天使の毒

香坂

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あれから、授業が始まるチャイムが鳴り皆席についた。
多分、皆私とさっきーが話してたのに気付いてたと思う。
でも、あえて二人きりにしてくれたんだと。
けど話の途中だったのに……
チャイムが鳴ってしまったから会話は終了した。
……また話せるなんて保証はない。
けど、話せる気がする。勘とかそういうのはない。
それでも感じるんだ。また話せるんじゃないかと……
約束なんてしてないけど、そう信じたいんだ。

いきなりだが、私の両親は他界した。
小学六年生の卒業式後。当然だったんだ。
お母さんは首を吊って自殺。お父さんもお母さんの後を追う
かのように、自ら車に引かれた。
お父さんの妹、叔母さんに引き取られた。
私には弟がいるから弟も一緒に引き取られた。
叔母さんはいつも私に言うんだ。

『貴方の両親は貴方の育て方を間違えた』

いつもこの言葉を私に投げかけてくる。
弟にそんなの聞かせられないから私がいる時はあまり
自分の部屋から出ないように言っている。

確かに私の母は私の育て方を間違えたのかも。
私のお母さんは毎日言っていた。

『早く死にたい。子供なんていらなかったのかも』

お父さんはいつもお母さんに暴力を振るっていた。
漫画やドラマによくある話だよね。けど現実にあるなんて
私だって六年生になるまで分からなかったんだ。
六年生になってから、何時しか父は母を殴り蹴っていた。
いつもお母さんは痛そうに自分の手当をする。
毎日毎日痛々しい痣だらけ。
なので家事全般は私がこなしてた。
弟は、私の二個下。今はもう六年生。
バスケをやっている。蒼井蓮大。(あおい れんと)
私と違い蓮大は勉強よりバスケって感じだった。
素直でいい子なんだ、なのにお父さんは……

『侑花みたく勉強を見習え』

と。蓮大にまで手を出そうとしていた。
けどそれをお母さんがいつも止めていたんだ。
私は怖くて止められなかった。
お母さん、貴方は死ぬまでずっと『お母さん』という
仕事をこなしていましたね。ありがとう。
早く死にたいと思うのも無理ないと思います。
子供なんていらなかったよね。
前、お母さんから聞いたことあったんだよね。

『お母さんね、侑花が産まれるまでお父さんと凄いラブラブなのよ~』

まぁ産まれてもそうだけど!とか言っていたなぁ。
それはつまり、私が生まれなきゃ良かったのよね。
そしたらお父さんはお母さんに暴力振らなくて済んだかも。
蓮大だってほかの家庭に産まれて幸せに暮らしていたかも。
そう考えたら、私なんて生まれなきゃ良かったと。
そう思ってしまう。けど私は死ねない。
蓮大だっているし。それに今は大切な人ができた。
お母さん、お父さんあのね?
私お父さん以上に大大大好きな男の人が出来たんだよ?
今はぎくしゃくしているけど、本当に大好きなの。
お父さんみたく暴力なんて振らない人なんだよ?
空から見てね。私絶対お母さんみたいにならないから。
ちゃんと私を見守っていてください。お墓参り行きますね。

「姉さん、叔母さんが呼んでる」
「うん。蓮大は部屋にいてね」

また何か私のお父さんやお母さんの愚痴を言われる。
叔母さんの家族と違って私の家族は結構裕福だった。
お父さんは叔母さんの兄。私のお父さんは有名大学を卒業。
叔母さんは大学にも行かせてもらえなかったらしい。
成績やら親から差別を受けていたと。
……だからなんだよ。私には関係ないのにいちいちうるさい。
もうお父さんとお母さんは死んだ。
今更私に何を愚痴るんですか?意味分かりませんが。

「貴方はお父さんが好き?」
「……分からないですね」
「そう。じゃあ恨んでる?」

そうかもしれない。
元々お父さんが暴力を振るう事が無かったら
お母さんは自殺なんかしないし。
お父さんだってその後を追ったりしない。
……最近私悩み事多い気がするのは気のせいだろうか。
さっきー。私の悩み聞いてくれない?
お願い。誰でもいいの。私の心を癒して欲しいの。

「私の兄が貴方のお母さんを追って死んだとでも?」
「……はい?」
「なわけないでしょう?私が押したの」
「はっ、え?」

あぁ。神様は私に味方をしてはくれないんですね。
……お母さん、お父さん。会いたいよ。
何処にいるの?何で私と蓮大だけを置いて行ったの?
貴方達が産んだ子供でしょう?
大切じゃなかったの?ねぇ、お父さん。
ちゃんと信号を待っている時は後ろに気をつけてよ……
だから叔母さんに押されるんだよ?
ねぇ、蓮大にこんな事言えないよね。どうすればいいの?
お父さん、子供が私だけならまだしも、貴方が死んだ時は
蓮大はまだ9歳だったんだよ?もっと家族で一緒にいたかった。
誰も、私の心を癒してくれないの?
さっきー。さっきーだけしかいないんだよ?
香菜には相談出来ない事もある。さっきーお願い。
気付いて?私の心の叫びを気付いて欲しい。
叔母さん、何で今になって言うの?もう二年経ちましたよ。
貴方を、恨む気はありません。もちろん殺意もないです。
けどこれだけは言わせてください。

『貴方は知らないでしょうね、私の心の傷がとても深い事に』

リビングに蓮大が入って来た。
部屋で待っててって言ったのに。

「姉さん、電話。佐々木だって」
「……えっ!?」
「知り合い?」

私はすぐ家の廊下に行き電話機を取った。
今一番聞きたかった声が電話機に響いた。

『もしもし、蒼井?』
「さっきー……!」
『大丈夫?声震えてる』

やっぱりさっきーは分かってくれるんだ。
お願い、私の心の傷に気付いて。
さっきーは鈍感で本当にめちゃくちゃ天然だけども……
気付いてくれる時は本当に気付いてくれる。
ねぇ、さっきー?私の事癒してくれる?

「……どうしたの?」

私は癒して欲しいと思っていたはずなのに。
自分からその事を言えないなんて。
素直じゃない自分は嫌いだ。
早く、素直に言ってしまえばいい話なのに。
さっきーは鈍感なんだから分からない。
……私はずっとそう思っていたんだ。

『距離置くとは言ったけど、蒼井の悩み事ぐらいは聞けるよ』

何故そこまで優しくしてくるの?
私、さっきーの口からは好きかもしか聞いたことがない。
だから本当に私の事好きなのかなんてわからない。
女子苦手なんでしょ?
ならこんなに優しくしてくれなくていいよ。
優しさが罪になる事だってあるんだから。
どうしてさっきーは、好きでもない子にそんなに優しいの?

「何で好きな人以外にも優しくするの?」
『それは皆そうだよ。蒼井だって大翔にも橋本にも優しいでしょ?それと同じ事なんだよ。』
「それは、友達だから……」
『ほらね。蒼井、よく聞いて』

何を言うんだろう。
私の心臓は物凄くうるさい。
小さい子供が叫んでいるような感じだ。

『好きな人と友達に対する優しさには違いがあるんだよ』

どんななの?そう聞きたいのに。
言葉が詰まって出てこないんだ。

「……ん」
『俺、蒼井以外の女子にこんな優しくした事ないよ』
「……えっ?」

それって、嘘、待って、頭が追いつかない。
そういう事?好きだって事にとらえていいんだよね?
さっきーは素直じゃないからはっきり物事を言えない。
そういうところも、さっきーは溜め込み過ぎなんだよ。
もう少し、周りを頼っていいんだよ?
私だってさっきーに頼って欲しい。さっきーも相談してよ。

「ありがとう」
『だから、いつでも相談していいからね』
「私だけ?こんな優しいの」

こんな事聞くなんて重いかもしれないけど。
ちゃんと聞いとかないと不安で仕方ないんだ。
だから、きちんとさっきーの意思でさっきーの声で聞きたい。

『さっきも言ったでしょ』
「お願い」
『……特別だから』

あーもう、私にこんなに幸せになる資格があるんだろうか。
さっきー、本当にありがとう。

「さっきーも」
『はいはい』

私は、さっきーもと言うと
さっきーは効果音が付くくらい笑顔で
呆れながらとはいはいと言ってくれた。
距離は置くけど、話せるならまだマシだ。
これからさっきーと話せなかった日々の分。
沢山さっきーと話そう。
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