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心のひっかかり
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吹き付ける風が崖の下へ落とそうとしているみたいだ。チラっと崖下を覗くも地面は見えない。
「すげーなぁ。ここが俺の死に場所かぁ。」
僕の前でグッと身を乗り出して崖を覗き込む彼は隙だらけで、ボロボロの身体だ。小突けば落とせてしまうかもしれない。僕はそんなことを考えていた。
「昔から死ぬなら苦しくないよう一瞬で死にたいとは思ってたんだ。そんで、お前が銃を持って現れた。これもなんかの縁なのかもなぁ。」
この人は昔から少しクレイジーな様だ。僕は自身が死ぬことなんてこの族に入るまで考えたこともない。
「1発だ。絶対1発だぞ、なんなら背中に銃をつきつけて、心臓を撃ちぬけ。いいな?」
「は、はい。」
僕は背中を向ける男の背にグっと、銃を突きつけた。その瞬間だった。
バシ!! 銃を持つ左手に激痛が走った。
崖側を向いていた彼は物凄いスピードで右回転をし、掌で僕の左腕を強打した。もちろん予想もしていなかった動きに動揺して僕は何も反応ができなかった。カシャンと情けない音を立てて銃は地面に落ち、僕は目の前にいる罵苦乱の頭であるこの男ではなく、落とした銃を目で追ってしまう。当たり前だけど、そのまま遠心力まで加えられた左のストレートパンチは、すんなり僕の顔面に入ってしまった。
「ぐ……!」
感じたことのない衝撃、痛み、熱さ、血の味。僕は尻もちをついて倒れた。
「だハハハ!」
見上げた所から大きな声で笑われたのも初めての経験で、痛みを通り越して悔しさがこみ上げた。
甘かった……!
銃は遠くへ蹴り飛ばされた。
「……騙したんですか。」
「はは。俺は死に場所も死に様も考えてねぇよ、ばぁか。」
騙されたけど、やはり傷は本物の様だ。ゼーゼーと肩で息をしているし、攻撃に対して自分もダメージを負っているようだ。
さっきよりフラフラしている。
「ただ……銃が邪魔だったからさ。」
相変わらず血は止まった様子はないし、止めようとする気もなさそうだ。でも本当に死にそうなのにこの人は一体。
「よっしゃ! 素手同士になったことだし、タイマンといこうじゃねーか!」
!!? なんなんだこの人は。まさに死にぞこないが似合う状態で、素手で殴り合いしようぜ? おかしいだろう。
ここまで困惑したことはないし、敵の身体を心配したこともない。僕はとりあえず立ち上がった。
目の前で息を切らしている相手は笑っている。人って、開き直ればこんな風になれるのかな?
「お前が、どんな奴なのかさっぱりだけど、これも何かの縁だ。」
縁? さっきも言ってたな。
「最期の喧嘩って訳だ。……思い切りやろうぜ。」
……どんな縁だ。
そうだ。この人は敵で、今回の僕のターゲットだ。銃を手放しても僕はヒットマンのクアリクだ。銃はもう無いけどまだ隠しナイフがある。僕は左手でナイフを持った。
「まぁ、そん位は上等だよ。」
ナイフに気付いた彼はまた笑った。
「すげーなぁ。ここが俺の死に場所かぁ。」
僕の前でグッと身を乗り出して崖を覗き込む彼は隙だらけで、ボロボロの身体だ。小突けば落とせてしまうかもしれない。僕はそんなことを考えていた。
「昔から死ぬなら苦しくないよう一瞬で死にたいとは思ってたんだ。そんで、お前が銃を持って現れた。これもなんかの縁なのかもなぁ。」
この人は昔から少しクレイジーな様だ。僕は自身が死ぬことなんてこの族に入るまで考えたこともない。
「1発だ。絶対1発だぞ、なんなら背中に銃をつきつけて、心臓を撃ちぬけ。いいな?」
「は、はい。」
僕は背中を向ける男の背にグっと、銃を突きつけた。その瞬間だった。
バシ!! 銃を持つ左手に激痛が走った。
崖側を向いていた彼は物凄いスピードで右回転をし、掌で僕の左腕を強打した。もちろん予想もしていなかった動きに動揺して僕は何も反応ができなかった。カシャンと情けない音を立てて銃は地面に落ち、僕は目の前にいる罵苦乱の頭であるこの男ではなく、落とした銃を目で追ってしまう。当たり前だけど、そのまま遠心力まで加えられた左のストレートパンチは、すんなり僕の顔面に入ってしまった。
「ぐ……!」
感じたことのない衝撃、痛み、熱さ、血の味。僕は尻もちをついて倒れた。
「だハハハ!」
見上げた所から大きな声で笑われたのも初めての経験で、痛みを通り越して悔しさがこみ上げた。
甘かった……!
銃は遠くへ蹴り飛ばされた。
「……騙したんですか。」
「はは。俺は死に場所も死に様も考えてねぇよ、ばぁか。」
騙されたけど、やはり傷は本物の様だ。ゼーゼーと肩で息をしているし、攻撃に対して自分もダメージを負っているようだ。
さっきよりフラフラしている。
「ただ……銃が邪魔だったからさ。」
相変わらず血は止まった様子はないし、止めようとする気もなさそうだ。でも本当に死にそうなのにこの人は一体。
「よっしゃ! 素手同士になったことだし、タイマンといこうじゃねーか!」
!!? なんなんだこの人は。まさに死にぞこないが似合う状態で、素手で殴り合いしようぜ? おかしいだろう。
ここまで困惑したことはないし、敵の身体を心配したこともない。僕はとりあえず立ち上がった。
目の前で息を切らしている相手は笑っている。人って、開き直ればこんな風になれるのかな?
「お前が、どんな奴なのかさっぱりだけど、これも何かの縁だ。」
縁? さっきも言ってたな。
「最期の喧嘩って訳だ。……思い切りやろうぜ。」
……どんな縁だ。
そうだ。この人は敵で、今回の僕のターゲットだ。銃を手放しても僕はヒットマンのクアリクだ。銃はもう無いけどまだ隠しナイフがある。僕は左手でナイフを持った。
「まぁ、そん位は上等だよ。」
ナイフに気付いた彼はまた笑った。
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