【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり

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出発

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ピンクとオレンジと紫の折り紙で作ったハートと水色で作ったペンギン。
どれも少しづつ歪な形をしたそれが、小さな手のひらの上にある。

「ぼくと、ともくんとまーくんでせんせいにおしえてもらいながらつくったんだよ」

海斗は得意気に話しながら、それらを稔に手渡した。
ありがとう、と二人で抱き合う。

「またあそびにくる?」
「うん」

『民宿 里中』の前での別れの挨拶は和やかに進む。

「稔ちゃん、これね婦人会で作った苺ジャムとご隠居から芋ようかん。旅館ででも食べて」
「旅館?」
「おばちゃん!なんで言っちゃうの!」

突然の一穂の大声に驚いて肩がビクリと跳ねてしまう。
そんな稔に恵子は笑いかける。

「途中、一泊するんですって。これ、言っちゃだめだったっけ?お父ちゃん」
「いいんじゃねぇか」
「口止めしたのに、サプライズしようと思ったのに・・・」
「サプライズなんかしなくても、嬉しそうじゃねぇか。ほら」

ガックリ項垂れていた一穂が顔をあげると、思いのほか顔を赤くした稔と目が合う。
へらりと笑う稔に抱きつこうとして、海斗に向こう脛を蹴られ蹲る一穂。
慎太は海斗の頭を撫でながら大声で笑った。

「海斗は稔君が初恋なのかもなぁ」
「親としては応援してあげたいけどねぇ」

蒼太と陸は寄り添いながらしみじみと一連の光景を眺めた。
出発前には里中の前でみんなで写真を撮った。
ちょうど犬の散歩に出てきたお隣の三宅さんの奥さんが、シャッターを切ってくれた。
しっぽがくるんと丸まった茶色の雑種犬も写真に収まった。
三宅さんがニコニコしていていたので、きっとみんないい笑顔だったのだと思う。
車に乗り込む稔に恵子は三角のいちご飴を三個握らせて笑った。
包み込むような優しい笑顔だった。




「これ、まだあったんですね」
「nisiyamaに売ってた。あそこなんでも売ってんな」

手元の使い捨てカメラのカウンターは残り22枚。
稔はそれをくるくると弄ぶ。
そして、運転する横顔を撮る。

「撮る前に言ってほしいなー」
「自然体だからいいの」
「半目で不細工な顔になってるかも」

それもまたいい、と稔は笑う。
撮ったものがすぐに見れないのも、待ち遠しくていい。
さっき別れたばかりなのに、もう寂しい。
早く現像して、みんなの笑顔に会いたい。

「一泊しなくても帰れると思うんだけど」
「旅行みたいだろ?どうせなら、寄り道して行こうと思って」

な?と目線だけ寄越すのについ見蕩れてしまう。

「そういう所ずるいと思う」
「えっ、これは俺ずるくないと思うけど・・・なんで?」

稔はふいっと車窓に目をやってやり過ごす。
車は海岸線を走る。
いつか見た車窓からの海は今日もキラキラ輝いていて、波は穏やか。
いつかのあの時よりスピードが遅いような気がして、そこもまたずるいと思う。

カーラジオから流れる音楽に合わせて鼻歌を歌う。
どこ寄り道しようか、楽しげな声にどこでも、と答えてしまう。




※少し短いですがキリがいいのでここまで。
次回旅行回です。テンポ遅くて申し訳ありません‪( ´•̥  ̫ •̥` )‬
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