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巫女の里
88:じゃんけん・ぽん!
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俺たちはオルディナの町に着くと、検問をくぐる前に盗賊を引き渡し、そのまま伯爵家へと向かった。いつもなら俺たちを止めていた兵士たちも俺がランクAのギルドカードを提示すると、何も言わずに通してくれた。
本当。まだこの世界に来てから余りたっていないのにすごく懐かしい。
この短い時間にいろいろあり過ぎたのだ。
「懐かしいなここも」
「そうですね。すごく懐かしい気分です」
俺とティナが館を眺める。
「ここはどこですか?」
俺に向かってフィリアが聴いて来る。
「ここはティナの身内の家、そしてこの町を仕切ってる一番お偉いさんの家」
「えっ?」
驚いたような表情で、フィリアとフロンはティナを見る。
その時、館の中から一人の女の人が出てくる。その顔には見覚えがあった。
たしか、伯爵の秘書のラーナだったかな?
「あら、ティナ様ではないですか。それにユウ様も」
「お久しぶりです。ラーナさん」
ティナはラーナに対してペコリと頭を下げる。ラーナもそれに返すように礼を返す。
「なぜ? オルディナへ? それにそちらの方々は……」
ラーナはティナと俺を見た後。フィリアとフロンに目を向ける。
「私はご主人様に使えております。1番奴隷のフロンと申します」
「私は主様の従者。フィリアと言います」
さすがは元お姫様。フロンはそつなく挨拶する。フィリアもそれを見習い、ぎこちないながらもあいさつする。
するとラーナは眼鏡を右手の中指でくいっとあげる。
《対象よりスキル:心理の発動を確認しました》
なるほど、どうやらフロンとフィリアが行ったことの真偽を確かめてるようだ。
「申し訳ありません。どうやら本当のようですね。それでは前の応接室へどうぞ。伯爵に向かうよう伝えます。私はギルドに用事があるので、それでは」
そう言ってラーナは兵に門を開けさせ、伯爵に伝令を頼む。そしてそのままラーナは俺たちが来た道を歩いていった。
俺たちは開いた門を進み、応接室へ向かう。
扉を開けるとそこにはすでに伯爵がいた。
俺と目が合うと伯爵は立ち上がった。
「久しぶりだな。ティナもユウも」
「あぁ、久しぶりだ」
俺たちはソファーの前まで進む。伯爵に座るように促され、俺とティナはソファーに座った。フロンとフィリアは俺たちの両脇に立った。どうやら座る気はないようだ。ノワールは疲れたのか、ティナの膝の上で眠っている。
この伯爵なら、奴隷ぐらい気にしないと思うが、そこはフロンが気にするのだろう。
「さて、ユウ。また盗賊に襲われたか」
「まぁな、ここの森はよく出るのか?」
「そりゃ、注意の看板が出るくらいにはの」
つまり、よく出るってことだ。
「そちらの二人は新しい仲間と考えて良いか?」
「あぁ、構わない」
俺はそっとテーブルの上にパーティカードを置く。
『UNKNOWN
ランク:B
所属:ユウ・ツキカゲ ◎
ティナ・アカーシャ
フロン・フィール(奴隷)
フィリア・フィルナール
従魔:ノワール』
それを見た伯爵は目を見開いた。
「もうパーティランクがBランクじゃと? ユウお前今ランクは何じゃ?」
「俺はAだが?」
「私とフロンがBで、フィーがCでしたよね?」
ティナの言葉にフロンとフィリアは頷いた。
平均でBランクだ。
「こ、こんな短時間に、ユウだけならまだしもティナまで、ユウお前はこの子たちにどういう鍛え方をしたんだ?」
「俺は戦いの基礎を教えただけだ。後はティナにはレジーナ。フロンにはラースが師匠として面倒見てくれてたな。フィーは元々強かった。としか言えん」
「ま、まさか、王国の騎士団の団長と副団長か!?」
伯爵のその言葉にティナとフロンは頷いた。
「はぁ~、もう何も言えんわ。で、もうそっちはいい。ここに立ち寄った理由は?」
俺は王都であったこと、迷宮都市の不可解な魔物奇襲事件。それと慣例性があるであろう。ノワールの話。今は巫女の里を目指していること。それらを掻い摘んで説明した。
「なるほど、それで? いつ街を出る?」
「明日にはもう出発する予定だ」
「そうか、何かあったらいつでも頼れ。できる限りのことで力を貸そう」
「助かる」
俺たちはそう言って屋敷を後にした。
俺たちが向かうは俺とティナが泊まっていた。ノルンの宿だ。
俺が宿のドアを開くと、見たことのある女性が俺たちを出迎えた。
「あら、お客さんお久しぶりですね。もしかしてお泊りですか?」
「あぁ、一泊頼む。飯付きで」
俺は銅貨を手渡す。
「もしかしてこの人数で? またベッド1ですか?」
「んなわけあるか。部屋は一つでいい。ベットは4つで」
「すみません。今空いてるのは2人部屋が二つなんですよ」
「ならそれでいい、いいよな?」
俺は振り返り、ティナたちに問う。するとなぜか、3人は睨みあっていた。
そして、おもむろに右手を取り出す。
「「「じゃんけん、ぽん!」」」
どうやら、部屋割りを決めているらしい。
「「「あいこでしょ!」」」
で、どうやら結果が出たようだ。ティナがパー。フロンもパー。フィリアはグーだ。
そして、勝ったはずの二人より、負けたフィリアの方が喜んでいた。
ティナとフロンは肩を落とし、俺たちは女性に案内され、部屋に向かった。
俺たちは部屋にものを置いて、ご飯を食べるため下に降りてきた。
俺には棺のスキルがあるため、俺たちの旅に大きな荷物はない。それぞれの武器ぐらいだ。
俺たちはご飯を食べ、お互いの部屋に戻った。
ちなみにノワールはティナの方へ行った。最近はティナの膝がお気に入りらしい。
俺は明日に備え、早めに寝る準備を進めた。
本当。まだこの世界に来てから余りたっていないのにすごく懐かしい。
この短い時間にいろいろあり過ぎたのだ。
「懐かしいなここも」
「そうですね。すごく懐かしい気分です」
俺とティナが館を眺める。
「ここはどこですか?」
俺に向かってフィリアが聴いて来る。
「ここはティナの身内の家、そしてこの町を仕切ってる一番お偉いさんの家」
「えっ?」
驚いたような表情で、フィリアとフロンはティナを見る。
その時、館の中から一人の女の人が出てくる。その顔には見覚えがあった。
たしか、伯爵の秘書のラーナだったかな?
「あら、ティナ様ではないですか。それにユウ様も」
「お久しぶりです。ラーナさん」
ティナはラーナに対してペコリと頭を下げる。ラーナもそれに返すように礼を返す。
「なぜ? オルディナへ? それにそちらの方々は……」
ラーナはティナと俺を見た後。フィリアとフロンに目を向ける。
「私はご主人様に使えております。1番奴隷のフロンと申します」
「私は主様の従者。フィリアと言います」
さすがは元お姫様。フロンはそつなく挨拶する。フィリアもそれを見習い、ぎこちないながらもあいさつする。
するとラーナは眼鏡を右手の中指でくいっとあげる。
《対象よりスキル:心理の発動を確認しました》
なるほど、どうやらフロンとフィリアが行ったことの真偽を確かめてるようだ。
「申し訳ありません。どうやら本当のようですね。それでは前の応接室へどうぞ。伯爵に向かうよう伝えます。私はギルドに用事があるので、それでは」
そう言ってラーナは兵に門を開けさせ、伯爵に伝令を頼む。そしてそのままラーナは俺たちが来た道を歩いていった。
俺たちは開いた門を進み、応接室へ向かう。
扉を開けるとそこにはすでに伯爵がいた。
俺と目が合うと伯爵は立ち上がった。
「久しぶりだな。ティナもユウも」
「あぁ、久しぶりだ」
俺たちはソファーの前まで進む。伯爵に座るように促され、俺とティナはソファーに座った。フロンとフィリアは俺たちの両脇に立った。どうやら座る気はないようだ。ノワールは疲れたのか、ティナの膝の上で眠っている。
この伯爵なら、奴隷ぐらい気にしないと思うが、そこはフロンが気にするのだろう。
「さて、ユウ。また盗賊に襲われたか」
「まぁな、ここの森はよく出るのか?」
「そりゃ、注意の看板が出るくらいにはの」
つまり、よく出るってことだ。
「そちらの二人は新しい仲間と考えて良いか?」
「あぁ、構わない」
俺はそっとテーブルの上にパーティカードを置く。
『UNKNOWN
ランク:B
所属:ユウ・ツキカゲ ◎
ティナ・アカーシャ
フロン・フィール(奴隷)
フィリア・フィルナール
従魔:ノワール』
それを見た伯爵は目を見開いた。
「もうパーティランクがBランクじゃと? ユウお前今ランクは何じゃ?」
「俺はAだが?」
「私とフロンがBで、フィーがCでしたよね?」
ティナの言葉にフロンとフィリアは頷いた。
平均でBランクだ。
「こ、こんな短時間に、ユウだけならまだしもティナまで、ユウお前はこの子たちにどういう鍛え方をしたんだ?」
「俺は戦いの基礎を教えただけだ。後はティナにはレジーナ。フロンにはラースが師匠として面倒見てくれてたな。フィーは元々強かった。としか言えん」
「ま、まさか、王国の騎士団の団長と副団長か!?」
伯爵のその言葉にティナとフロンは頷いた。
「はぁ~、もう何も言えんわ。で、もうそっちはいい。ここに立ち寄った理由は?」
俺は王都であったこと、迷宮都市の不可解な魔物奇襲事件。それと慣例性があるであろう。ノワールの話。今は巫女の里を目指していること。それらを掻い摘んで説明した。
「なるほど、それで? いつ街を出る?」
「明日にはもう出発する予定だ」
「そうか、何かあったらいつでも頼れ。できる限りのことで力を貸そう」
「助かる」
俺たちはそう言って屋敷を後にした。
俺たちが向かうは俺とティナが泊まっていた。ノルンの宿だ。
俺が宿のドアを開くと、見たことのある女性が俺たちを出迎えた。
「あら、お客さんお久しぶりですね。もしかしてお泊りですか?」
「あぁ、一泊頼む。飯付きで」
俺は銅貨を手渡す。
「もしかしてこの人数で? またベッド1ですか?」
「んなわけあるか。部屋は一つでいい。ベットは4つで」
「すみません。今空いてるのは2人部屋が二つなんですよ」
「ならそれでいい、いいよな?」
俺は振り返り、ティナたちに問う。するとなぜか、3人は睨みあっていた。
そして、おもむろに右手を取り出す。
「「「じゃんけん、ぽん!」」」
どうやら、部屋割りを決めているらしい。
「「「あいこでしょ!」」」
で、どうやら結果が出たようだ。ティナがパー。フロンもパー。フィリアはグーだ。
そして、勝ったはずの二人より、負けたフィリアの方が喜んでいた。
ティナとフロンは肩を落とし、俺たちは女性に案内され、部屋に向かった。
俺たちは部屋にものを置いて、ご飯を食べるため下に降りてきた。
俺には棺のスキルがあるため、俺たちの旅に大きな荷物はない。それぞれの武器ぐらいだ。
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