炎陽の下吹く恵風

琴里 美海

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第弐拾八話

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 あの煩い奴、環に文字とかを教わってから三日。恵風からは喋り方を教えてもらっていた。

「けーふー。」
「恵風ね。如何したの?」

 今日も環から色々教わってるけど、今は休憩中。あ、あたいの休憩じゃなくて、環の休憩だ。あたいは体力には自信があるから、そんな休憩しなくて大丈夫だけど、教えてもらう側より、教える側の方が疲れるみたいだし、仕方ないか。
 あたいはさっき書いた字が合っているか恵風に聞いた。恵風はあたいが書いた文字の線の一本一本をちゃんと見てから頷いた。

「うん大丈夫、ちゃんと合ってるよ。」
「そーか!!」

 何も見ないで書けたから、正直凄く嬉しい。

「そう言えば炎陽ちゃん、如何して勉強したいと思ったの?」

 突然そんな事を聞かれてあたいは驚いた。正直何て言ったら良いのか分からない。この考えとか、この気持ちとか、こう言うの母さんとか恵風とか環とか、ちゃんと色々分かってる奴等なら、すぐに言葉に出来るのかもしれない。

(あたい、まだ自分の事何にも分かってないから、少しでも知りたいから、その為には色々学ばないといけないと思ったんだ。)
「そっか、そんな風にちゃんと考えてたんだ。」

 恵風はあたいの頭を撫でて来た。

(気安く撫でんな!!!)

 あたいは恵風の手を思い切り叩いた。

「お待たせしました炎陽殿!!!」

 環が戻ってくると、相変わらずの勢いで襖を開けて部屋に入って来た。どうだ、色々と物の名前を覚えたんだ。

「それで如何でしょうか炎陽殿、書けましたかな?」
「ん。」

 あたいは字を書いた紙を環に見せた。環も恵風と同じように、ジッとあたいの書いた字を見てから笑顔で頷いた。

「ちゃんと書けております!!!では炎陽殿、ご自分のお名前と恵風殿のお名前、自力で書けるようになれましたな!!!」
「おう!!」

 どうだ、あたいだってやれば出来るんだ。
 それから環から色々な文字とか、道具の名前とか、そんな物を教えてもらった。
 そう言えば此処数日、あたいは環から勉強を教わってるけど、母さんはそれに対して如何思っているんだろう。それに、実際の所母さんはあたいの事、今は如何思ってるんだろう。正直怖くて聞けずにいる。
 気が付いたら外から夕暮れ時の太陽の光が差し込んで来ていた。

「あ、もうこんな時間。」
「では今日はこれにて終わりにいたしましょうか!!!炎陽殿、お疲れ様でございます!!!」

 環は道具を片付けると、あたいと恵風を外まで案内して、そのまま森のすぐ近くまで送ってくれた。環の姿が見えなくなるまで、環はずっとあたいと恵風に手を振っていた。あれ腕疲れそうだな、とかそんな事を考えながら歩いて行った。
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