泡沫の如く儚い平和

琴里 美海

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第弐拾弐話

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 朝食を食べ終わった槿花は真っ先においらに遊ぼうと言って来た。別に今日は特に予定が無いから良いけれど、唯槿花と遊ぶと死ぬ程疲れるんだよな。だけど遊ばないと煩いから結局一緒に遊ぶ事になる。
 おいらは槿花と一緒に外へ出ると、槿花は目を輝かせておいらを見て来た。

「ねぇにーちゃ!!何するずら!?」
「おいらが連れて来られた側なのに、それを聞くか………………」

 だけどまぁ何時もの事だから良いんだけど。

「じゃあ鬼ごっこは?」
「鬼ごっこ!!にーちゃが鬼ずらよ!!」
「はぁ!!?」

 いやこう言うのは何かしらの方法で鬼を決めて、って言う前に槿花は走って行ってしまっていた。
 おいらは暫くその場で呆然としてから、大きく溜め息を吐いて槿花を追い掛けた。
 小さな子供って言うのはこう言う時本当に有利だと思う。ちょっとした隙間に入り込めるし、何より鳥の姿になれば他の奴らの中に紛れ込めるから。だけど槿花は白髪に赤眼だから、案外簡単に見付ける事が出来る。
 空を見上げて真っ白い鳩が飛んでたら、それはもう槿花だ。おいらはこの辺で真っ白い鳩は槿花以外じゃ見た事が無いから。
 だけど今は暫く地面の方を探す事にした。
 山の中を歩いて槿花を探していると、近くの茂みが小さく揺れた。

(……………うん。)

 おいらは茂みに飛び込むと、やたらと驚いている槿花がいた。

「はい見っけ。」
「きゃぁああ!!」

 随分と楽しそうな顔で槿花は茂みから飛び出し、おいらから逃げた。おいらも茂みから飛び出して槿花を追い掛けた。
 山の中を走り回ってやっと槿花見付けた時、槿花は前方を見続けて硬直していた。
 おいらは槿花の異変に気が付くと走る速度を落とし、槿花の後ろに立った。すると槿花が見ている光景が見えておいらは自分の目を疑った。

「……………え?」

 其処から見えた景色は炎の赤一色だった。だけどそれは綺麗な炎じゃない、地を燃やし、家を燃やし、人を燃やす醜い炎だった。
 おいらはすぐに槿花を連れて来た道を戻った。

(何だあれ………………………)

 明らかに普通じゃない出来事が目の前で起きていた。明らかに恐ろしい事が目の前で起きていた。
 その時何時ぞやの雉の言葉を思い出した。

「何かさ、最近ちょっと戦の準備が始まってるみたいなんだよね。」

(まさかあれが?)

 雉が何時ぞや言っていた戦。
 おいらは近くの木の後ろに隠れて座って凭れかかると、槿花は大分怯えた様子だった。

「槿花大丈夫ずらか?」

 声を掛けると槿花はおいらにしがみ付いて来た。生まれてこの方、戦いとかの怖い物を見た事が無かった槿花が怯えるのは当たり前だ。
 後ろから叫び声が聞こえてくると、おいらは槿花を抱えて家へ走った。
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