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ショッピングと贈り物
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しおりを挟む「……美代さん、すごかったなぁ」
エアホッケーを終えた私たちはゲームセンターを出て、一休みしていた。
黒瀬くんは飲み物を買いに、美代さんはお手洗いに行っている。皇さんとロビーの空いていたソファ席に腰を下ろして二人が戻ってくるのを待ちながら、つい先ほどの光景を思い出して感嘆の声を漏らしてしまう。
「アイツは昔から、負けず嫌いな気があるからな」
「昔から……美代さんと皇さんは、長いお付き合いなんですか?」
「あぁ。アイツがまだケツの青いガキだった頃から知ってる」
「へぇ、そうなんですね。それにしても……美代さん、ホッケー強かったですよね。その……お綺麗で、運動神経もいいなんてさすがですね!」
美代さんの良いところを言葉にして、皇さんに少しでも意識してもらおう作戦だ。まぁ二人の付き合いは長いというから、皇さんは私以上に、美代さんの良いところをたくさん知っているのだろうけど。
「そうだな。本当に……男とは思えねぇくらい可愛い面してるってのにな」
「はい。本当に、男とは思えないくらい……、……えっ?」
――皇さん、今、何て仰いましたか?
聞き間違いかと思って問いかければ、一言一句、違わない言葉が返ってくる。
「ん? 男とは思えねぇくらい可愛い面してるって言ったんだ」
「……えっと、その可愛い面をしてるのって……」
「? あぁ、美代のことだ」
――まさかの衝撃の事実に驚き固まっていれば、皇さんに「おい、どうした?」と顔の前でひらひらと手を振られる。
そこに、飲み物を買いに行っていた黒瀬くんと、お手洗いに行っていた美代さんが一緒に戻ってきた。
「み、みみ、美代さん……!?」
「ちょ、ちょっと何? どうしたのよ」
戸惑った様子で顔を顰めている美代さんに詰め寄る。
「み、美代さんが、お、男っていうのは……あの……」
「……あぁ、そのこと。そうよ。言ってなかったっけ?」
美代さんは私の言わんとすることを察したらしい。けろっとした表情で肯定される。
「き、聞いてないですよ……!」
「そう? てっきり椿に聞いてると思ってたわ」
黒瀬くんに顔を向ければ、黒瀬くんはにこりと笑って一言。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「っ、聞いてないよ……‼」
黒瀬くんに詰め寄れば「わ、百合子さんってば積極的」だなんて揶揄い雑じりに喜ばれ、何故かそのまま抱きつかれた。その背中をぺしりと叩いて腕の中から抜け出す。
「あんたたち、人前でいちゃついてんじゃないわよ」
「す、すみません」
美代さんにじろりと睨まれてしまったので、大人しく謝る。
「それに男とか女とか……そんなの些細なことなんだから、どっちでもいいでしょ」
「そ、それはまぁ、そうですけど……」
今どき同性同士で恋愛することだって普通のことだし、異議を唱えるつもりも否定するつもりだって毛頭ない。でも、事前に教えてもらいたかったっていうのが本音ではある。すごくびっくりしたから。
「だって私、男とか女とか関係なく可愛いし?」
美代さんは「うふっ」と笑ってあざとくウィンクすると「というか、久々に本気出して疲れちゃった。椿、肩揉んでちょうだい」と私が座っていたソファ席に腰を下ろした。
どこまでも我が道を行く人だ。黒瀬くんはそんな美代さんの言葉をサラッと無視して、買ってきた飲み物を手渡してくれる。
「はい、これ。百合子さんの分ね」
「あ、ありがとう」
「ちょっと椿、早く肩揉んでよね」
「はい、これは皇さんの」
「……何で嬢ちゃんのは冷たい紅茶で、俺のはお汁粉なんだ?」
「え、お汁粉とか、皇さん好きそうだなって思って」
「……いや、まぁいいけどよ。ありがとな」
「ちょっと椿! 無視してんじゃないわよ」
「ええ、何で俺が美代さんの肩を揉まなきゃいけないわけ? 皇さんに頼めば?」
「っ、はあっ!? し、慎二さんに頼むなんて、そ、そんなのできるわけ……」
「ん? 何だ、呼んだか?」
――カオスだ。目の前に、混沌とした空間が広がっている。
黒瀬くんは多分美代さんのことを揶揄っているのだろうし、美代さんは一人でテンパっているし、皇さんは……多分、何も分かっていないのだろう。
黒瀬くんが買ってきてくれた紅茶を飲みながら、騒がしいやりとりを静観しつつ――たまにはこんな賑やかな休日を過ごすのも悪くないなと、そう思いながら。目が合った黒瀬くんと笑い合った。
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