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天邪鬼
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クアリクの胸に突き刺さった鉤爪が月光を弾いて光っている。胸の辺りにはじわじわと血が滲んでいた。
俺は構わず直立しているその鉤爪に左足をかけた。
ガリ!
「ぅあ!」
クアリクは歯を食いしばったが少しだけ声を漏らした。恨めしそうに俺を見たが、少しして両腕を投げ出し、諦めた様子を見せた。
俺は話しかけてみた。
「不意打ちが上手くいったと安心したか?」
クアリクはフーフーと小刻みに息をするだけだ。
「このままこの鉤爪を踏み込めば、心臓を貫いてお前は死ぬ。いや、……死ねるぞ。」
クアリクは驚いてまた俺を見た。
「お前さ、死に場所探してたんだろ?」
またクアリクは視線を逸らした。恐らく図星だ。
「ヒットマンって言ってもよ。奇襲、不意打ち、騙し討ちがうまくいってただけ。今日だって、ミヤシゲがお前に突っ込んで来なけりゃ影から撃ち殺してたんだろ?」
頭をかいて俺は続ける。
「まぁ、そんなやつがタイマンの誘いになんか乗ってくる訳ねーよな。」
自嘲的に俺は笑ってしまった。するとクアリクが視線は逸らしたままで口を開いた。
「その通り、です。」
大きな溜息一度ついてからクアリクは語った。
「僕は、初めて親に手をかけた時も配合から首を切り裂きました。その後の人達も遠くからや、影から。」
言葉にまた少しつかえた。言いたくても言葉にできなかったことがあるのかもしれない。
「僕は、いつも、あの目が……怖かった。」
クアリクは目に涙を浮かべた。相変わらず目は赤かった。全員が聞いていた。
「逃げて来たんです。自分を誤魔化してずっと。」
右手を持ち上げて目を覆う。
「だから、あなた達みたいに真っ直ぐな瞳が怖かったんです。」
倒れた哀れな男の話を、俺たちは全員黙って聞いていた。殺されていたかもしれない彼らも。俺は随分優しい子分達を持ったみたいだ。
「生きてる意味なんて。あの日からずっとありません。ただ逃げて殺しての繰り返し。」
乗せていた右手で涙を拭っている。
クアリクは鼻をすすって言った。
「早く鉤爪を押し込んで、殺して下さい。」
俺はまた少し笑った。
「殺せって言われると、不思議と生かしたくなっちまうから、不思議だよなぁ。」
「え」
「なんてな!」
ドグ!!
部屋中に鈍い音が響いた。
俺は構わず直立しているその鉤爪に左足をかけた。
ガリ!
「ぅあ!」
クアリクは歯を食いしばったが少しだけ声を漏らした。恨めしそうに俺を見たが、少しして両腕を投げ出し、諦めた様子を見せた。
俺は話しかけてみた。
「不意打ちが上手くいったと安心したか?」
クアリクはフーフーと小刻みに息をするだけだ。
「このままこの鉤爪を踏み込めば、心臓を貫いてお前は死ぬ。いや、……死ねるぞ。」
クアリクは驚いてまた俺を見た。
「お前さ、死に場所探してたんだろ?」
またクアリクは視線を逸らした。恐らく図星だ。
「ヒットマンって言ってもよ。奇襲、不意打ち、騙し討ちがうまくいってただけ。今日だって、ミヤシゲがお前に突っ込んで来なけりゃ影から撃ち殺してたんだろ?」
頭をかいて俺は続ける。
「まぁ、そんなやつがタイマンの誘いになんか乗ってくる訳ねーよな。」
自嘲的に俺は笑ってしまった。するとクアリクが視線は逸らしたままで口を開いた。
「その通り、です。」
大きな溜息一度ついてからクアリクは語った。
「僕は、初めて親に手をかけた時も配合から首を切り裂きました。その後の人達も遠くからや、影から。」
言葉にまた少しつかえた。言いたくても言葉にできなかったことがあるのかもしれない。
「僕は、いつも、あの目が……怖かった。」
クアリクは目に涙を浮かべた。相変わらず目は赤かった。全員が聞いていた。
「逃げて来たんです。自分を誤魔化してずっと。」
右手を持ち上げて目を覆う。
「だから、あなた達みたいに真っ直ぐな瞳が怖かったんです。」
倒れた哀れな男の話を、俺たちは全員黙って聞いていた。殺されていたかもしれない彼らも。俺は随分優しい子分達を持ったみたいだ。
「生きてる意味なんて。あの日からずっとありません。ただ逃げて殺しての繰り返し。」
乗せていた右手で涙を拭っている。
クアリクは鼻をすすって言った。
「早く鉤爪を押し込んで、殺して下さい。」
俺はまた少し笑った。
「殺せって言われると、不思議と生かしたくなっちまうから、不思議だよなぁ。」
「え」
「なんてな!」
ドグ!!
部屋中に鈍い音が響いた。
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