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第弐拾五話
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濤が居る場所は決まっている。森の境界線とあの巨木のある場所のどちらか。だから私はこの子と一緒に其処へ向かった。境界線は超えないように気を付けながら、濤を探して歩いていた。
如何やら境界線の所にはいない。と言う事は必然的に巨木の場所と言う事になる。
私達は二匹で巨木の生えている場所へ向かった。
真っ先に目に入ったのは、最後に見た時と大分違う風景だった。花は荒らされ、巨木には傷が入っている。そして何より、地面には血が零れている。そして濤の臭いもあった。
(何だよこれ。)
(………貴方は此処で待っていて。)
(え、わ、分かった。)
どうしようもない胸騒ぎを覚えて私は一人で血を辿った。すると少し離れた所に血だらけで倒れている濤と、刃物を持った人間がいた。
「これで、これで森は我等の物に…………!!」
人間が訳の分からない事を言っている。いやそんな事は如何でも良い。問題なのは人間の持つ真っ赤に染まった刃物から、間違いなく濤の臭いがする事だった。
(よくも…………よくも!!!)
私は叫びながら人間に飛び付いた。
首に噛み付いてしまえばこちらの物、気が付いた時には人間は既に息絶えていた。
私はすぐに濤に駆け寄ったが、もう既に死んでいた。
私は濤を連れてあの子の所へ戻った。
(母さ………え……………)
既に息絶えた濤を見て、あの子は驚きを隠せていなかった。
おぼつかない足取りでこちらに近づいて来ると、私はそっと濤を地面に降ろした。そして濤の前でその子は膝を突いた。
(と、父さん?何で………一体何があったんだよ……………)
(……………人間に、殺されたの。)
私がそう言うとその子は歯を食いしばって怒りを露わにした。
(ふざけるな!!!何で父さんが殺されなきゃいけない!!!くそっ!!!人間が!!!死ね!!!死んじまえ!!!)
そう言った後は蹲って呻き声に近い声で泣いていた。
その時私は濤に少しだけ申し訳ない気持ちでいた。この子は如何やら私のせいで人間嫌いに育ってしまったらしい。
それから私は、この子に本当の事を言うのを止める事にした。それがこの子の為になるのかは分からないけれど。
それから私が濤の代わりに森の長となった。勿論他にも代わりになろうとした動物はいたけれど、濤の後継ぎが他の関係のない者だなんて許せなくて、力の差を見せ付けて無理矢理長になった。
それに、濤から聞いていた『最後の仕事』を任せるのは、流石に荷が重すぎると思った。まぁ、その仕事を私が生きている内にする事になるかは分からないけれど。
それからは何だかんだ楽しい毎日だったかもしれない。妖怪側に知り合いが出来たし。だけどまぁ、まさかこの子がこんなに幼くして自分の正体を知る事になるとは、流石に思っていなかったけどね。
如何やら境界線の所にはいない。と言う事は必然的に巨木の場所と言う事になる。
私達は二匹で巨木の生えている場所へ向かった。
真っ先に目に入ったのは、最後に見た時と大分違う風景だった。花は荒らされ、巨木には傷が入っている。そして何より、地面には血が零れている。そして濤の臭いもあった。
(何だよこれ。)
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どうしようもない胸騒ぎを覚えて私は一人で血を辿った。すると少し離れた所に血だらけで倒れている濤と、刃物を持った人間がいた。
「これで、これで森は我等の物に…………!!」
人間が訳の分からない事を言っている。いやそんな事は如何でも良い。問題なのは人間の持つ真っ赤に染まった刃物から、間違いなく濤の臭いがする事だった。
(よくも…………よくも!!!)
私は叫びながら人間に飛び付いた。
首に噛み付いてしまえばこちらの物、気が付いた時には人間は既に息絶えていた。
私はすぐに濤に駆け寄ったが、もう既に死んでいた。
私は濤を連れてあの子の所へ戻った。
(母さ………え……………)
既に息絶えた濤を見て、あの子は驚きを隠せていなかった。
おぼつかない足取りでこちらに近づいて来ると、私はそっと濤を地面に降ろした。そして濤の前でその子は膝を突いた。
(と、父さん?何で………一体何があったんだよ……………)
(……………人間に、殺されたの。)
私がそう言うとその子は歯を食いしばって怒りを露わにした。
(ふざけるな!!!何で父さんが殺されなきゃいけない!!!くそっ!!!人間が!!!死ね!!!死んじまえ!!!)
そう言った後は蹲って呻き声に近い声で泣いていた。
その時私は濤に少しだけ申し訳ない気持ちでいた。この子は如何やら私のせいで人間嫌いに育ってしまったらしい。
それから私は、この子に本当の事を言うのを止める事にした。それがこの子の為になるのかは分からないけれど。
それから私が濤の代わりに森の長となった。勿論他にも代わりになろうとした動物はいたけれど、濤の後継ぎが他の関係のない者だなんて許せなくて、力の差を見せ付けて無理矢理長になった。
それに、濤から聞いていた『最後の仕事』を任せるのは、流石に荷が重すぎると思った。まぁ、その仕事を私が生きている内にする事になるかは分からないけれど。
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