【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり

文字の大きさ
27 / 63

パーティ

しおりを挟む
『『 かんぱーい 』』

陸と海斗は子供用のシャンメリー。
残りの三人はビール。
声をかけずに外に出たことで怒られてしょぼんとしていた海斗と忍も一口飲んでにっこり笑った。

「美人がビールってのもなかなか」
「陸、言い方」
「忍さんビールで良かった?ワインとかの方が良かった?」
「いえ、ビールで大丈夫です」
「そう?いっぱい食べてね」
「はい。いただきます」

ミニトマトのカプレーゼ、ローストチキンにサンドイッチ。
温野菜サラダにほうれん草とサーモンのキッシュ、ミネストローネ。
ぶり大根に中華サラダ、豆もやしのピリ辛。
お茶碗にはホカホカのご飯。

「なんというか、まさに盆とクリスマスが一緒にきたという感じだな」
「しのぶちゃん、ミネストローネのうえのおほしさまはぼくがつくったんだよ」
「大根しみしみでうまー」
「しのぶちゃん、キッシュ食べる?切り分けようか?」
「食べたかったら自分で食べるから一穂はかまうな」
「しのぶちゃん、ぼくのサンドイッチたべる?」
「うん」
「えぇぇええー!しのぶちゃん!」
「一穂うるせえ」
「金ちゃん、近所迷惑」
「ここ、近所いねぇだろーが」

思い思いに喋って飲んで食べる。
テーブルに所狭しと並べられた料理がどんどん減っていく。

クリスマスケーキは生チョコでサンタと苺が沢山乗っていた。
海斗は切り分けたケーキにサンタを乗せてもらって満足気に笑う。
それを見て大人達も笑う。

海斗へのプレゼントはnisiyamaで買った大きなクリスマスブーツ。

「くつしたのかわりにこれおいてねる!」

と海斗は喜んだ。

「きんちゃんは?」
「さっき食ったケーキ」
「・・・ふうん」
「なんで、ガッカリしてんだよ」

海斗を抱き上げこちょこちょとくすぐる一穂。
きゃあきゃあとはしゃぐ海斗。
聖なる夜はそっと更けていき、はしゃぎ疲れた海斗は眠ってしまった。




「忍さん、今日はありがとう」
「僕の方こそ楽しかったです」

良かった、と言いながら陸は忍の前にマグカップを置いた。
ふわりと香るコーヒーの香り。

「片付けはあの二人に任せちゃっていいから」

肩を竦めて湯呑みをふうふうと冷ます。
微かにほうじ茶の香りがする。

「忍さんは、だいぶ金ちゃんと仲良くなったね」
「あ、そう、ですね」

マグカップを両手で包み陸の視線から逃れるように俯く。
それを見た陸はふふふと笑って同じように俯いた。
お互いの飲み物を啜る音だけ。

「どうして金ちゃんなんですか?」
「あぁ、遠山の金さん知らない?昔の時代劇で『この桜吹雪を忘れたとは言わせねぇぜ』ってやつ」
「聞いたことあるような・・・」
「僕、おばあちゃん子だったから」

クスクスと陸は笑って思い出すようにつと目を細めた。
 
「中学で初めて会った時に名前聞いて、金さんじゃんって」
「長い付き合いなんですね」
「僕とは中学からで、あの二人は小学校からの付き合いだよ」

口止めされてる訳じゃないから話すけど、と陸は湯呑みを置いた。

「あの二人はね、βから産まれたαなんだ。先祖返りっていうのかな?何代も前のαの血。αだからか、体も大きくて丈夫で地頭も良かったから。みんなと同じ勉強しててもやっぱりどこか違うんだよね。それで高校からは県外の名門校ってやつに進学したの。それなりの家柄の子が多かったって」

一息にそこまで話した陸は、湯呑みに手を伸ばしゴクリとお茶を飲んだ。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます

こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。

短編版【けもみみ番外編】卒業の朝〜政略結婚するつもりで別れを告げた宰相子息ユリウスは黒豹エドワードの策略に嵌る〜

降魔 鬼灯
BL
 銀の髪が美しい銀狼獣人ユリウスは宰相家の一人息子だ。  留学中、同室になった黒豹獣人のエドワードと深い仲になる。  子供の頃からエドワードに想いを寄せていたが、自国では同性の婚姻は認められていない。しかも、文官トップの宰相家と武官トップの騎士団長家の仲は険悪だ。  エドワードとは身体だけの関係。そう言い聞かせて、一人息子のユリウスは、帰国を期にエドワードと別れ政略結婚をする決心をする。  一方、エドワードは……。  けもみみ番外編  クロードとアンドレアに振り回される学友2人のお話。

婚約破棄を望みます

みけねこ
BL
幼い頃出会った彼の『婚約者』には姉上がなるはずだったのに。もう諸々と隠せません。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

処理中です...