44 / 50
第44話 これで一歩進めたね
しおりを挟む
俺達は回転寿司から出ると、並んで歩き始める。
「さて、何処に行こうか? この辺だったら、色々とありそうだけど」と俺が聞くと、星恵ちゃんは人差し指を顎に当てる。
「今日は天気が良いから、少し散歩しようか?」
「分かった」
星恵ちゃんは人差し指を顎から離すと「──お疲れ様、今日はありがとうね」
「うん」
「気疲れしたでしょ?」
「まぁ……全くしてないとは言えないけど、星恵ちゃんのお父さんとお母さんが、気を遣ってくれたから、割と大丈夫だったよ」
「そう。そう言って貰えると嬉しいな」
──そこで会話が途切れ、俺達は黙って歩き続ける。
「今日さ──」
「ん?」
「星恵ちゃんのお父さんと、お母さんをみてて、こんな夫婦になりたいなって思った」
「え!? う、うちみたいな!?」
「うん。離れて過ごしていたのに、全然そんなところを感じさせないしさ、上手く言えないけど、なんかこう……温かい所が感じられた。それに──」
「それに?」と星恵ちゃんは俺を見つめながら首を傾げる。
「子供を気遣っている姿が、本当……素敵だなって思った」
星恵ちゃんは恥ずかしかったようで、頬を赤く染め、俯き加減で歩き始める。
「あ、ありがとう……」
「うん」
──少しそのまま歩いていると、星恵ちゃんが寄り添ってきて、自分の腕を俺に絡めてくる。
「少し早かったけど……これで一歩進めたね」
「うん、そうだね」
──青く澄み渡る空の下、俺達は良い雰囲気のままデートを楽しんだ。
※※※
それから数日後の御昼。俺達はファストフード店で、食事をしていた。
「でさぁ──」と俺が話しかけると、星恵ちゃんは携帯をみながら「へぇ……」と生返事をした。
最近は、こんな事が増えてきた。原因は何となく分かってる。だけど俺は探りを入れるため「どうかしたの?」と聞いてみる。
「どうかしたって?」
「返事に元気が無かったから」
「──何にもないよ」
星恵ちゃんはそう返事をして、ハンバーガーを食べ始める。
「そう?」
この程度の探りじゃ話してくれる訳ないか。俺はとりあえず、先に話を進めるか考えながらハンバーガーを食べ始めた──。
俺は口の中のハンバーガーをゴクッと飲み込むと「あのさ──」と星恵ちゃんに話しかける。
「なに?」
「──星子さん。最近、大丈夫かな?」
それを聞いた星恵ちゃんは眉を顰め、明らかに不快な表情を浮かべる。ハンバーガーをトレーに置き、口を開くと「──何でそれを私に聞くの?」
「何でって……星恵ちゃんの知り合いなんでしょ? だから気になって」
「あー……そういう事。──大丈夫じゃない? 知らない」
星恵ちゃんは不機嫌そうにそう言って、またハンバーガーを手に取った。最近の星子さんは不調なのか、SNS内の評判が良くない。
占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦、それを理解して占って貰っている人もいるけど、当たらない事に対して、批判する人も少なからず出てくる。星子さんは、その人に標的にされ、面倒なやり取りを続けていた。
星恵ちゃんの態度からして、大丈夫じゃない気がする。潰れる前に、彼氏としてどうにかしてあげたい! でも一体、どうしたら良いんだ。
俺はそう考えながら、ジュースを飲み始めた──少しすると、星恵ちゃんはジュースをトレーに置き、口を開く。
「あのさ──」
「ん?」
「もし……もしだよ?」
「うん」
「星子さんが居なくなったら、光輝君は困る?」
それを聞いて、あんなに面倒ごと巻き込まれても、辞めなかった理由が分かった気がする。嬉しい反面、申し訳ない気持ちになった。
さて、どうする? ──いや、どうするじゃないだろ。答えは決まってる。
「正直に言うと、困る事はあると思う。だけど、続けるかどうかは本人の気持ち次第だから、無理強いはしたくない。いまの現状だったら、俺は間違いなく休んでくださいと声を掛けると思う」
「そう……分かった。その気持ち、伝えておくね」
「ありがとう」
それから数日して、星子さんはSNSで無期限休養することを書き込む。少し寂しかったけど、ホッとした気持ちの方が大きかった。
「さて、何処に行こうか? この辺だったら、色々とありそうだけど」と俺が聞くと、星恵ちゃんは人差し指を顎に当てる。
「今日は天気が良いから、少し散歩しようか?」
「分かった」
星恵ちゃんは人差し指を顎から離すと「──お疲れ様、今日はありがとうね」
「うん」
「気疲れしたでしょ?」
「まぁ……全くしてないとは言えないけど、星恵ちゃんのお父さんとお母さんが、気を遣ってくれたから、割と大丈夫だったよ」
「そう。そう言って貰えると嬉しいな」
──そこで会話が途切れ、俺達は黙って歩き続ける。
「今日さ──」
「ん?」
「星恵ちゃんのお父さんと、お母さんをみてて、こんな夫婦になりたいなって思った」
「え!? う、うちみたいな!?」
「うん。離れて過ごしていたのに、全然そんなところを感じさせないしさ、上手く言えないけど、なんかこう……温かい所が感じられた。それに──」
「それに?」と星恵ちゃんは俺を見つめながら首を傾げる。
「子供を気遣っている姿が、本当……素敵だなって思った」
星恵ちゃんは恥ずかしかったようで、頬を赤く染め、俯き加減で歩き始める。
「あ、ありがとう……」
「うん」
──少しそのまま歩いていると、星恵ちゃんが寄り添ってきて、自分の腕を俺に絡めてくる。
「少し早かったけど……これで一歩進めたね」
「うん、そうだね」
──青く澄み渡る空の下、俺達は良い雰囲気のままデートを楽しんだ。
※※※
それから数日後の御昼。俺達はファストフード店で、食事をしていた。
「でさぁ──」と俺が話しかけると、星恵ちゃんは携帯をみながら「へぇ……」と生返事をした。
最近は、こんな事が増えてきた。原因は何となく分かってる。だけど俺は探りを入れるため「どうかしたの?」と聞いてみる。
「どうかしたって?」
「返事に元気が無かったから」
「──何にもないよ」
星恵ちゃんはそう返事をして、ハンバーガーを食べ始める。
「そう?」
この程度の探りじゃ話してくれる訳ないか。俺はとりあえず、先に話を進めるか考えながらハンバーガーを食べ始めた──。
俺は口の中のハンバーガーをゴクッと飲み込むと「あのさ──」と星恵ちゃんに話しかける。
「なに?」
「──星子さん。最近、大丈夫かな?」
それを聞いた星恵ちゃんは眉を顰め、明らかに不快な表情を浮かべる。ハンバーガーをトレーに置き、口を開くと「──何でそれを私に聞くの?」
「何でって……星恵ちゃんの知り合いなんでしょ? だから気になって」
「あー……そういう事。──大丈夫じゃない? 知らない」
星恵ちゃんは不機嫌そうにそう言って、またハンバーガーを手に取った。最近の星子さんは不調なのか、SNS内の評判が良くない。
占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦、それを理解して占って貰っている人もいるけど、当たらない事に対して、批判する人も少なからず出てくる。星子さんは、その人に標的にされ、面倒なやり取りを続けていた。
星恵ちゃんの態度からして、大丈夫じゃない気がする。潰れる前に、彼氏としてどうにかしてあげたい! でも一体、どうしたら良いんだ。
俺はそう考えながら、ジュースを飲み始めた──少しすると、星恵ちゃんはジュースをトレーに置き、口を開く。
「あのさ──」
「ん?」
「もし……もしだよ?」
「うん」
「星子さんが居なくなったら、光輝君は困る?」
それを聞いて、あんなに面倒ごと巻き込まれても、辞めなかった理由が分かった気がする。嬉しい反面、申し訳ない気持ちになった。
さて、どうする? ──いや、どうするじゃないだろ。答えは決まってる。
「正直に言うと、困る事はあると思う。だけど、続けるかどうかは本人の気持ち次第だから、無理強いはしたくない。いまの現状だったら、俺は間違いなく休んでくださいと声を掛けると思う」
「そう……分かった。その気持ち、伝えておくね」
「ありがとう」
それから数日して、星子さんはSNSで無期限休養することを書き込む。少し寂しかったけど、ホッとした気持ちの方が大きかった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる