42 / 50
第42話 はい、はーい。私、お寿司が良い!
しおりを挟む
次の日の朝。俺はパジャマを脱ぎ、無地の白いTシャツに黒のジャケットを着て、カーキのスラックスを履くと、家を出た。
恋人の親に初めて顔を合わせる時……こんな服装で合っているかなんて分からない。だけど昨日、こんな感じで行くけど? と、星恵ちゃんに確認はしたから、きっと大丈夫だと思う。
──俺は電車に乗り、隣町で降りる。星恵ちゃんの家までは覚えていないので迎えに来て貰うことになっていた。
駅を出ると、俺を見つけた星恵ちゃんが手を振りながら駆け寄ってくる。その後ろには星恵ちゃんのお母さんとお父さん? らしき男性が居る。
40代後半だと思うけど、まだ髪は黒々としていて、短髪をオールバックにしている。キリッと引き締まった顔に眼鏡をしていて、ちょっと怖いけど、仕事が出来そうでカッコいい。
俺に合わせてくれたのか、服装は三人ともカジュアルで、上は襟付きのカーディガン、下はスラックスを履いている。
「お待たせ」と星恵ちゃんは立ち止まり、横を向くと、両親に向かって手を差し「あれがお父さん」
「分かった」
第一印象が大事だ……俺はドキドキしながらもゆっくり、星恵さんのお父さんとお母さんに近づき、立ち止まる。
お辞儀をすると「初めまして、星恵さんとお付き合いさせて頂いている井上 光輝です。本日は宜しくお願い致します」と、挨拶をした。
星恵さんのお父さんは、さすが社会人と思わす綺麗なお辞儀をして「初めまして、星恵の父。隆之《たかゆき》です。宜しくお願いいたします」と、渋い声で挨拶をしてくれた。
俺がお辞儀を返すと、星恵ちゃんのお母さんがクスッと笑う。
「もう……二人とも硬いわよ。リラックス、リラックス」と、星恵ちゃんのお母さんは言って「光輝君。今日は家族の様に接してくれて構わないからね」と言ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
「さて……挨拶はこれぐらいにして、何を食べる?」と星恵ちゃんのお母さんが言うと、星恵ちゃんは元気よく手を挙げる。
「はい、はーい。私、お寿司が良い!」
お寿司か……お寿司は好きだけど……かっぱ巻きあるかな?
「あ、もちろん回転寿司の方ね!」
「はいはい、分かりましたよ。光輝君はそれで良いかしら?」と星恵ちゃんのお母さんが、聞いてくれる。俺は「はい、大丈夫です」
「じゃあ行こうか」
星恵ちゃんのお父さんはそう言って歩き出す。俺達も後に続いた──。
車は白のミニバンで星恵ちゃんのお父さんが運転席、お母さんが助手席、俺達は後ろに座る。
俺がシートベルトをすると、星恵ちゃんのお父さんは「出発するけど良いか?」と声を掛けてくれる。俺達が返事をすると、車が動き出した。
「──ここら辺も随分、変わったな。あんな店、あったか?」
「無かったわよ」
「やっぱり、そうか」と、星恵さんのお父さんとお母さんは会話を始める。
俺はそんな二人の会話を聞きながら、グゥー……とお腹を鳴らした。は、恥ずかしい……。
それが聞こえたのか、星恵ちゃんは「お寿司、楽しみだね」と話しかけてくる。
「う、うん」
「いま行こうとしている御寿司屋さん、安いけど美味しんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
「何を食べようかな~」
※※※
15分ぐらいして、特にあれこれ聞かれる事もなく、御寿司屋さんに到着する──お寿司屋さんに入ると、星恵ちゃんは「光輝君が奥で良いよ」と言ってくれた。
「ありがとう」
星恵ちゃんが俺の隣に、星恵ちゃんのお父さんは俺の正面。そして星恵ちゃんのお母さんは星恵ちゃんの正面に座る。
「お父さん、タッチパネルを取ってください」
「あぁ」
星恵ちゃんのお母さんはタッチパネルを受け取ると、俺に差し出す。
「はい、どうぞ。好きな物を頼んでください」
「え、俺が先で良いんですか?」
「えぇ」
「じゃあ……」
何だかカラオケ屋で一番手を任された気分だ。さて、何にしようか?
「サーモンにしようかな……」と俺が口にすると、星恵ちゃんがグッと俺に体を近づけ「あー、良いね。私のも頼んでよ」
「うん、分かった」
「じゃあ、私もお願いできるかしら?」
「あ、はい」
「じゃあ俺のもお願いできるかい?」
「はい、大丈夫です」
俺が4つサーモンを頼むと、星恵ちゃんのお父さんは「光輝君、ビールは大丈夫かい?」と聞いてくる。
星恵ちゃんと星恵ちゃんのお母さんは、何か言いたげにお父さんの顔を黙って見つめる。
「ちょっと、お父さん。二人はまだ19歳ですよ」
「あ……」
「もうお父さん、しっかりしてよ。恥ずかしいな」
「悪い悪い」
お父さんはそう言って、恥ずかしそうに頬を掻く。
「じゃあ、好きなのを頼んでくれ」
「はい」
──何だか、御挨拶というより、本当に家族と一緒に寿司屋に来たって感じだ。きっと星恵ちゃんのお父さんも、お母さんも、俺達と似たような年齢の人と働く事があって、慣れているんだろうな。そのおかげで俺は、落ち着いて御寿司を堪能できた。
恋人の親に初めて顔を合わせる時……こんな服装で合っているかなんて分からない。だけど昨日、こんな感じで行くけど? と、星恵ちゃんに確認はしたから、きっと大丈夫だと思う。
──俺は電車に乗り、隣町で降りる。星恵ちゃんの家までは覚えていないので迎えに来て貰うことになっていた。
駅を出ると、俺を見つけた星恵ちゃんが手を振りながら駆け寄ってくる。その後ろには星恵ちゃんのお母さんとお父さん? らしき男性が居る。
40代後半だと思うけど、まだ髪は黒々としていて、短髪をオールバックにしている。キリッと引き締まった顔に眼鏡をしていて、ちょっと怖いけど、仕事が出来そうでカッコいい。
俺に合わせてくれたのか、服装は三人ともカジュアルで、上は襟付きのカーディガン、下はスラックスを履いている。
「お待たせ」と星恵ちゃんは立ち止まり、横を向くと、両親に向かって手を差し「あれがお父さん」
「分かった」
第一印象が大事だ……俺はドキドキしながらもゆっくり、星恵さんのお父さんとお母さんに近づき、立ち止まる。
お辞儀をすると「初めまして、星恵さんとお付き合いさせて頂いている井上 光輝です。本日は宜しくお願い致します」と、挨拶をした。
星恵さんのお父さんは、さすが社会人と思わす綺麗なお辞儀をして「初めまして、星恵の父。隆之《たかゆき》です。宜しくお願いいたします」と、渋い声で挨拶をしてくれた。
俺がお辞儀を返すと、星恵ちゃんのお母さんがクスッと笑う。
「もう……二人とも硬いわよ。リラックス、リラックス」と、星恵ちゃんのお母さんは言って「光輝君。今日は家族の様に接してくれて構わないからね」と言ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
「さて……挨拶はこれぐらいにして、何を食べる?」と星恵ちゃんのお母さんが言うと、星恵ちゃんは元気よく手を挙げる。
「はい、はーい。私、お寿司が良い!」
お寿司か……お寿司は好きだけど……かっぱ巻きあるかな?
「あ、もちろん回転寿司の方ね!」
「はいはい、分かりましたよ。光輝君はそれで良いかしら?」と星恵ちゃんのお母さんが、聞いてくれる。俺は「はい、大丈夫です」
「じゃあ行こうか」
星恵ちゃんのお父さんはそう言って歩き出す。俺達も後に続いた──。
車は白のミニバンで星恵ちゃんのお父さんが運転席、お母さんが助手席、俺達は後ろに座る。
俺がシートベルトをすると、星恵ちゃんのお父さんは「出発するけど良いか?」と声を掛けてくれる。俺達が返事をすると、車が動き出した。
「──ここら辺も随分、変わったな。あんな店、あったか?」
「無かったわよ」
「やっぱり、そうか」と、星恵さんのお父さんとお母さんは会話を始める。
俺はそんな二人の会話を聞きながら、グゥー……とお腹を鳴らした。は、恥ずかしい……。
それが聞こえたのか、星恵ちゃんは「お寿司、楽しみだね」と話しかけてくる。
「う、うん」
「いま行こうとしている御寿司屋さん、安いけど美味しんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
「何を食べようかな~」
※※※
15分ぐらいして、特にあれこれ聞かれる事もなく、御寿司屋さんに到着する──お寿司屋さんに入ると、星恵ちゃんは「光輝君が奥で良いよ」と言ってくれた。
「ありがとう」
星恵ちゃんが俺の隣に、星恵ちゃんのお父さんは俺の正面。そして星恵ちゃんのお母さんは星恵ちゃんの正面に座る。
「お父さん、タッチパネルを取ってください」
「あぁ」
星恵ちゃんのお母さんはタッチパネルを受け取ると、俺に差し出す。
「はい、どうぞ。好きな物を頼んでください」
「え、俺が先で良いんですか?」
「えぇ」
「じゃあ……」
何だかカラオケ屋で一番手を任された気分だ。さて、何にしようか?
「サーモンにしようかな……」と俺が口にすると、星恵ちゃんがグッと俺に体を近づけ「あー、良いね。私のも頼んでよ」
「うん、分かった」
「じゃあ、私もお願いできるかしら?」
「あ、はい」
「じゃあ俺のもお願いできるかい?」
「はい、大丈夫です」
俺が4つサーモンを頼むと、星恵ちゃんのお父さんは「光輝君、ビールは大丈夫かい?」と聞いてくる。
星恵ちゃんと星恵ちゃんのお母さんは、何か言いたげにお父さんの顔を黙って見つめる。
「ちょっと、お父さん。二人はまだ19歳ですよ」
「あ……」
「もうお父さん、しっかりしてよ。恥ずかしいな」
「悪い悪い」
お父さんはそう言って、恥ずかしそうに頬を掻く。
「じゃあ、好きなのを頼んでくれ」
「はい」
──何だか、御挨拶というより、本当に家族と一緒に寿司屋に来たって感じだ。きっと星恵ちゃんのお父さんも、お母さんも、俺達と似たような年齢の人と働く事があって、慣れているんだろうな。そのおかげで俺は、落ち着いて御寿司を堪能できた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる