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第45話 勝負服
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月日が流れ、大学を卒業した俺は無事に就職した。それをきっかけに俺達はアパートで同棲を始めていた。
俺が白いクッションに座り、携帯を触っていると、脱衣所から星恵が出てきて「光輝、お風呂あがったよ」と声を掛けてきた。
「ん~……分かった」
俺が返事をすると、星恵はキッチンの方へと行き、棚からコップを取り出した。続いて冷蔵庫を開けると、牛乳を取り出し、コップに注いでいく。
俺は携帯をテーブルの上に置くと「あ! そういえば明日、良いってさ」
「良いって何が?」
「俺の家族に挨拶する話」
牛乳を飲んでいた星恵の動きが一瞬、止まる。
「そ、そうか。そんな話、してたもんね」
「あぁ。どうする?」
「えっと……」
星恵は何か考えている様で、俺から視線を逸らし地面を見つめた。
「──多分、大丈夫だと思う」
「分かった。じゃあ返事をしちゃうよ?」
「うん、お願いします」
俺は母さんに『じゃあ明日行く』とメールを打つと、携帯をテーブルに置いた。
「返事をしておいたから」
「ありがとう。光輝、お風呂入ってきたら?」
「あー……うん、分かった」
俺は立ち上がると、風呂に入る準備を始める──星恵……明らかに動揺している様に見えたけど、大丈夫だろうか?
──体を洗い、湯船に浸かると、星恵の両親に会った時の事を思い出す。星恵の両親は大人で、気を遣ってくれる人だったから良かったけど、家はちょっと無神経な所があるからなぁ。不安そうな表情をしていたし、俺がフォローしてあげないと……。
──俺は風呂から出ると、居間に行く。すると携帯が光っている事に気が付いた。え、もしかして星子さんかな?
チラッとキッチンに居る星恵に目を向けるが、星恵は俯き加減で黙って洗い物をしていた。
ここからじゃよく分からないなぁ……とにかく携帯を手に取る。メールの相手は母さんで内容は分かったとの事だった。
「なんだぁ」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
星恵はハンドタオルで手を拭くと、こちらに向かってくる。
「明日の為に今日は早く寝よ?」
「そうだね」
──俺達は寝る準備を済ませると、すぐに布団の中に入る。真っ暗な部屋の中、何だか眠れなくて天井を見据えていると「ねぇ、光輝」と星恵が話しかけてきた。
「ん?」
──星恵は長い沈黙を挟み「うぅん、何でもない。ごめん、起こしちゃって」
「うぅん、大丈夫だよ」
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
──少しして星恵の手がスッと伸びてきて、俺の手を握る。きっと星恵も何だか落ち着かないんだろうな……俺は大丈夫だよという気持ちを込めて、星恵の手をギュッと握り返した。
※※※
次の日になり、俺は星恵の両親と会った時の服に着替え、星恵はネイビーのワンピースに着替える。池で会った時と同じワンピースで、あの時、勝負服を着ていたのだと気付く。
「ニヤニヤしながら、ジー……っとみて、なに?」
「うぅん、何でもないよ」
「変なの。そろそろ行く?」
「そうしようか」
──俺達はアパートを出ると、電車に乗って俺の実家に向かった。家に着くと玄関の前で一旦立ち止まり、星恵に「緊張してる?」と聞いてみる。
「うん、ちょっと……でも大丈夫だよ」
「分かった」
俺はインターホンを押し、しばし待つ──すると直ぐに玄関のドアが開き、母さんが出て来た。
「いらっしゃい」と、母さんが微笑みながら言うと、廊下の奥から父さんが近づきながら「お~、来たか来たか。どれどれ~……」
父さんは、俺達の前で立ち止まり、星恵の顔をみると「おぉ~、これは可愛いお嬢さんだ! 昔の母さんにそっくりだ」
「どこが」と俺がツッコむと、母さんは「ちょっとあんた失礼ね」と返す。
そんなやり取りをしている間に姉ちゃんが廊下を歩いてきて「星恵ちゃん、言った通り可愛いでしょ~。ほんと光輝には勿体ないぐらいだよ」と乱入してきた。
みんなカジュアルな服装をしていて、ほぼ家で過ごす恰好と変わらない。おいおい、大丈夫か? それに──。
「あんたらね……あれこれ言う前に、まずは中にどうぞと勧めるのが先でしょ!」
「あー……そうだな。悪い悪い。ささ、汚ねぇ家だが、どうぞ中に入ってくださいな」
父さんはそう言って家の奥へと戻っていく。姉と母さんも後に続いた。
「ごめんねぇ」
「うぅん、大丈夫。可愛いって言って貰えて嬉しかったよ」
「そう? じゃあ、中に入ろうか」
「うん」
俺が白いクッションに座り、携帯を触っていると、脱衣所から星恵が出てきて「光輝、お風呂あがったよ」と声を掛けてきた。
「ん~……分かった」
俺が返事をすると、星恵はキッチンの方へと行き、棚からコップを取り出した。続いて冷蔵庫を開けると、牛乳を取り出し、コップに注いでいく。
俺は携帯をテーブルの上に置くと「あ! そういえば明日、良いってさ」
「良いって何が?」
「俺の家族に挨拶する話」
牛乳を飲んでいた星恵の動きが一瞬、止まる。
「そ、そうか。そんな話、してたもんね」
「あぁ。どうする?」
「えっと……」
星恵は何か考えている様で、俺から視線を逸らし地面を見つめた。
「──多分、大丈夫だと思う」
「分かった。じゃあ返事をしちゃうよ?」
「うん、お願いします」
俺は母さんに『じゃあ明日行く』とメールを打つと、携帯をテーブルに置いた。
「返事をしておいたから」
「ありがとう。光輝、お風呂入ってきたら?」
「あー……うん、分かった」
俺は立ち上がると、風呂に入る準備を始める──星恵……明らかに動揺している様に見えたけど、大丈夫だろうか?
──体を洗い、湯船に浸かると、星恵の両親に会った時の事を思い出す。星恵の両親は大人で、気を遣ってくれる人だったから良かったけど、家はちょっと無神経な所があるからなぁ。不安そうな表情をしていたし、俺がフォローしてあげないと……。
──俺は風呂から出ると、居間に行く。すると携帯が光っている事に気が付いた。え、もしかして星子さんかな?
チラッとキッチンに居る星恵に目を向けるが、星恵は俯き加減で黙って洗い物をしていた。
ここからじゃよく分からないなぁ……とにかく携帯を手に取る。メールの相手は母さんで内容は分かったとの事だった。
「なんだぁ」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
星恵はハンドタオルで手を拭くと、こちらに向かってくる。
「明日の為に今日は早く寝よ?」
「そうだね」
──俺達は寝る準備を済ませると、すぐに布団の中に入る。真っ暗な部屋の中、何だか眠れなくて天井を見据えていると「ねぇ、光輝」と星恵が話しかけてきた。
「ん?」
──星恵は長い沈黙を挟み「うぅん、何でもない。ごめん、起こしちゃって」
「うぅん、大丈夫だよ」
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
──少しして星恵の手がスッと伸びてきて、俺の手を握る。きっと星恵も何だか落ち着かないんだろうな……俺は大丈夫だよという気持ちを込めて、星恵の手をギュッと握り返した。
※※※
次の日になり、俺は星恵の両親と会った時の服に着替え、星恵はネイビーのワンピースに着替える。池で会った時と同じワンピースで、あの時、勝負服を着ていたのだと気付く。
「ニヤニヤしながら、ジー……っとみて、なに?」
「うぅん、何でもないよ」
「変なの。そろそろ行く?」
「そうしようか」
──俺達はアパートを出ると、電車に乗って俺の実家に向かった。家に着くと玄関の前で一旦立ち止まり、星恵に「緊張してる?」と聞いてみる。
「うん、ちょっと……でも大丈夫だよ」
「分かった」
俺はインターホンを押し、しばし待つ──すると直ぐに玄関のドアが開き、母さんが出て来た。
「いらっしゃい」と、母さんが微笑みながら言うと、廊下の奥から父さんが近づきながら「お~、来たか来たか。どれどれ~……」
父さんは、俺達の前で立ち止まり、星恵の顔をみると「おぉ~、これは可愛いお嬢さんだ! 昔の母さんにそっくりだ」
「どこが」と俺がツッコむと、母さんは「ちょっとあんた失礼ね」と返す。
そんなやり取りをしている間に姉ちゃんが廊下を歩いてきて「星恵ちゃん、言った通り可愛いでしょ~。ほんと光輝には勿体ないぐらいだよ」と乱入してきた。
みんなカジュアルな服装をしていて、ほぼ家で過ごす恰好と変わらない。おいおい、大丈夫か? それに──。
「あんたらね……あれこれ言う前に、まずは中にどうぞと勧めるのが先でしょ!」
「あー……そうだな。悪い悪い。ささ、汚ねぇ家だが、どうぞ中に入ってくださいな」
父さんはそう言って家の奥へと戻っていく。姉と母さんも後に続いた。
「ごめんねぇ」
「うぅん、大丈夫。可愛いって言って貰えて嬉しかったよ」
「そう? じゃあ、中に入ろうか」
「うん」
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