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1章:異世界転生とゴブリンの群れ
14:初めての魔法とイライラ
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「わかったよ、それで登録しておくよ」
俺の話を聞き終わったギルマスは、誰かを呼ぶように手招きをする。
するとさっきの受付嬢が後ろから現れた。そして俺たちに3枚のカードを渡してくる1枚はティナ、後の2枚は俺に渡される。
「それに一滴血を垂らしてください」
左の親指を口で噛み傷をつける。そこから出てくる血を2枚のカードに垂らした。ティナも俺に見習って指を切り、血を垂らす。するとカードに文字が浮かび上がってきた。
『ユウ・ツキカゲ
性別 :男
種族 :人種
ランク:F
属性 :闇
PT :UNKNOWN』
と簡潔に書かれていた。こっちがギルドカードみたいだ。もう一つの方にも血を垂らす。するとこちらにも文字が浮かび上がる。
『UNKNOWN
ランク:F
所属:ユウ・ツキカゲ ◎
ティナ・アカーシャ』
こちらも簡潔に書かれていた。俺が確認すると2枚とも消えていった。ステータスカードと同じように突然目の前から消えたのだ。
「2枚とも消えたが?」
「あとは頭の中でギルドカード、パーティでそれぞれ思い浮かべたら対応したものが出てくるはずだよ」
言われたとおりに頭の中にカードを思い浮かべる。するとカードが俺の右手の上に出てくる。
「消したかったらカードを握ればいいよ」
握ってみる。紙をくしゃくしゃにまとめるように、ぎゅっと。すると手のひらからカードは消えていた。
俺の確認が終わると、ティナの方はもう終わっていた。そして俺の腕を掴むと、こっちに来いと言わんばかりに引っ張ってくる。
「指を見せてください。すぐ直しますから」
「いやこれぐらい」
「み・せ・て・く・だ・さ・い!」
そう言ってもティナはまっすぐ俺を見る。これはどうやら折れなさそうだ。これぐらいの傷はどうってことないんだがな。素直に俺の方が折れることにしよう。
「わかったよ」
そう言って左手をティナへ差し出す。差し出した手を自分の方へと引き寄せるティナ、それは勿論俺自身を引き寄せるのと同義なわけで、自然と体が密着してしまう。そんなことは気にしていないかのようにティナは詠唱を始めた。
『光よ癒せ。ヒール』
詠唱が終わり、俺の左手が暖かい光に包まれる。光がなくなり、左手を見るとさっきまであった傷は残っていなかった。
その一部始終を見ていたギルマスから、回復し終わったのを見て、笑いながら声をかけられる。
「君たちは仲がいいね、恋人同士なのかい?」
「いや、違うな。なんていったって俺とティナが知り合ったのは2日前だぞ?」
「それにしてはずいぶんと仲がいいと思うけど、もしかして……」
いきなりギルマスは口ごもる。ティナはというと、ギルマスから恋人という単語を聞いてから再起不能状態になっていた。
こいつらは、なんなんだ。
しばらくするとニヤニヤしながら、こんなことを言ってくるのだ。
「これは僕から言うべきことではなさそうだね。まぁ二人への要件はこれで終わりだよ」
この世界の男どもは、人のことを見てニヤニヤするのが好きなのか?やめてくれ、イライラする。俺の方ももう、ようはない。
「わかった」
そういってソファーから立ち上がり部屋を出ようとする。ティナも俺のあとに続く。
「僕の名前はヘイル。ヘイル・バーナーだ。君たちはこれから活躍しそうだ。何かあったら僕を頼ると言い、できる限りのことはしてあげるよ。これからよろしく」
「ああ、何かあったら頼む」
手短く返答し、応接部屋を出て行った。
部屋を出て向かった先はさっきの受付だ。今日の目標は簡単なクエストを受けることだ。とりあえず、明日のための肩慣らしだ。
俺は、クエストを受けるために受付嬢に話しかける。
「俺のランクで受けれるクエストはあるか?。出来れば討伐系のクエストがいい」
そう言ってギルドカードをテーブルの上に置く。
「Fランクですね。受けれるのはEランクまでのクエストで、今受けれるのでおすすめはゴブリン討伐などはどうでしょう?」
「わかった。じゃあそれで頼む」
俺がクエストを決めると受付嬢が詳しく説明をしてくれる。
「この町を出て森の方に生息しているゴブリンの討伐です。数は5体、まぁ、ないとは思いますが10体倒した場合はこのクエスト2回分の報酬になります。ちなみにこのクエストの報酬は大銅貨5枚です」
何かを操作すると、俺にカードを返す。
返ってきたカードには、パーティの下にクエストの項目が追加されていた。
「クエスト:ゴブリンの討伐0/5」
倒せば換算されていくらしい。パーティの方のカードにもクエストの項目が追加されていた。もちろんティナの方のカードにもだ。
「まだ成り立てのようですし、とりあえず死なないようにだけ気を付けてください。モンスターの情報はギルド内の本棚に並べてありますのでご覧ください」
《ますたー、モンスターのある程度の情報は私が解析しますので大丈夫です》
(わかったよ。助かる)
受付を終えギルドを出ようとする。俺のあとにはティナがついてきている。周りが俺に視線を集める。やはり、黒髪というのは、この世界では人の目を引くようだ。
「おいおい、あいつらなりたてのくせにゴブリン討伐に行くらしいぞ」
「どうせ、強がってんだろ」
「おっあの女可愛いじゃん」
「ねぇねぇ、君俺らとパーティ組まない?」
何やらめんどくさい4人の男たちが絡んできた。どうやらティナがほしいらしい。そいつらはティナに声をかけるが、
「いえ、私はユウ様と組んでいるので、ご遠慮します」
「様付とかお前何様だ? いいからこいよ!」
そう言ってティナの手をつかもうとするが、そんな簡単に下賤な男をティナに触れさせるわけがない、俺がティナと男の間に割って入る。俺が割り込むと、
「これは俺のだ。その下賤な手でティナに触ろうとするな」
そういうとリーダーっぽいのが前に出てくる。どうやら俺の発言が気に食わないらしい。
当人のティナはというと、後ろのほうが赤くなってるが無視だ無視。
「なめてんじゃねーぞ餓鬼が。俺がだれかわかってんのか」
「誰?」
素で聞いてあげた。この町に来たばっかりなのに知るわけがない。
だが男の顔は真っ赤に染まっていき。怒りが表情に出る。
「俺はCランクのガイルだぞ! おい、餓鬼表出ろや」
俺に、そう言って先にギルドから出ていく4人組。周りはこの状況に唖然としている。
「なんなんだ、あいつらは」
俺がそうため息交じりつぶやくと野次馬から情報があった。
「あいつらはここら辺で粋がってるやつらさ、だが強さは本物。伊達にCランクじゃないってことさ、あんたも悪いことはいわないから謝っときな」
嫌だよ、なんであんなのに謝らなきゃいけない。俺がどれだけ動けるか、試したかったし丁度いいかな。
俺も男のあとに続き外に出る。ギルドの前は結構スペースもあり十分動けそうだ。
俺が4人の男と対峙するといううわさが広まり、周りからも人がちらほら集まってきていた。
「はっ出てきたな俺様が直々に相手してやるよ」
「あーそういうのいいから4人で来なよ」
こんなのと一人一回。計四回とかめんどくさい。それなら一気に相手をした方が楽だ。生憎と。この世界に来てから、力が有り余ってる。ストレス発散にもなるしな。
俺の対応に4人ともキレたのか全員が武器を取り出す。
斧に、剣と盾、杖に弓バランスは良さそうな構成だった。
「お前を殺ってから、俺らがそこの女もらっていってやるよ」
そう言いながら4人は汚い笑い声をあげる。俺は、今イライラしている。あのニヤニヤしている奴らに思ったイライラとは違う。俺は敵意を見せる物に容赦はしない。
(エル。サポートまかせた)
《了解です。ますたー》
いろいろスキル試したかったし、あいつらには実験台になってもらおう。
ベルトに下げているムラクモの柄に手をかける。静かにムラクモを抜刀する。抜刀されたムラクモは太陽の光を反射して黒い刀身を輝かせた。
「なんだお前のところの剣は黒く塗るのが流行ってんのか?」
笑っている。俺のムラクモを笑った。俺はそんな奴らが許せない。ティナに手を出そうとした奴をぼこぼこにする。俺は、そう決めた。
「御託はいいから来いよ」
そういうと剣を持った男が突進してきた。その突進に合わせて後ろの奴から矢も飛んでくる。
矢はまっすぐ俺のところへ、よけると周りが危ないのでムラクモでたたき切る。
ムラクモを逆手に持ち替え、刀の柄で剣を持った男の腹を抉るように突いた。
最初から殺したりする気はない。殺すと後々厄介だ。気絶程度で終わらせるつもりだ。
くそみたいなやつらだが、こいつらはまだ、盗賊みたいなやつら以外の人を殺していないだろうからな。
男たちは、今の状況に納得できないのかしっかりそれぞれの武器を構えなおした。弓の奴は次を打とうと矢を取り出す。
『焼き尽くせ。ファイアボール』
だが、次に俺に飛んできたのは矢ではなく火の玉だった。
サッカーボールぐらいのサイズの火の玉が俺めがけて一直線に飛んでくる。
こんな街中で平然と魔法を放つか、けが人が出たらどうするつもりだ。
《避けると後ろの人にあたります。斬ることを進めます》
(ちょっと待て、あれ、魔法って斬れるの?)
《魔法には大体、核が存在しています。それを切れば魔法は乱れ、その状態を維持できなくなります。ただしこれは飛んでくるものや小規模のものに限ります。その火の玉は切っても、爆発などはしないので大丈夫です》
(わかったやってみる)
まぁ、物は試しだよな
まっすぐ飛んでくる火の玉に対し、俺は一度刀を鞘へしまう。深く腰を落として刀の柄に手をかける。
そしてまっすぐ飛んでくる火の玉の中心を居合で切る。火の玉は形状を維持できず霧散し、火は俺のもとへ届くことはなかった。
(魔法の使い方を教えてくれ)
《今使えるのは闇ですね。一番簡単なのはさっきと同じボールをイメージして闇を形成するのです》
火を居合で切り裂いた後、エルに魔法に関することを聞き、目標を定めまっすぐ走る。まずは後衛の奴らからだ。
パクリでも何でもいいとりあえず魔法を使ってみたかった。
『闇に染まれ、ダークボール』
左手で闇の玉を生成。弓を狙って投げる。あまり魔力というものを込めなかったせいか、闇の玉はそこまで大きくもなく野球ボールぐらいのサイズだった。それでも弓は折れ使い物にならない状況になっていた。
《ますたーは魔力制御が得意のようですね》
そうなのか?イメージしやすい形を知っていたからだろうか。
イメージは魔法の源だそうだ。イメージと魔力があればいろいろなことができるらしい。ただいつもどちらかがかけてしまうようだ。
そして一気に俺に近づき、斧を振りかぶっているガイル、振り下ろされる斧を体を横にずらすだけで回避、今はガイルを無視して魔法使いのもとへ、剣の奴と同様、柄を腹にめり込ませると、魔法使いは意識を失った。
弓の奴は今の状況を理解し、ガイルを見捨て逃亡。盗賊みたいに追いかけて殺す必要はないから無視だ。むしろ変な手間がかからなくて助かる。
勿論最後に残ったのは、ガイル。いや残しておいたが正しい。主犯はあいつだ、ただの気絶じゃ許さない。
(エル、スキルの妖術はどうすれば使える?)
《基本魔法と一緒ですが、主に幻を見せたりする方法が多いです》
妖術かイメージ、イメージ。
俺はイメージを定着させると刀を構え一気にガイルに向かい走り出す。
『蝶は火を纏い舞え!火蝶』
スキルや魔法を発動させるための詠唱を行い、最後のキーワードを発する。ガイルのすぐそばに一匹の蝶が生まれる。そのあとに続くかのように数匹の蝶がガイルのあたりを舞った。ガイルはいまの状況がわからず困惑する。そして一匹の蝶が斧を持ってる手に触れるとその蝶は燃えた。
《スキル:火属性魔法を取得》
エルの声が頭に響く、なぜかこのタイミングで、魔法を習得したらしい。
手が燃え、驚き斧を落とすガイル。1匹の蝶が燃えるとそのあとに続くように3匹の蝶がガイルに迫る。
それらを避けようとしたガイルにサッと近づき、ガイルが間合いに入った瞬間、俺刀の柄に触れた。
俺が行ったのはただそれだけだ。だが、ガイルは膝をつき口から泡を吹いている。きっと、本当に切られると、錯覚したのだろう。俺はそのちょうど良い高さにある頭を回し蹴りで吹っ飛ばした。
俺の圧勝だった。
俺の話を聞き終わったギルマスは、誰かを呼ぶように手招きをする。
するとさっきの受付嬢が後ろから現れた。そして俺たちに3枚のカードを渡してくる1枚はティナ、後の2枚は俺に渡される。
「それに一滴血を垂らしてください」
左の親指を口で噛み傷をつける。そこから出てくる血を2枚のカードに垂らした。ティナも俺に見習って指を切り、血を垂らす。するとカードに文字が浮かび上がってきた。
『ユウ・ツキカゲ
性別 :男
種族 :人種
ランク:F
属性 :闇
PT :UNKNOWN』
と簡潔に書かれていた。こっちがギルドカードみたいだ。もう一つの方にも血を垂らす。するとこちらにも文字が浮かび上がる。
『UNKNOWN
ランク:F
所属:ユウ・ツキカゲ ◎
ティナ・アカーシャ』
こちらも簡潔に書かれていた。俺が確認すると2枚とも消えていった。ステータスカードと同じように突然目の前から消えたのだ。
「2枚とも消えたが?」
「あとは頭の中でギルドカード、パーティでそれぞれ思い浮かべたら対応したものが出てくるはずだよ」
言われたとおりに頭の中にカードを思い浮かべる。するとカードが俺の右手の上に出てくる。
「消したかったらカードを握ればいいよ」
握ってみる。紙をくしゃくしゃにまとめるように、ぎゅっと。すると手のひらからカードは消えていた。
俺の確認が終わると、ティナの方はもう終わっていた。そして俺の腕を掴むと、こっちに来いと言わんばかりに引っ張ってくる。
「指を見せてください。すぐ直しますから」
「いやこれぐらい」
「み・せ・て・く・だ・さ・い!」
そう言ってもティナはまっすぐ俺を見る。これはどうやら折れなさそうだ。これぐらいの傷はどうってことないんだがな。素直に俺の方が折れることにしよう。
「わかったよ」
そう言って左手をティナへ差し出す。差し出した手を自分の方へと引き寄せるティナ、それは勿論俺自身を引き寄せるのと同義なわけで、自然と体が密着してしまう。そんなことは気にしていないかのようにティナは詠唱を始めた。
『光よ癒せ。ヒール』
詠唱が終わり、俺の左手が暖かい光に包まれる。光がなくなり、左手を見るとさっきまであった傷は残っていなかった。
その一部始終を見ていたギルマスから、回復し終わったのを見て、笑いながら声をかけられる。
「君たちは仲がいいね、恋人同士なのかい?」
「いや、違うな。なんていったって俺とティナが知り合ったのは2日前だぞ?」
「それにしてはずいぶんと仲がいいと思うけど、もしかして……」
いきなりギルマスは口ごもる。ティナはというと、ギルマスから恋人という単語を聞いてから再起不能状態になっていた。
こいつらは、なんなんだ。
しばらくするとニヤニヤしながら、こんなことを言ってくるのだ。
「これは僕から言うべきことではなさそうだね。まぁ二人への要件はこれで終わりだよ」
この世界の男どもは、人のことを見てニヤニヤするのが好きなのか?やめてくれ、イライラする。俺の方ももう、ようはない。
「わかった」
そういってソファーから立ち上がり部屋を出ようとする。ティナも俺のあとに続く。
「僕の名前はヘイル。ヘイル・バーナーだ。君たちはこれから活躍しそうだ。何かあったら僕を頼ると言い、できる限りのことはしてあげるよ。これからよろしく」
「ああ、何かあったら頼む」
手短く返答し、応接部屋を出て行った。
部屋を出て向かった先はさっきの受付だ。今日の目標は簡単なクエストを受けることだ。とりあえず、明日のための肩慣らしだ。
俺は、クエストを受けるために受付嬢に話しかける。
「俺のランクで受けれるクエストはあるか?。出来れば討伐系のクエストがいい」
そう言ってギルドカードをテーブルの上に置く。
「Fランクですね。受けれるのはEランクまでのクエストで、今受けれるのでおすすめはゴブリン討伐などはどうでしょう?」
「わかった。じゃあそれで頼む」
俺がクエストを決めると受付嬢が詳しく説明をしてくれる。
「この町を出て森の方に生息しているゴブリンの討伐です。数は5体、まぁ、ないとは思いますが10体倒した場合はこのクエスト2回分の報酬になります。ちなみにこのクエストの報酬は大銅貨5枚です」
何かを操作すると、俺にカードを返す。
返ってきたカードには、パーティの下にクエストの項目が追加されていた。
「クエスト:ゴブリンの討伐0/5」
倒せば換算されていくらしい。パーティの方のカードにもクエストの項目が追加されていた。もちろんティナの方のカードにもだ。
「まだ成り立てのようですし、とりあえず死なないようにだけ気を付けてください。モンスターの情報はギルド内の本棚に並べてありますのでご覧ください」
《ますたー、モンスターのある程度の情報は私が解析しますので大丈夫です》
(わかったよ。助かる)
受付を終えギルドを出ようとする。俺のあとにはティナがついてきている。周りが俺に視線を集める。やはり、黒髪というのは、この世界では人の目を引くようだ。
「おいおい、あいつらなりたてのくせにゴブリン討伐に行くらしいぞ」
「どうせ、強がってんだろ」
「おっあの女可愛いじゃん」
「ねぇねぇ、君俺らとパーティ組まない?」
何やらめんどくさい4人の男たちが絡んできた。どうやらティナがほしいらしい。そいつらはティナに声をかけるが、
「いえ、私はユウ様と組んでいるので、ご遠慮します」
「様付とかお前何様だ? いいからこいよ!」
そう言ってティナの手をつかもうとするが、そんな簡単に下賤な男をティナに触れさせるわけがない、俺がティナと男の間に割って入る。俺が割り込むと、
「これは俺のだ。その下賤な手でティナに触ろうとするな」
そういうとリーダーっぽいのが前に出てくる。どうやら俺の発言が気に食わないらしい。
当人のティナはというと、後ろのほうが赤くなってるが無視だ無視。
「なめてんじゃねーぞ餓鬼が。俺がだれかわかってんのか」
「誰?」
素で聞いてあげた。この町に来たばっかりなのに知るわけがない。
だが男の顔は真っ赤に染まっていき。怒りが表情に出る。
「俺はCランクのガイルだぞ! おい、餓鬼表出ろや」
俺に、そう言って先にギルドから出ていく4人組。周りはこの状況に唖然としている。
「なんなんだ、あいつらは」
俺がそうため息交じりつぶやくと野次馬から情報があった。
「あいつらはここら辺で粋がってるやつらさ、だが強さは本物。伊達にCランクじゃないってことさ、あんたも悪いことはいわないから謝っときな」
嫌だよ、なんであんなのに謝らなきゃいけない。俺がどれだけ動けるか、試したかったし丁度いいかな。
俺も男のあとに続き外に出る。ギルドの前は結構スペースもあり十分動けそうだ。
俺が4人の男と対峙するといううわさが広まり、周りからも人がちらほら集まってきていた。
「はっ出てきたな俺様が直々に相手してやるよ」
「あーそういうのいいから4人で来なよ」
こんなのと一人一回。計四回とかめんどくさい。それなら一気に相手をした方が楽だ。生憎と。この世界に来てから、力が有り余ってる。ストレス発散にもなるしな。
俺の対応に4人ともキレたのか全員が武器を取り出す。
斧に、剣と盾、杖に弓バランスは良さそうな構成だった。
「お前を殺ってから、俺らがそこの女もらっていってやるよ」
そう言いながら4人は汚い笑い声をあげる。俺は、今イライラしている。あのニヤニヤしている奴らに思ったイライラとは違う。俺は敵意を見せる物に容赦はしない。
(エル。サポートまかせた)
《了解です。ますたー》
いろいろスキル試したかったし、あいつらには実験台になってもらおう。
ベルトに下げているムラクモの柄に手をかける。静かにムラクモを抜刀する。抜刀されたムラクモは太陽の光を反射して黒い刀身を輝かせた。
「なんだお前のところの剣は黒く塗るのが流行ってんのか?」
笑っている。俺のムラクモを笑った。俺はそんな奴らが許せない。ティナに手を出そうとした奴をぼこぼこにする。俺は、そう決めた。
「御託はいいから来いよ」
そういうと剣を持った男が突進してきた。その突進に合わせて後ろの奴から矢も飛んでくる。
矢はまっすぐ俺のところへ、よけると周りが危ないのでムラクモでたたき切る。
ムラクモを逆手に持ち替え、刀の柄で剣を持った男の腹を抉るように突いた。
最初から殺したりする気はない。殺すと後々厄介だ。気絶程度で終わらせるつもりだ。
くそみたいなやつらだが、こいつらはまだ、盗賊みたいなやつら以外の人を殺していないだろうからな。
男たちは、今の状況に納得できないのかしっかりそれぞれの武器を構えなおした。弓の奴は次を打とうと矢を取り出す。
『焼き尽くせ。ファイアボール』
だが、次に俺に飛んできたのは矢ではなく火の玉だった。
サッカーボールぐらいのサイズの火の玉が俺めがけて一直線に飛んでくる。
こんな街中で平然と魔法を放つか、けが人が出たらどうするつもりだ。
《避けると後ろの人にあたります。斬ることを進めます》
(ちょっと待て、あれ、魔法って斬れるの?)
《魔法には大体、核が存在しています。それを切れば魔法は乱れ、その状態を維持できなくなります。ただしこれは飛んでくるものや小規模のものに限ります。その火の玉は切っても、爆発などはしないので大丈夫です》
(わかったやってみる)
まぁ、物は試しだよな
まっすぐ飛んでくる火の玉に対し、俺は一度刀を鞘へしまう。深く腰を落として刀の柄に手をかける。
そしてまっすぐ飛んでくる火の玉の中心を居合で切る。火の玉は形状を維持できず霧散し、火は俺のもとへ届くことはなかった。
(魔法の使い方を教えてくれ)
《今使えるのは闇ですね。一番簡単なのはさっきと同じボールをイメージして闇を形成するのです》
火を居合で切り裂いた後、エルに魔法に関することを聞き、目標を定めまっすぐ走る。まずは後衛の奴らからだ。
パクリでも何でもいいとりあえず魔法を使ってみたかった。
『闇に染まれ、ダークボール』
左手で闇の玉を生成。弓を狙って投げる。あまり魔力というものを込めなかったせいか、闇の玉はそこまで大きくもなく野球ボールぐらいのサイズだった。それでも弓は折れ使い物にならない状況になっていた。
《ますたーは魔力制御が得意のようですね》
そうなのか?イメージしやすい形を知っていたからだろうか。
イメージは魔法の源だそうだ。イメージと魔力があればいろいろなことができるらしい。ただいつもどちらかがかけてしまうようだ。
そして一気に俺に近づき、斧を振りかぶっているガイル、振り下ろされる斧を体を横にずらすだけで回避、今はガイルを無視して魔法使いのもとへ、剣の奴と同様、柄を腹にめり込ませると、魔法使いは意識を失った。
弓の奴は今の状況を理解し、ガイルを見捨て逃亡。盗賊みたいに追いかけて殺す必要はないから無視だ。むしろ変な手間がかからなくて助かる。
勿論最後に残ったのは、ガイル。いや残しておいたが正しい。主犯はあいつだ、ただの気絶じゃ許さない。
(エル、スキルの妖術はどうすれば使える?)
《基本魔法と一緒ですが、主に幻を見せたりする方法が多いです》
妖術かイメージ、イメージ。
俺はイメージを定着させると刀を構え一気にガイルに向かい走り出す。
『蝶は火を纏い舞え!火蝶』
スキルや魔法を発動させるための詠唱を行い、最後のキーワードを発する。ガイルのすぐそばに一匹の蝶が生まれる。そのあとに続くかのように数匹の蝶がガイルのあたりを舞った。ガイルはいまの状況がわからず困惑する。そして一匹の蝶が斧を持ってる手に触れるとその蝶は燃えた。
《スキル:火属性魔法を取得》
エルの声が頭に響く、なぜかこのタイミングで、魔法を習得したらしい。
手が燃え、驚き斧を落とすガイル。1匹の蝶が燃えるとそのあとに続くように3匹の蝶がガイルに迫る。
それらを避けようとしたガイルにサッと近づき、ガイルが間合いに入った瞬間、俺刀の柄に触れた。
俺が行ったのはただそれだけだ。だが、ガイルは膝をつき口から泡を吹いている。きっと、本当に切られると、錯覚したのだろう。俺はそのちょうど良い高さにある頭を回し蹴りで吹っ飛ばした。
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彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
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