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天邪鬼
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クアリクは俺の踏み蹴りを顔面に喰らい気絶していた。
「師匠。意味あったわ。」
「え、なんの意味ですか?」
勝負に勝った俺に駆け寄ったタカマツだった。安堵感でいっぱいという顔だった。
「いや、なんでもない。」
「鉤爪でトドメささなかったんすね。」
クアリクへと視線を向けて少し納得いかなそうなユースケの声が聞こえた。
振り向いて答えた。
「さっき、ユースケが言ってたように俺は少し拳法をかじっててな。」
聞こえてたんすね。とユースケは苦笑いを浮かべた。
「大会で相手を半殺しにして、破門になった。そんでやり場のない気持ちと力をどうしたもんかと苛立って暴れまわってた。」
ひとつ溜息をつく。
「そんな俺を拾ってくれたのが先代頭のリュウイチさんだった。」
みんな黙って聞いていた。俺はまたクアリクに目をやった。
「誰に出会うか、それだけだったんじゃないかって思うとな。こいつにも簡単に死んで欲しくねーなもって気分になっちまった。」
「いや、頭の蹴り喰らった死にますって~。」
トシキのカラカラとした声に安心した。
「それにしても、こいつどうするんですか?」
ミヤシゲもクアリクを見つめて俺に聞いた。
不思議と彼らから憎しみやらなんやらといった感情は読み取れない。
知らねーよ。と俺が素っ気なく返事をするとミヤシゲは笑っていた。
全力でぶつかりあった後は遺恨を残さない。そんな精神なのかもしれない。
「っつーか、そいつはとりあえずいいよほかっとけ。やばいのはミズエだろ、ミズ……」
振り向いたら両の掌をまっすぐ俺に向けて立っているミズエが目に入った。
「あれ……? 傷がない。」
ミズエは満面の笑みだった。
俺は仰天して駆け寄った。
すっかりというより傷なんて最初からなかったかのような綺麗な掌だった。相変わらず紋章が立派に描かれている。
「どういうことだ、これは……。」
俺は眉間に皺を作ってミズエでなくユースケを凝視した。
お前どうせ知ってたんだろう?という目だ。
「師匠。意味あったわ。」
「え、なんの意味ですか?」
勝負に勝った俺に駆け寄ったタカマツだった。安堵感でいっぱいという顔だった。
「いや、なんでもない。」
「鉤爪でトドメささなかったんすね。」
クアリクへと視線を向けて少し納得いかなそうなユースケの声が聞こえた。
振り向いて答えた。
「さっき、ユースケが言ってたように俺は少し拳法をかじっててな。」
聞こえてたんすね。とユースケは苦笑いを浮かべた。
「大会で相手を半殺しにして、破門になった。そんでやり場のない気持ちと力をどうしたもんかと苛立って暴れまわってた。」
ひとつ溜息をつく。
「そんな俺を拾ってくれたのが先代頭のリュウイチさんだった。」
みんな黙って聞いていた。俺はまたクアリクに目をやった。
「誰に出会うか、それだけだったんじゃないかって思うとな。こいつにも簡単に死んで欲しくねーなもって気分になっちまった。」
「いや、頭の蹴り喰らった死にますって~。」
トシキのカラカラとした声に安心した。
「それにしても、こいつどうするんですか?」
ミヤシゲもクアリクを見つめて俺に聞いた。
不思議と彼らから憎しみやらなんやらといった感情は読み取れない。
知らねーよ。と俺が素っ気なく返事をするとミヤシゲは笑っていた。
全力でぶつかりあった後は遺恨を残さない。そんな精神なのかもしれない。
「っつーか、そいつはとりあえずいいよほかっとけ。やばいのはミズエだろ、ミズ……」
振り向いたら両の掌をまっすぐ俺に向けて立っているミズエが目に入った。
「あれ……? 傷がない。」
ミズエは満面の笑みだった。
俺は仰天して駆け寄った。
すっかりというより傷なんて最初からなかったかのような綺麗な掌だった。相変わらず紋章が立派に描かれている。
「どういうことだ、これは……。」
俺は眉間に皺を作ってミズエでなくユースケを凝視した。
お前どうせ知ってたんだろう?という目だ。
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