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降り積もるそれは、きっと。
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しおりを挟むもしかしたら、目の前にいる男性の仲間かもしれない。怖くなって持っていたバッグを後ろの人物に向けて思いきりぶつけてやれば、肩に乗っていた手が離れていく。
「いたっ、お姉さん、俺だよ」
「……くろせ、くん?」
そこに立っていたのは、黒瀬くんだった。依然としてチャコールグレーのタキシードに身を包んだままで、その息は上がっている。ここまで走ってきたのだろうか。
「はぁ、……無事でよかった」
安堵した様子で溜息を漏らした黒瀬くんに、抱きしめられる。その身体はすごく熱くて、くっついた胸元からはトクトクと早い心音が伝わってきた。やっぱり、ここまで走ってきてくれたみたいだ。
「どうして、黒瀬くんがここに……?」
困惑を顕わにしたまま問えば、「お姉さんがいないことに気づいて、慌てて出てきたんだ」と返される。
「……ククッ、やっぱりおれの勘って冴えてるなぁ」
黒瀬くんの登場に、長髪の男性が、何故かクツクツと笑い声を漏らしている。黒瀬くんは私から離れると、男性を睨みながら、聞いたことのないような低い声を響かせた。
「……この人に何した。何言った。返答次第では……殺す」
――まさかの黒瀬くんが、マジギレしている。その圧に私までびびってしまいそうになりながら、でもこの状況で何をどうしたらいいのかも分からず、黙って様子を見守ることしかできない。
黒瀬くんに睨まれている男性は、尚も笑い続けながら、視線を逸らすことなく黒瀬くんをじっと見据えている。
「そんなに怒んなって。おれと椿の仲だろ? おれはただ、その子が椿にとってどんだけ意味のある子なのか、確かめようと思っただけで……」
男性の言葉が、そこで途切れる。――何故なら黒瀬くんが、男性に向けて鋭い蹴りを繰り出したからだ。正直動作が早すぎて、黒瀬くんが足を上げたことにすら気づかなかったし、男性の顔面横すれすれでピタリと蹴りの勢いを止めていることに、私は驚きを通り越して半ば呆然としてしまっている。
「……もういい。さっきから煩い。さっさと消えてくんない」
黒瀬くんが凄めば、長髪の男性は「おぉ、怖い怖い」とおちゃらけながら、両手を小さく挙げて降参のポーズをとる。
「それじゃあ、邪魔者は退散するとしますか。……オネエサンも、またね」
去り際に私にも手を振って、男性は立ち去っていった。
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