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約束する未来に、君は――。
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しおりを挟む「百合子、おかえりさない。……あら、貴方が百合子の彼氏くん?」
「はい、黒瀬椿といいます。百合子さんとお付き合いさせて頂いています。これ、つまらないものですが……良かったら食べてください」
「あらあら、ご丁寧にまぁ。ありがとうね」
東京駅で買ったお土産の入った紙袋を手渡した椿くんは、ニコニコと愛想のいい笑みを浮かべている。それを受け取ったお母さんは、ザ・好青年な雰囲気を纏っている椿くんを見て、ほうっと感心したような表情をしながらお礼を言う。
「ちょっと百合子ってば、どこでこんな素敵な子と出会ったのよ! あんなイケメンを捕まえてくるなんて、百合子ってばやるじゃない!」
家に上がれば、お母さんに小声で耳打ちされる。私が想像していた通りの反応だ。
「今飲み物を入れるわね。紅茶に珈琲に緑茶、麦茶、ジュースもあるわよ。椿くんは何がいい?」
「それじゃあ、珈琲をお願いしてもいいですか?」
「もちろんよ。アイスでいいかしら?」
「はい、大丈夫です」
お母さんは上機嫌でキッチンに向かっていく。ウチはLDKの間取りになっているから、キッチンからでもリビングがよく見える。
椿くんにはリビングのソファに座って待っていてもらうことにして、私も手伝おうとキッチンに続いた。
「お母さん、私も珈琲でお願い。グラス出すね」
「はいはい、分かってるわよ。というか百合子たち、こっちではホテルをとってあるんだっけ?」
「うん、ちゃんと予約してあるよ」
「せっかくだし、このままウチに泊まっていけばよかったのに。あぁでも、それじゃあ椿くんが気を遣っちゃうわよね」
ちゃっかり椿くんと名前呼びしているお母さんは、木製のトレーにアイス珈琲二つと、お店のクッキーが並んでいる皿を置いて、私に手渡してくる。持って行けということだろう。受け取って、椿くんが待つリビングに向かう。
「お父さんね、今出掛けてるのよ。あと一時間もしたら帰ってくると思うし、それまでゆっくりしてて。私は夕食を準備しておくから。あ、椿くん、苦手なものとか食べれないものはある?」
「いえ、何でも食べれます」
「なら良かったわ」
お母さんはずいぶん張り切ってくれているみたいだ。だけど、時刻はまだ十五時前。夕食を準備するには早すぎる気もする。
「もう夕食の準備をするの? 早くない?」
「せっかく椿くんも来てくれたんだから、今日は早夕飯にしちゃってもいいかなと思って。美味しい物いっぱい作るからね」
「手伝おうか?」
「いいわよ。時間もあるし、二人で近くでも散歩してきたらどう?」
その時、ピンポーンとチャイム音が響いた。
「あら、宅配かしら」と呟いたお母さんは、スリッパの音をパタパタ鳴らしながら玄関に行ってしまう。
「お母さんてば、変わらないなぁ。……椿くん、どうかした?」
お母さんの後ろ姿を見送りながら思わず呟けば、右隣から視線を感じた。横を向けば目が合った椿くんの顔は、何だか楽しそうだ。
「ん? いや、お母さんと話す百合子さんの姿が、何だか新鮮だなって」
「そうかな?」
「うん。いつもより砕けた口調とか、雰囲気も違う気がするし……いつもより子どもっぽい感じがするかな」
「え、子どもっぽい?」
まさか子どもっぽいなんて言われるとは思ってもいなかったから、驚いてしまう。年下の椿くんにそんな風に指摘されるのは、少し恥ずかしい。
「何か、一人ではしゃいじゃってごめんね?」
「あはは、何で謝るの? むしろそういう姿、俺にももっと見せてほしいな」
「子どもっぽい姿を?」
「うん。子どもっぽい姿っていうか……俺の前では気なんて遣わないで、自然体でいてほしいってことだよ」
椿くんの手が、私の手にするりと重なる。どちらともなく手をギュッと握り合い、笑みをこぼしながら「うん」と頷いた。
「ふふふ、仲良しねぇ」
そのタイミングで耳に届いた声に、驚いた私は小さく肩を揺らしてしまった。
玄関に続く扉の方を見れば、少しだけ開いた隙間から、にやにやと口許を緩ませているお母さんの姿が見えた。
来客対応をしていたはずなのに――いつの間にか戻ってきて、私と椿くんのやりとりをこっそり見ていたらしい。
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