18 / 19
壁に耳あり障子にメアリー
・・・とんだ爆弾じゃん
執務室の扉にもたれかかるマルティナは頭を抱えそのままずるずると座り込んだ。
「おかえりなさい。マルティナ様、どうされました?」
「・・・爆弾」
「はい?」
かけられた声を見上げると心配そうに眉を寄せるシェリル。
「明日、暇?」
「授業があります」
「ですよねー」
マルティナは立ち上がりグッと腰を伸ばし、散歩行かない?とシェリルを誘った。
公爵邸は小高い丘の上にあり邸を囲む壁も柵も無かった。
背の高い木が一本、邸の傍にあるだけで邸までは町からは一本の登り道しか無い。
丘の上からは町が見下ろせ、遠くには学校や港も見えた。
見晴らしが良いということは賊の隠れる隙が無いということ。
計算されてるのね、とシェリルは感心した。
遮るものがないので風が吹くと全身に浴びたようになりとても気持ちがいい。
シェリルとマルティナは並んで邸の周りを歩く。
「元気がないように見えましたがどうされましたか?」
「ん?難しい問題があってね。どうやって解いてやろうかなって」
「・・・そうですか」
「シェリルはなんでなにもしてないって主張しなかったの?」
立ち止まってじっとシェリルの目を見るマルティナ。
「・・・横領はしました」
「第一王子の婚約者に当てられた予算を、第一王子に内緒で孤児院に回したこと?私欲じゃないからいいんじゃない?」
「・・・なんでもご存知なんですね」
「メアリーがいるからね」
「そのメアリーさんって」
「あぁ、メアリーはこの島を愛するみんなだよ」
マルティナもシェリルもお互いから目を話さず対峙していた。
シェリルは少し汗ばんでいたが、マルティナは涼しい顔でメアリーについて語った。
「本土にも隣国にもうちの島の子達はいる。そしてね、見てるの。自分の出稼ぎ先や奉公先、それに休日に出かけた市場や公園。噂を拾うこともある。奉公先が貴族や商家ならその家の醜聞なんかもね。メアリーはみんな普通に暮らしてる民よ」
うふふと笑うマルティナにシェリルは背筋がゾクリとした。
「王家の影でも筆頭公爵家の諜報員でもない、普通の人々よ。でもね、どこにでもいるの。うちの島の目はね。そして島を愛してるから情報を流すの。城にもいるわよ、侍女に下女に下男、洗濯女から掃除女や馬番、キリがないわ。でもね、不思議なのよ、彼らは存在してるのにまるで透明のように気にかけられないの」
怖いのは有象無象の目よ、とゾッとするほど低い声で言いながら口の端を釣り上げるマルティナ。
シェリルはゴクリと生唾を飲み込んだ。
帰ろうか、とシェリルはマルティナに腕をとられ部屋まで送られた。
また晩ご飯の時にね、と呆然とするシェリルを置いてマルティナは去っていった。
ばあや今日のご飯なにー?、と食堂の椅子にどっかりと腰掛け項垂れるマルティナ。
お母様に聞くとしても絶対裏に王家が絡んでる。
しかしなぜ宰相ではなく補佐なんだろう。
補佐はなんの役割を担ってるんだろうか。
補佐が動くのを待ってる暇はない。
先手は打たせない、仕掛けた方が勝つ。
で、勝つためには?
桔梗鴉と消えたシスター。
婚約破棄は偶然?些細なことだと思ってたけど、仕組まれたものだったら・・・
誰が?義妹?いや、あれは頭が悪い。
父親?義母?・・・義母か?
義母の生家は確か・・・
んー、と頭をガシガシやるマルティナ。
「お嬢様」
「・・・スティン」
「髪がボサボサです」
うるへー、とマルティナは天を仰いだ。
「ワーグナー邸から『箱』が出てまいりました」
「箱?」
「ワーグナー夫人の私室の鏡台の引き出しの二重底から。しかもその二重底全て鏡張りだったようでございます」
「・・・・・・呪いか」
「十中八九」
ゴチンとテーブルに突っ伏し、お腹すいたぁと盛大なため息をついた。
※PTA役員×2になってしまい更新が遅れました(´・ω・`)
明日からまた頑張ります( . .)"
執務室の扉にもたれかかるマルティナは頭を抱えそのままずるずると座り込んだ。
「おかえりなさい。マルティナ様、どうされました?」
「・・・爆弾」
「はい?」
かけられた声を見上げると心配そうに眉を寄せるシェリル。
「明日、暇?」
「授業があります」
「ですよねー」
マルティナは立ち上がりグッと腰を伸ばし、散歩行かない?とシェリルを誘った。
公爵邸は小高い丘の上にあり邸を囲む壁も柵も無かった。
背の高い木が一本、邸の傍にあるだけで邸までは町からは一本の登り道しか無い。
丘の上からは町が見下ろせ、遠くには学校や港も見えた。
見晴らしが良いということは賊の隠れる隙が無いということ。
計算されてるのね、とシェリルは感心した。
遮るものがないので風が吹くと全身に浴びたようになりとても気持ちがいい。
シェリルとマルティナは並んで邸の周りを歩く。
「元気がないように見えましたがどうされましたか?」
「ん?難しい問題があってね。どうやって解いてやろうかなって」
「・・・そうですか」
「シェリルはなんでなにもしてないって主張しなかったの?」
立ち止まってじっとシェリルの目を見るマルティナ。
「・・・横領はしました」
「第一王子の婚約者に当てられた予算を、第一王子に内緒で孤児院に回したこと?私欲じゃないからいいんじゃない?」
「・・・なんでもご存知なんですね」
「メアリーがいるからね」
「そのメアリーさんって」
「あぁ、メアリーはこの島を愛するみんなだよ」
マルティナもシェリルもお互いから目を話さず対峙していた。
シェリルは少し汗ばんでいたが、マルティナは涼しい顔でメアリーについて語った。
「本土にも隣国にもうちの島の子達はいる。そしてね、見てるの。自分の出稼ぎ先や奉公先、それに休日に出かけた市場や公園。噂を拾うこともある。奉公先が貴族や商家ならその家の醜聞なんかもね。メアリーはみんな普通に暮らしてる民よ」
うふふと笑うマルティナにシェリルは背筋がゾクリとした。
「王家の影でも筆頭公爵家の諜報員でもない、普通の人々よ。でもね、どこにでもいるの。うちの島の目はね。そして島を愛してるから情報を流すの。城にもいるわよ、侍女に下女に下男、洗濯女から掃除女や馬番、キリがないわ。でもね、不思議なのよ、彼らは存在してるのにまるで透明のように気にかけられないの」
怖いのは有象無象の目よ、とゾッとするほど低い声で言いながら口の端を釣り上げるマルティナ。
シェリルはゴクリと生唾を飲み込んだ。
帰ろうか、とシェリルはマルティナに腕をとられ部屋まで送られた。
また晩ご飯の時にね、と呆然とするシェリルを置いてマルティナは去っていった。
ばあや今日のご飯なにー?、と食堂の椅子にどっかりと腰掛け項垂れるマルティナ。
お母様に聞くとしても絶対裏に王家が絡んでる。
しかしなぜ宰相ではなく補佐なんだろう。
補佐はなんの役割を担ってるんだろうか。
補佐が動くのを待ってる暇はない。
先手は打たせない、仕掛けた方が勝つ。
で、勝つためには?
桔梗鴉と消えたシスター。
婚約破棄は偶然?些細なことだと思ってたけど、仕組まれたものだったら・・・
誰が?義妹?いや、あれは頭が悪い。
父親?義母?・・・義母か?
義母の生家は確か・・・
んー、と頭をガシガシやるマルティナ。
「お嬢様」
「・・・スティン」
「髪がボサボサです」
うるへー、とマルティナは天を仰いだ。
「ワーグナー邸から『箱』が出てまいりました」
「箱?」
「ワーグナー夫人の私室の鏡台の引き出しの二重底から。しかもその二重底全て鏡張りだったようでございます」
「・・・・・・呪いか」
「十中八九」
ゴチンとテーブルに突っ伏し、お腹すいたぁと盛大なため息をついた。
※PTA役員×2になってしまい更新が遅れました(´・ω・`)
明日からまた頑張ります( . .)"
あなたにおすすめの小説
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました
明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。
十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。
一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。
いや、無理。 (3/27・0時完結)
詩海猫(9/10受賞作発売中!)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。
一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。
もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、
「わかってくれるだろう?ミーナ」
と手を差し伸べた。
だから私はこう答えた。
「いや、無理」
と。