泡沫の如く儚い平和

第五話

　夜、氷柱も寝て、俺ももうすぐ寝ようかと思っていると、雀が部屋を覗いて来た。

「何だよ。」
「あ、いやまぁ大した用じゃないんっすけど。」
「良いから入れよ。」
「それじゃあお邪魔しますっす。」

　雀が部屋に入ると、俺は座布団を取り出して雀に貸してやった。
　座布団を床に置いて雀は座布団の上に座った。

「んで?何の用だよ。」
「あ、いや、もうすぐ梅雨も終わりっすね。」
「お前はそんな世間話しに来たのか?」

　俺がそう言うと雀は視線を下に落とした。まぁ雀が一体何を言いたいのか、大凡予想が出来るんだけどな。つーか、毎年言われてるから嫌でも分かる。それに俺も、今同じ事考えてたし。

「鳩、大丈夫っすかね。」
「どうだろうな。一応今まで問題は無かったけど、今年は少し事情が違うからな。」

　氷柱や雀に何かしらの辛い過去があるのと同じで、鳩にだって消せない記憶がある。それが夏時に一番思い出される。普段なら別に問題は無く時が過ぎるんだが、今回はそうはいかないだろうな。せめて死人は出ないようにしないとな。
　にしても何か、初めて鳩と会った時の事思い出すな。あの時のあいつは本当に荒れてたからな。
　考えてたら鳩が今何してんのか気になってきた。

「なぁ雀、お前鳩が何処にいるか分かるか?」
「うーん、基本的にあっしは鳩とは逆方向に行くっすから、あんまり分からないっすね。南や西の方って事は分かるんっすけどね。」
「だよな。」

　あいつどうしてっかな。