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第一部 はじまり
第七話 おそうじ作戦、開始です!
しおりを挟む國上が封印されていた祠から、歩くことニ十分くらい。
たどり着いた先にあったのは――。
「これは、何ていうか……」
朽ちはてて、ボロボロになっている――神社らしき場所だった。
神社のシンボルである鳥居は、すっかり色が落ちているし、苔がはえてところどころ緑色になっている。
お参りをするところ(拝殿っていうんだって)は、お賽銭をいれるところが真っ二つにわれているし、屋根のがれきは、今にもくずれ落ちてきそうだ。
地面にも、葉や小枝、ゴミくずなんかがちらばっているし。
何だか、すごく……。
(さみしい感じがするなぁ)
人の気配もなく、ガランとしている神社をぼうぜんと見ていれば、となりに立っていた國上が、ゆっくりとした足どりで拝殿の方にむかっていく。
「あれから、百年以上はたっているからなぁ。だが……まさかここまでボロボロな状態になっているとは思っていなかったから、少しおどろいたな」
國上は、「はっはっ」と明るく笑っている。
だけど、となりまで行ってその横顔を見上げれば……やっぱり、さみしそうに見える。
だって、ここは、國上にとってのお家ってことだもん。
久しぶりに帰ったら、自分の家がボロボロになっているなんて……そんなの、悲しくなるに決まってるよ。
「……よし!」
わたしは持っていたカバンを地面におろした。
そして、今日の体育の授業で使ったジャージを取りだして、制服から着替える。
外だから見えないように、スカートをはいたままズボンをはいて、上はブレザーだけぬいで、シャツの上からジャージを着ることにした。
……うん、これでオッケー!
「すみれ? 何をしているんだ?」
「何って、そうじをするんでしょ? だったら、制服のままじゃよごれちゃうかもだし、やりづらいからね」
「いや、しかし……こうもボロボロじゃあな……」
國上は、まゆを下げてこまった顔をしている。
――さっきまでは、お社に帰ることを、あんなに楽しみにしていたのに。
想像以上にボロボロになっていたから、すっかり元気をなくしちゃったみたいだ。
だけど……。
「國上は、あきらめてもいいの? このお社は、國上にとって大切な場所なんじゃないの?」
「それは……ああ、もちろん大切な場所だ」
「だったら、がんばろうよ! 一人じゃ無理なことでもね、いっしょなら、やりとげられると思うんだ。せっかく封印がとけて帰ってこれたのに、ボロボロのままなんて、お社もかわいそうでしょう?」
わたしの言葉を聞いて、國上の海をとじこめたみたいにきれいな青いひとみが、ゆらゆらと揺れた。
――っていうか、もしかしてわたしってば、神様相手に生意気なことを言っちゃったかな?
「あの、國上? ごめんね、何も知らないのに、生意気なこと言っちゃって……」
「……いや、すみれは何も悪くないさ。むしろ、ありがとう。この場所はオレにとってとても大切な場所だ。だから、あきらめないで復興したい。またここで、たくさんの人たちの願いを聞き届けたいと……そう思う」
「……うん! わたしもお手伝いするから、いっしょにがんばろうね!」
ガッツポーズをして笑いかければ、國上は目を細めて笑った。
ついさっきまでくもっていたその顔は、すっかり晴れやかになっている。
「……すみれは、やさしい子だな」
「え、そうかな? ふつうだと思うよ?」
「いーや、他者のために一生懸命になれるっていうのは、だれにでもできることではないからな」
うーん、わたしはただ、國上の悲しそうな顔をこれ以上見たくないなって思っただけなんだけどな。
それに、この神社がきれいになった姿を見てみたいなとも思う。
それにね……國上といっしょにいると安心するし、國上には笑っていてほしいって、すっごく思うんだ。
昨日出会ったばかりなのに、変だよね。
これも國上が神様だからなのかな?
「それじゃあ、早速そうじをはじめるとするか」
「うん! がんばるぞー!」
國上といっしょに、まずは地面にちらばっている葉っぱや小枝、ゴミくずなんかを拾い集めていく。
「そういえば、さっきからふしぎなんだけどね……國上といっしょにいる時って、不幸なことが全然起きないの。どうしてだろう?」
いつもなら、そろそろ何かしらの不運なことがふりかかってきてもおかしくないはずなのに……。
首をかしげていれば、國上は「ああ」と何か知っているような顔でうなずいた。
「それは、オレがすみれのそばにいるからだろうな」
「國上がそばにいるからって……どういうこと?」
「きちんと説明していなかったが、すみれの身に起こる不幸は、呪いによるものだ」
「の、呪い?」
呪いって、わたしがだれかにうらまれているってことかな?
そんな覚えは、全然ないんだけど……。
こわくなっていれば、國上はわたしを安心させるように、頭をなでてくれる。
「だいじょうぶだ。すみれを死にいたらしめるような類の呪いではなさそうだからな」
「そんなこと言われても、呪いなんて言われたらこわいよ……!」
「うーん、その不幸体質は、最近からはじまったのか?」
「ううん、物心ついた時からずっとだよ」
「そうか。それじゃあ、もしかしたら……」
國上はあごに手をそえて、何やら考えこんでしまった。
「……え、もしかしたら、何?」
「……いや。まぁとにかく、オレは神様だからな。すみれにかけられている呪いの効力を打ち消しているんだ。つまり、オレといっしょにいる時のすみれは無敵状態ってことだ! どうだ、心強いだろう?」
「うーん、それはそうなんだけど……」
それって、國上がそばにいない時には意味がないってことだよね。
つまり、その呪いとやらを何とかしてくれないと、わたしの不幸体質なおらないってことだ。
それだとちょっとこまるなぁ。
さすがに、國上に四六時中ずっといっしょにいてもらうわけにもいかないだろうし……。
「まぁ、オレの力が全回復したら、その呪いも何とかできるかもしれないな」
「え、本当に?」
「あぁ」
「へぇ、やっぱり國上ってすごいんだね! さすが神様だ」
「ふふん、そうだろう? もっとほめてくれてもいいぞ?」
國上はどや顔をしている。
さっきから思っていたけど、國上って、けっこう単純っていうか……思っていることが表情にはっきり出るタイプみたい。
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