王子発掘プロジェクト

urada shuro

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第7章

レオッカとナナシと(3)

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 ナナシがひと差し指を立てる。同時に、狙撃手が引き金を引こうとする。その瞬間。

 あたしとナナシの間に飛び出してきたレオッカが、伸ばした腕で真一文字に空を切り、

「――ルフ・リフィトス」

 どこかで聞き覚えがある……いや、見覚え? 言い覚え? とにかく、覚えのある言葉を発した。あっという間に、屈強な警備隊員たちがばたばたと倒れていく。

 こ、これって――……?!

 狼狽えるあたしに対し、レオッカは落ち着いていた。腰に手を当て、首を傾けて息を吐く。

「うるさい子たちは、お昼寝の時間だよ」
「え……お、お昼寝って……みんな、眠ってるの? もしかして、魔法……?!」

 少年はこちらを向き、はにかんで肩をすくめる。
 立っているのは、あたしとレオッカ、ナナシだけという構図になった。

 ……そうだ。さっきの言葉は、眠り魔法の呪文。エミルドさんの魔法書にも載っていた、目の前のひとを眠らせる魔法だ。あたしも何度も口にしたこともある。一度も成功しなかったけど。

「……ありがとう、レオッカ。もう、どうなるかと」

 あたしの声に、ナナシがふり返った。

「……マトリ! レオッカも……何だよ、今の。おまえたちがやったのか?」

 レオッカが一歩前に出る。

「僕だよ」

「……レオッカ……おまえも魔法使いだったのか」
「うん」

 ふたりはしばらく無言で視線を合わせたまま、瞼すら動かさなかった。お互い、真顔だ。
 なんというか、「入ってはいけない空気」というものを肌で感じる。あたしは黙って、固唾を飲んだ。

「……ふーん。別に、どーでもいいけど」

 ナナシはもうひとりの魔法使いから視線を外し、あくびをしながらドアに向かって歩を進めた。あたしは慌ててナナシに駆け寄る。

「待って! 国王様になにするつもり?!」
「ぶっとばして、オレが国王になる」

 王座を狙う王子候補は、口をへの字に曲げて胸を張る。

  な、なんてこと……! あの穏やかだったナナシの口から、そんな粗暴な言葉が出るなんて、そんな思想を持っているなんて、信じたくない。

 ふらつくあたしの耳に、ひゅ、と風を切る音が聞こえた。何かがナナシの手に当たり、その拍子に彼が掴んでいた大鎌を落とす。床には、黄緑色の小さなボールが転がっていた。どうやら、これがナナシの手に当たったらしい。投げたのは――

「そんなことしたって、真の王様にはなれないよ」

 ――ニナファルドさんの血を引く彼だ。顎を上げ、楽しげでサディスティックな笑みを漏らしている。
 ナナシは舌打ちをして、レオッカを睨みつけた。

「……なんだよ、おまえ。オレの邪魔すんのかよ」
「ま、僕も一応、王子候補だからね」

 ナナシはエミルドさんの魔法書に載っている初級魔法で、直径十センチほどのボールを大量に出現させた。鮮やかなピンク色のボールをひとつ手に取り、三メートルほど離れたレオッカ目がけて軽く投げる。レオッカは右手をかざし、バリアを作ってそれを跳ね退けた。
 次々とボール投げるナナシの球速は上がっていく。それをレオッカが全て弾いていく。

「待って待ってやめてっ! あたしたちはケンカしに来たんじゃないんだからっ。ナナシと話がしたいだけなんだってば!」

 腕にしがみくあたしを、ナナシは思い切り眉をひそめて見下ろした。

「……なんだよ。なんの話?」
「そ……その、王様のこととか、あなたのこと、いろんな話。聞いてくれる?」

 お願い……! という祈りを込めて、上目でじっと見つめる。

 ナナシは目を細め、しばらく黙った。やがて、ふう、と息を吐く。

「……いいけど。そのかわり、条件がある」

 そう言って、人差し指を立てて、くるりとスイングさせる。
 目の前に現れたのは、四角い建物だった。街の交差点によくある、一日中営業していてなんでも売ってる便利なお店ほどの大きさだ。木造で、白い枠の窓がいくつかある。窓に掛けられた薄いグリーンのカーテンが閉まっていて、中は見えない。

 小さいとはいえ室内に家が建つなんて、ここがお城の廊下だから成せたことだろう。

「マトリとふたりならいいよ。この中で、ふたりで話そう」

 ナナシの言葉に、レオッカとあたしは顔を見合わせた。
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