妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~

創伽夢勾

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6章:神々の思惑

123.謝罪

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 フロンたちはヘイルたちに案内され伯爵の館へと案内された。フィリアの腕の中には丸まって収まっているノワールがいた。少し緊張している様子。



「大丈夫。私たちはちゃんとわかってるから、一緒に謝りましょ?」



 フロンはノワールにそう声をかけると頭をやさしく撫でた。

 ヘイルの後をついていくと、応接室という文字が見えた。ヘイルがドアをノックすると、ドアの向こうから女の人の声が聞こえる。



「どうぞ」

「よし、俺の案内はここまでだ。それじゃ」



 厄介ごとに巻き込まれたくないヘイルはそそくさと、その場を離れようとする。だが、それをノワールは阻んだ。いつの間にかフィリアの腕から抜け出し、ヘイルの退路を絶っていた。



「ヘイルさん。ノワールはあなたにも話を聞いて欲しいそうよ?」



 フィリアの言葉にヘイルは肩を落とし、仕方ないといった表情でしぶしぶ了承した。ノワールはご機嫌のようだった。



「失礼します」



 ヘイルが先にドアを開け、フロンたちを中に誘導する。中には伯爵と思われる男性が一人用のソファーに、先ほどの声の主であろう女性が一人その斜め後ろに立っていた。向かい側には三人が座れるソファーとテーブル。テーブルの上には人数分の紅茶が用意されていた。



「ささ、座ってくれたまえ」



 伯爵に誘導されるまま三人と一匹は席に着いた。突然の訪問にも関わらず、伯爵は優しそうな表情をしていた。



「話は先に聞いておる。ツキカゲの使者ということでいいのかな?」

「はい。お久しぶりです伯爵様。改めまして私はフロンと申します。ユウ様からは伯爵様宛の伝言を預かってまいりました」

「改めまして私の名前はフィリア。そしてこの子はノワール。私からの要件はこの子の話を聴いて欲しいだけです」

「よし分かった。ツキカゲからの伝言は後の方が良さそうじゃな」



 伯爵は二人からの要件を快く承諾してくれた。ノワールを見るとやはりブルブルと震えていた。親に怒られることが分かっていて話し掛けにいくようなものだ。怖いのも、もちろんわかる。だがそこを押してやるのも役目なのだ。フィリアが今回の付き添いを決めたのもこれが理由だからだ。



「ノワール大丈夫よ。頑張りなさい」



 ノワールは優しく微笑むフィリアの顔を見て決意を決めた。仔竜の体から人型へ姿を変える。その状況に秘書は驚きの表情を見せるが伯爵は微動だにしない。ヘイルも同じくその光景を眺めていた。



「私はノワール……なの。私が今日ここに来たのは、前この近くの森で暴れた事について謝りたかったの。ほんとーにごめんなさいなの。私が悪く言われるのはいいの。でもご主人に迷惑が掛かるのは嫌なの!! だから、だから……」



 すでに涙を流し始めているノワール。伯爵は泣きながらも頑張って謝罪を口にしようとするノワールの頭を優しく撫でた。

 急に撫でられ訳の分からないノワールはキョトンとしてしまう。



「大丈夫じゃよ。確かにあの時は大変じゃったが、幸い死者なども出ておらん。何かあった時にはそこにおるのがなんとかするじゃろうて」



 そう言ってシウテ伯爵はどこぞの元炎帝さんを見て笑っていた。当の本人は「えぇ、俺任せですか?」と言いたげな表情をしていた。

 伯爵はそのままノワールを撫でながら言葉を続けた。



「安心せい、ツキカゲに我らから何かすることはない。むしろいい関係を続けていきたいぐらいじゃ。ティナが選び、我らが認めた男じゃからな」

「ほんとに? 私がした事でご主人に何も迷惑かからないの?」

「大丈夫だよ。ギルドからもあの事件は黒龍を撃退したということで話が決着してる。あとから掘り返すようなことはないよ。ギルドマスターとして保証する」



 ノワールの問いにヘイルは答え、伯爵は自分の席へと座り直した。フロンはポケットからハンカチを取り出し、すでに頰まで垂れていたノワールの涙を優しく拭き取った。

 ほんの少し時間が経ち、安心もしくは泣き疲れたからか、ノワールはそのままフィリアの胸の中で眠りについてしまっていた。

 ノワールが眠りについたあと、フロンは伯爵とヘイルへとユウから請け負った伝言を一言一句間違える事なく伝えた。

 その内容に一番驚いたのはヘイルであり、肩を落として嘆いていた。伯爵はというと突飛な提案に笑いながらヘイルの肩をバシバシと叩いていた。



「それではユウ様からの伝言は伝えましたので、私たちはここで」



 フロンは伝えることを伝えると、フィリア、ノワールをつれ部屋を後にしようとする。

「まてまて、気づけばもう日も落ちそうな時間じゃ、そなたたちの移動手段はノワールじゃろう? 宿はこちらで用意しよう。ノルンの宿じゃ、前も使用していたじゃろ? 今日は休んで行くといい」

「いや、しかし頼みごとをしに来たのはこちらです。そこまでお世話になるわけには」

「いいですか? できることならお願いします。伯爵様」

「容易い御用じゃ」



 断ろうとしたフロンの声を遮り、フィリアは伯爵の提案に乗る。フィリアも伯爵もノワールの身を案じているのがわかるため、自分の意見を押し通すことができなかった。



「すいません。お世話になります」

「早く主人様に会いたいのはわかるけど、たまには我慢しないとね」

「うっさいです。わかってますよ」

「あら、こわいこわい」



 そのまま紹介状を受け取ったフロンたちはノルンの宿へと足を進めた。

 
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