大雪の中咲く一輪華

琴里 美海

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第参拾六話

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 如何したら良いのか分からぬまま妾が来ていた場所は暁光の下だった。
 戸を叩くと暁光はすぐに妾を家へ招き入れた。

「んで?何両って言われたんだよ。」
「え?」
「あそこ、料金が死ぬ程高いからな。」

 暁光は知っておったのか。それでも暁光が勧めたと言う事はそれ程に薬の効果は期待して良いと言う事かのう。

「五千両じゃ。」
「ごせっ!!!」

 やはり流石にこれは多かったのであろうな。
 暁光は大きく溜め息を吐いてから懐から巾着を取り出して妾に差し出した。

「何じゃこれは。」
「多分半分は入ってる。」
「え。」
「薬代の足しにしろ。流石に全額は出せないけど、これで一気に減るだろ。」

 半分も出してくれるなら後は何とかなるやもしれぬ。
 妾はすぐに巾着を受け取り、暁光に何度も礼を言ってから家を飛び出し、霰の下へと急いだ。

 それから毎日機を織った。元より金の稼ぎ方等妾はこれしか知らぬ。それに、下手な事をして己の身を危険に晒す事もしたくなかった。
 毎日機を織り、完成する度に売りに行き、金を得た。
 結構な時間が掛かってしもうたが、それでも何とか残りの薬代を集める事が出来た。

「霰さん、時間が掛かってしまいましたが薬を買うお金が集まりました。」
「雪華………………」

 霰は妾の手を握ると、それは悲しそうな顔をした。

「こんなに傷だらけになるまで………………………」
「良いんです、霰さんが元気になってくれるのなら、私は喜んで己の身を差し出します。」

 霰の手を握り返してから妾は薬を買いに鴆の所へ向かった。
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