妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~

創伽夢勾

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2章:神の種と迷宮都市

46:契約書と怒り

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 訓練場に着くと、後ろからぞろぞろと人の群れが押し寄せてくる。
 野次馬というやつだろう。まぁ、もともと能力は見せる気はないから大丈夫だけど。
 俺は訓練場の真ん中へと向かう。俺のあとについて来るティンクル。ティナとフロン、それとさっきの女の子は、野次馬どもと少し離れたところで観戦するようだ。野次馬の中にはフェルやテクルもいた。

「準備はいいか?」

 そう俺に対して聞いて来る。ティンクルの獲物は槍らしい。背中から身丈より長い槍を取り出した。

(エル。軽く解析しておいて)
《了解です》

 俺はエルに解析を頼んだ。人前だと瞳が使えないのはでかいな。
 そして俺はティナの方を向いた。すると視線で、

(この子貰ってどうするんですか)

 と聞こえ……意思疎通が飛んできていた。
 俺はさっき、俺がもらうといった瞬間の、女の子の笑顔を見逃してはいない。きっとこいつには何かあると踏んでいる。

(どうするも何も、その子の好きにさせる。他のところに行きたいでも、こいつのところに戻るでもな?)

 俺がそういうと、少し安心した様なため息が聞こえた。まぁ、敢えて言ってはないが、ついてきたいと言っても拒否るつもりもない。

《解析完了。スキルは槍術と投擲術、縮地、契約術を確認。やはり近接タイプのようです。強さとしてはBランク程度、ますたーなら問題ないかと》

 確かにこの程度なら大丈夫か。てか契約術って?

「俺も準備はいいぞ」

 俺がそういうと、ティンケルは一枚の紙を取り出し、自分の血を垂らす。そして俺にも同じことをするように促してくる。

「これは?」
「これは契約書。お互いにつけた約束を守らせるためのものだ。内容をしっかり読んで、お前も賭け金を乗せろ、そして血を垂らして完了だ」

 俺は紙に賭け金を書いた。
 契約書に書かれた内容はこうだ。

『お互いに、殺し合いは無しの真剣勝負を行い、勝った方に賭け金を渡す
 ティンケル:フィリアの譲渡
 ユウ:ティナ・フロンの譲渡』

 そしてティンケルに書いた内容を見せ、血を垂らした。すると紙が消え、お互いの首に首輪のような紋様が浮かぶ。

「それは約束を反故しないためのものだ。書かれた内容を守らないとその紋様が首を絞めていき、時期に死ぬ」

 なるほど、面白そうなスキルだ。

(エル)
《ただいま、解析しています》

 最近、エルが俺が言わずとも、俺のして欲しいことをしてくれている気がする。まぁ、魔導書としてただ解析したいだけかもしれないが。

「それじゃあ、始めるか」

 俺がそういうと、いつの間に近くに来ていた、テクルが声をあげる。

「それじゃあ、仲介人は不肖、工房長のテクルがさせてもらうぜ」

 ほんといつの間に来てたんだよ。てかのりのりだな。
 テクルの声を聞き、ティンクルは槍を構えた。
 俺は、刀の柄に手を置いてるだけだ。そんな俺を見たのか、ティンケルは驚いた表情を見せた。そしてその表情はだんだん怒りへと変わっていく。

「お前ふざけてんのか?」
「いやこれが、俺のスタイルだ。気にするな」

 俺がそういうとテクルは興味深そうに、俺を見るが俺が目線で「早くしろ」と訴えると、慌てたように開始の合図を声に出した。

「これより、ユウ対ティンケルの賭け試合を行う。はじめ!」

 テクルの合図と同時にティンケルが俺へと猛スピードで迫ってくる。

『縮地』

 ティンケルがスキルを発動すると、さらに加速し、俺の懐まで迫ってくる。そのまま槍を突き出してくる。
 だがその行動はすでに見えている。俺は横に体をずらし刀を抜刀、槍を打ち上げる。腕全体が上に持っていかれ、お腹ががら空きなのをいいことに蹴りを打ち込む。
 そのまま、ティンケルは後ろへと飛んでいくが、さすがBランク相当、うまく受け身を入れて無事に着地する。

「俺はこれでもBランク手前だぞ、お前なにもんだよ」
「しがない冒険者だ」

(エル。縮地の解析を優先)
《了解しました。ますたー》

 そして、抜刀されたムラクモはその黒い刀身を輝かせ、周囲の目を奪った。

〝こんなに見られると恥ずかしい〟

 そういえば、鞘を服にしているムラクモは抜刀されたら裸?

〝そんなわけない。あれはあくまで現実の肉体、刀身とは関連してない〟
《戦っている状態で、こんなことを考えるますたーの頭はどうなってるんでしょう》
“ボクはただの馬鹿だと思うなぁ”

 お前ら、言いたい放題だな。
 と、頭の中で馬鹿やっていると、いつの間にか体制を直していた、ティンケルが迫ってきていた。

「おっと、危な」
「戦いの最中によそ見とは感心しないな」

 俺は体を横へ下へとずらし、槍を躱していく。槍は突くことが基本の武器だが、こいつは突いてないでを繰り返し織り交ぜてくる。流石、対人戦に慣れてやがる。
 俺は、もうこいつが何をして来たかをある程度把握している。
 だから、俺は決めた。容赦しないと。
 そして槍と刀のつばぜり合いの中俺はティンケルに声をかけた。

「なぁ、お前正々堂々とか言って、他人の女を契約書で奪って、奴隷化して楽しいか?」
「なっ?」

 俺の言葉を聞いたティンケルの表情が変わる。俺はできるだけ大きな声で言ったため、ティナたちにも聞こえている。そしてティナは横にいるフィリアに目を向けた。そのフィリアの顔は、俺に向かっていて「どうして?」と訴えていた。

「しかも、お前は契約書の真剣勝負という言葉を利用して、負けそうな相手に卑怯な手を使い、契約そのものを破棄させてたんだろ? どうせこの野次馬の中にも混じってるんだろ? 協力者ってやつが」

 俺の推理が図星だったようで、驚いているティンケルだが、槍を構えなおし俺にこう言う。

「それがどうした」と

 俺の感情が、怒りが、頂点に達した。

「ゲス野郎が、もう容赦しねぇ」

 そして俺は力を使うことを決意した。
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