ろを振り向く。
「おーい、光輝君。楽しんでる~?」と、星恵ちゃんは笑顔を見せながら、俺に向かって手を振ってくる。
俺も手を振りながら「うん、楽しんでるよ~」と返した。
「そう、良かった!」
星恵ちゃんはそう言って前を向く。
永遠に距離が縮まる事のないメリーゴーランド……綺麗な髪を風でなびかせながら、乗っている星恵ちゃんの後姿をジッと見つめながら、こう思う──たまには、こういうのも悪くないなって。
※※※
次の日の夕方。俺はベッドで横になりながら、昨日の事を思い出していた。口紅で思い出したけど、そういえば星恵ちゃん、誕生日にあげた口紅を使ってくれた事あったっけ?
俺はあの時にあげた口紅の色を思い出すため、携帯の写真フォルダを開く──あった! うーん……この色だよな……。
高校の時、ずっと注目はしていたけど、この色になった事は無かった。大人っぽい色だから、大人になってからするのかな? ぐらいに考えていたけど、その気配は無いんだよな。大切な物だから使いたくないって事なのかな? だったら嬉しいけど……。
俺がそう考えていると、星子さんからメールが届く。開いてみるとそこには『耐え忍ぶ時がやってきます。頑張ってください』と書かれていた。
突然の事に驚いた俺は上半身を起こし「はぁ!? どういうことだよ、星子さん!」と叫んでいた。
──そのまま硬直し、様子をみていると、今度は星恵ちゃんから電話が来る。俺はスゥー……ハァー……と深呼吸をしてから、電話に出た。
「はい」
「あ、もしもし光輝君。突然で、申し訳ないですが明日、暇ですか?」
えっと……なぜ敬語?
「うん、長期連休はまだ続くから暇ですよ」
「そうですか……うちの父、海外勤務で、ずっとこっちに居なかったのですが……明日帰ってくるんです」
「おぉ、それは良かったね」
「他人事ではないのですよ?」
「ん? どういうこと?」
「父が……一緒に食事を食べましょうと言ってます」
「!」
まさかこんな早いタイミングで、星恵ちゃんのお父さんに挨拶する日が来るなんて思ってもみなかったので、ビックリして言葉を失う。
「えっと……マジで?」
「マジです」
「あー……」
どうする? ──どうするもこうするも無いか。誘われているのに行かないなんて失礼だし、滅多に帰って来ないと言っているんだから──
「じゃあ、準備しておきます」
「ありがとう!」
星恵ちゃんはそう言って、電話を直ぐに切ってしまった。敬語だったのは、申し訳ない気持ちからきていたのかな? まぁ……いずれは挨拶しなきゃいけないんだし、それが早まっただけだ。
それは良いけど……何を着て行けば良いんだ? 俺は急いで携帯で調べ、引き出しから服を選び始めた。
外に出ると、直ぐにビニール袋から取り出し「買ってきたよ」と星恵ちゃんに近づいた。
「可愛いタオルだね」
「でしょ?」と俺は返事をして、星恵ちゃんの後ろに回って立ち止まる。
「拭いてあげるから、ジッとしてて」
「え。じ、自分で拭けるよ」
「良いから」
俺がそう言って拭き始めると、星恵ちゃんは緊張しているようで、ジッとしながら肩を強張らせていた。
「──何だか、彼氏に髪を拭かれるって、恥ずかしいね」
「そうかな?」
「そうだよ……」
拭いていると、柔らかい星恵ちゃんの髪からフワァっとシャンプー? の良い匂いがしてきて、何だか風呂上がりの髪を拭いている気分になる。た、確かに恥ずかしい──かも。
それでも俺は無言で拭き続け、ある程度、乾いたのを確認すると「これぐらいで良いかな?」
「うん、後は自分でやるから良いよ。ありがとう」
「どう致しまして」
俺は正面に移動すると、タオルを渡し、ポップコーンを受け取る。
「待ってる間、わたし食べたから、あと全部食べて良いよ」
「味が三種類あって、迷ったからSサイズにしたんだけどさ。量、足りた?」
「うん、足りたよ」
「そう、なら良かった」
俺はポップコーンをパクパクと食べながら「次、どうしようか?」
「そうねぇ……この後、ちょっとトイレに行かせて」
「了解」
「戻ってきたら、最後にメリーゴーランドに乗って帰ろうか?」
「メリーゴーランドか、いいね」
──星恵ちゃんが戻ってくると、俺達はメリーゴーランドに向かう。乗り場に着くと、直ぐにスタッフさんに案内された。
俺が馬車に座ろうと進むと、星恵ちゃんは何故か馬の方に進む。
「あれ? 一緒に座らないの?」
「うん。私は馬の方が好きなの」
「そうなんだ。じゃあ俺も馬にするかな」
俺はそう言って、星恵ちゃんの後ろの馬に座る──少ししてスタッフが注意事項をアナウンスして、ジリリリリ……と出発音が鳴った。馬がゆっくり動き出し、メルヘンチックな音楽が流れる。
──周りの景色を眺めて楽しんでいると、星恵ちゃんが後ろを振り向く。
「おーい、光輝君。楽しんでる~?」と、星恵ちゃんは笑顔を見せながら、俺に向かって手を振ってくる。
俺も手を振りながら「うん、楽しんでるよ~」と返した。
「そう、良かった!」
星恵ちゃんはそう言って前を向く。
永遠に距離が縮まる事のないメリーゴーランド……綺麗な髪を風でなびかせながら、乗っている星恵ちゃんの後姿をジッと見つめながら、こう思う──たまには、こういうのも悪くないなって。
※※※
次の日の夕方。俺はベッドで横になりながら、昨日の事を思い出していた。口紅で思い出したけど、そういえば星恵ちゃん、誕生日にあげた口紅を使ってくれた事あったっけ?
俺はあの時にあげた口紅の色を思い出すため、携帯の写真フォルダを開く──あった! うーん……この色だよな……。
高校の時、ずっと注目はしていたけど、この色になった事は無かった。大人っぽい色だから、大人になってからするのかな? ぐらいに考えていたけど、その気配は無いんだよな。大切な物だから使いたくないって事なのかな? だったら嬉しいけど……。
俺がそう考えていると、星子さんからメールが届く。開いてみるとそこには『耐え忍ぶ時がやってきます。頑張ってください』と書かれていた。
突然の事に驚いた俺は上半身を起こし「はぁ!? どういうことだよ、星子さん!」と叫んでいた。
──そのまま硬直し、様子をみていると、今度は星恵ちゃんから電話が来る。俺はスゥー……ハァー……と深呼吸をしてから、電話に出た。
「はい」
「あ、もしもし光輝君。突然で、申し訳ないですが明日、暇ですか?」
えっと……なぜ敬語?
「うん、長期連休はまだ続くから暇ですよ」
「そうですか……うちの父、海外勤務で、ずっとこっちに居なかったのですが……明日帰ってくるんです」
「おぉ、それは良かったね」
「他人事ではないのですよ?」
「ん? どういうこと?」
「父が……一緒に食事を食べましょうと言ってます」
「!」
まさかこんな早いタイミングで、星恵ちゃんのお父さんに挨拶する日が来るなんて思ってもみなかったので、ビックリして言葉を失う。
「えっと……マジで?」
「マジです」
「あー……」
どうする? ──どうするもこうするも無いか。誘われているのに行かないなんて失礼だし、滅多に帰って来ないと言っているんだから──
「じゃあ、準備しておきます」
「ありがとう!」
星恵ちゃんはそう言って、電話を直ぐに切ってしまった。敬語だったのは、申し訳ない気持ちからきていたのかな? まぁ……いずれは挨拶しなきゃいけないんだし、それが早まっただけだ。
それは良いけど……何を着て行けば良いんだ? 俺は急いで携帯で調べ、引き出しから服を選び始めた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる