ブラッシング!!

コトハナリユキ

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ナワバリ

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 殺菌族さっきんぞくは、俺たち罵維菌族ばいきんぞくと敵対する勢力で長い間、ナワバリ争いを続けてきた。

 罵維菌族おれたちはひたすらナワバリを増やして行くのが目的だけど、対する殺菌族は罵維菌族おれたちのナワバリを奪って、その上その場所を綺麗にするっていうのが目的だった。

 過去形で説明しているのは、最近はもっぱら押され気味で、ナワバリを増やすどころか、殺菌族やつらからナワバリを奪い返す風になって、立場が逆転してしまった。特にここ1年で急激に力をつけて来ていて、仲間も沢山殺された。

 両族ともに、東京を拠点に全国各地に支部があって、それぞれの支部所属チームが個々に活動している。俺達は中部支部所属のチームで罵苦乱ばくらん。今はたった5人だけの小さなチームだけど、いつかはどこよりもでかいチームにするのが目標だ。けどまぁ、俺はかなり今のチームは気に入ってる。チーム名の意味はよく知らない。

 とにかく俺たち罵維菌族は、殺菌族をぶっつぶして、この日本を俺たちの天下にすることが夢って訳だ。以上!


 「……じゃ、ここは現状殺菌族あいつらのナワバリって訳だ。」
 社長室跡の、まだフカフカした椅子にドカッと腰掛けて、俺はニヤニヤと部屋中を見渡した。それをユースケは遠くからただ微妙な顔つきで眺めている。

 「不思議だよなぁ、ユースケ。」
 「え、なにがっすか?」
 「人のモノほど、欲しくなるし、すっげー汚したくなるもんな!」
 「それただの変態っすよ」
 ユースケのツッコミはいつも的確で、かなり気に入ってる。

 「とりあえずよ、どっかにナワバリの象徴ハタが掲げてあるはずだから、見つけて燃やすぞ! 宣戦布告だ!」
 ウキウキ感を隠しきれない俺を見て、ユースケは、ハァ……と溜息をもらす。
 「っとに、すぐ喧嘩売りますよね~ちょっとは様子見たりとかぁ」
 「バぁカ、飛んで来ちまった場所が敵のテリトリーなんだから、来ちまった時点でどーせ喧嘩にはなるんだよ」
 「うーん。まぁ、それもそうっすね。」
 「なら、先手必勝だろ?」
 「そっすね。じゃ、とっとと行きますか」
 「お前はエンジンかかんのがおせーんだよ」
 俺は「まったくっ」と言わんばかりの表情で、勢いよく椅子から立ち上がり机を踏んづけて、正面のドアへとジャンプした。

 「あ、そーいや兄貴っ。」
 ドアノブに手をかけたところで、ユースケに呼び止められて振り返った。
 「なんだ?」
 「あの三バカは、どこのフロアにいるんすかね?」
 「……あ。」
 ユースケの少し引きつった顔につられて、「忘れてたわ」と苦笑いを落とした。
 「あいつらほかっとくのもなぁ……。旗より先に探しに行くかぁ。」
 「はい、その方がいいと思います」
 二人して溜め息がついつい出てしまう。
 この三人は俺達の後輩なんだけど、バカしかいないんだ。
 「はーあぁ~。そもそもなんで一緒に飛んで来て同じ場所に降りれねんだよー」
 少し肩を落とし、ギギギっとドアを開け外へ出た。
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