ループ100回目の悪役令息は悪役王子と逃亡します

谷絵 ちぐり

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プロローグ

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「斬首の刑に処す」

これは当たりだ、と侯爵令息はホッと胸を撫で下ろした。
こうやって断罪されるのはもう何回目だろうかよく覚えていない。
斬首はいい、特に国益に損害を与えたわけではない自分は衆人環視の元ではなく騎士団本部の処刑場で処される。
上から降ってくる大きな刃を目を閉じて受け止めるだけでいい。
一番嫌なのは国外追放だ。
足枷手枷をされ、縄で縛られ国境付近に捨て置かれる。
運がよく大型野獣等が現れれば幸運だ、奴らは喉元一閃で送ってくれる。
現れなければ日差しにジリジリと焦がされ飢えと喉の乾きに耐え、幻を見ながら鳥につつかれ小動物に齧られる。
その次は最北の地にある罪人収容所での幽閉か。
岩肌をくり抜いて造られたそこの一番上、年中冷たい風に晒され眠ることも起きていることすらままならない。
あとは貴族籍を剥奪されて平民落ち、とは表向きだ。
この時だけは他と違ってそれなりの身なりに着替えさせられる。
他は薄っぺらい一枚布を被らされるだけだ。
そのそれなりの身なりで貧民街へ放り込まれ、その日のうちに身ぐるみ剥がされ、鎖で繋がれ気が狂うまで犯される。

今回は斬首で良かった、とちらりと第一王子を窺うと微かに頷いた。
自分だけにわかるそれ、こちらも瞬きでそれに応えた。

、今度こそここから逃げ仰せましょう。
これは貴方と私の秘密の言葉、秘密の約束。
貴方と一緒に朝日を浴びましょう。
貴方と一緒に夕焼けを眺めましょう。
貴方と一緒にどこまでも続く道を歩きましょう。
この地獄を、この哀しみを、この惨めさを、共有できるのはこの狂った世界でたった一人貴方だけなのです。


重い足枷を引きずって歩き、手首にある枷も重く腕が上がらない。
膝をつき頭垂れるも、それはすぐさま引きちぎらんばかりの力で髪を持って正面を向かされる。
屈強な騎士団長にかなうわけがない、元侯爵令息は力なくされるがままだ。

「言い残すことはあるか?」
「なにも」
「贖罪の言葉もないのか?」
「なにも」

虚ろな目が控えている次兄の顔を一瞬だけ捉えた。
実の弟が処される様を見せられる気分はどんなものなのだろうか。

「リディ・・・」

頭と胴が離れる瞬間に耳に入るのはいつもこの声だ。
自分の名を呼ぶ兄の声。




「リディアル様、おはようございます」


───あぁ、また始まってしまった。
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