324 / 495
葉月の子育て編
愛娘たちとムーンリーフ
しおりを挟む
春の訪れに歓喜する木々のざわめき――
――ではなく。
この日のムーンリーフで早朝から買物客を喜ばせているのは、三人の看板娘たちだった。
「いらしゃいせー」
元気に母親の真似をする朱華の舌足らずな挨拶に、年配のご婦人が嬉しそうな皺を刻む。
頭を撫でられる朱華も笑顔で、実に楽しそうだ。
きちんと歩けるようになり、もう少ししたら走れるのではないかという穂月も、懐いている朱華の後ろをちょこちょこと付いて回る。
その様子がとても可愛らしく、やはり朱華同様にお客さんを喜ばせている。
「穂月ちゃん、大きくなったわねえ」
「はい。この夏でもう二歳になります」
「あらあら。それじゃ私も歳をとるわけだわ」
「アハハ。菅野さんはまだ若いですよ」
ご近所さんも多いので、常連客の名前は大体葉月の頭に入っている。
お客様と呼ぶより、名前を呼んだ方が常連客は喜んでくれる。
好美曰く、お客さん側でも特別感が増すのではないかということだ。
「皆、悪さもしてないみたいで良かったー」
常連客を見送ったあと、店内できょろきょろする愛娘たちにほっこりすると同時に、葉月は心から安堵した。
追加のパンを並べるためと、店内の様子を見るために顔を出してみたのだが、どうやら心配は杞憂に終わったようである。
「実希子ちゃんの突飛なアイデアには苦労するわね」
レジで会計はパンの袋詰めを行いながら、子供たちの動きもチェックしなければならない尚はややお疲れ気味だった。
発端は彼女の言った通り、すでに配送に出発している実希子の言葉だった。
『子供たちも大きくなってきたし、ちょっとだけでも店に出してみたらどうだ? 意外と客を呼び込むかもしれないぞ』
子供嫌いのお客さんもいるので一概にその通りとは言えないのだが、他ならぬ好美が少しだけ試してみようと賛同した。
「もしかしたら好美ちゃんも、朝に子供の面倒を見るのが疲れてたのかしら」
「まあ……好美ちゃんの部屋、事務所兼休憩所兼託児所みたいになってるもんね」
「考えてみれば、一番の功労者よね」
なんて感謝している間にも、続々とお客さんはやってくる。
「いららー」
朱華みたいに振舞いたかったのか、笑顔の穂月が両手を挙げて大はしゃぎする。
三十歳をとっくに過ぎた葉月には眩しすぎる制服姿の女子が、途端に大きな目を輝かせた。
「可愛いー!」
「わー、葉月さんの娘さんですか?」
声に惹かれて、店の前の通りを歩いていた人たちがぞろぞろと集まってくる。
売上に繋がるかは微妙なところだが、話題になっているのは間違いない。
「まだ子供だから、SNSとかに上げるのだけは勘弁してね」
「はーい!」
葉月の注意に、元気の良い返事が返ってきた。
中心地にいるのは南高校のソフトボール部員で、実希子がたまにだが、またコーチに復帰した関係上、顔見知りも増えている。
なにせ差し入れはほぼムーンリーフのパンなのだ。
部員たちが感謝して直接お礼を言いに来てくれたり、親御さんと一緒に買いに来てくれたりするので、仲良くなるのも早い。
人が集まりだすと、気になるのは世の常である。
野次馬も増えたところで、勢いよく制服に着替えたばかりと思われる好美が店に出てきた。
「葉月ちゃん! 試食の準備よ!」
*
カレードーナツやあんドーナツ。
ムーンリーフでも売れ筋のパンを小さく切り、急遽店前に用意した机に乗せる。
爪楊枝が刺さったパンは瞬く間にお皿から消えていき、美味しいという声が多数上がる。
「お昼用に少し買って行こうかしら」
「私もおやつ用に」
「太っても知らないよ」
「じゃあ、アンタはいらないの?」
「もちろん買うに決まってるじゃん」
男性は遠巻きに見たりするだけなので、子供の可愛らしさに引き寄せられてくれるのは女性が多い。
予想外の売上にはなってくれているが、このままでは不味い。
そう思った葉月は女性陣の相手を看板娘たち――というより尚――に任せ、両手にパンを抱えて店の外でため息をつきそうな男子高校生に声をかける。
「おはよう。いつものパンでいいのかな?」
「あっ! あざーっす」
「おはようございます」
調子の良さそうな茶髪の子やら、真面目そうな顔つきの子やら、色々な生徒が朝食代わりに買ってくれるのも朝の恒例だ。
けれどこれだけ女子が店前にわらわら集まっていたら、ナンパ目的で近づいては尚に睨まれている男性以外は、なかなか店舗で欲しい商品を物色できない。
「今日はなんか凄いっすね」
「うん。娘たちがいてね、お客さんが可愛がってくれてるんだ」
「あー……葉月さん、結婚してるんですもんね……」
「失恋したなら慰めてやろうか」
「ち、違うって!」
「アハハ。こんなおばさんにそれはないよー」
本気で言ったつもりだったのだが、そんなことはないと全力で否定されて戸惑わずにはいられない。
年齢を重ねて急に美容を気にし出した和葉の気持ちも、三十歳を過ぎてなんとなくわかるようになった葉月だが、無理に若作りをするつもりはなかった。
だからなのか、繰り返し褒められるとほんの少しだが嬉しくなる。
「ありがとう。でも、そういう誉め言葉は、いずれ本当に好きになる女の子に贈ってあげてね」
だが感情と好意は別物だ。
葉月が笑顔でそう言うと、心なしかガックリした様子で男子高校生は頷いた。
*
「ほー、そんなことがあったのか」
県内各地を回る和也に比べ、市内回りの実希子は戻るのも比較的早い。
昼過ぎ用の仕込みは葉月と茉優、それに遅れて出勤する和葉が担当するので、実希子はその間に使い終わった器具の清掃やメンテナンスをしてくれる。
そうして一段落着くと、今のように好美の部屋に集まって休憩を取る。
子供たちと外で遊んだりする場合は抜けだしたりもする。
毎日、好美の部屋でばかりだと、人の好い彼女もきっと息が詰まる。
「う好美ちゃんが素早く指示を出してくれたおかげで商機を逸しなくて良かったよ」
「さすが……と言いたいところなんだが、その好美はどうして難しそうな顔をしてるんだ? 穂月たちを客寄せに使ったことに罪悪感でも抱いてんのか? 好美にも人の心があったんだな」
「人を鬼か悪魔みたいに言わないで。それに子供たちを店頭に出すと発案したのは実希子ちゃんだったでしょう」
ハアとため息をついて、頭痛を堪えるようにこめかみをグリグリする好美。
「そうだったな。じゃあ何で喜んでないんだ?」
「喜んでるわよ。ただ……お昼の売上に影響しないか悩んでたの」
「ああ、そういうことね」
子供たちの昼食を、代表して見守ってくれていた尚が訳知り顔で頷いた。
いまだ理解できていない実希子は噛みつく――というほどではないが、それでも不満げに唇を尖らせる。
「一人だけで納得してんなよ。つーか、本当にわかってんだろうな」
「実希子ちゃんじゃあるまいし、当然でしょ。
いい? 確かに予想外の売上にはなったけど、購買者の大半は女子高生だったの」
「それのどこが問題なんだ? あっ、男子の売上が減ったってことか?」
「そこは葉月ちゃんが的確に対処してくれたから、問題ないわ。
好美ちゃんが気にしてるのは、本来昼に買う予定だった子たちが、単に朝に買っただけじゃないかってことよ」
「ほーん」
腕を組んで真面目そうな顔つきはしているが、その返事から実希子が理解していないのは明らかだ。
「つまり高校生に対する売上はトータルであまり変わらず、逆に私が声をかけ損なった、店に入れなかった本来のお客さんの分だけ損失を出したんじゃないかってことだね」
「うおっ、葉月までわかってんのか!」
「何、言ってるのよ。学生の頃から好美ちゃんは別格にしても、葉月ちゃんと柚ちゃんは成績上位者だったでしょ。
下位者で苦労した挙句、スポーツの力に頼ったのは私と実希子ちゃん」
「そんなに褒めるなよ」
「さすが成績下位者ね」
半眼で睨まれても、トレードマークのポニーテールをゆらゆら揺らす実希子はまったく動じない。
「それなら学校にも看板娘を連れてくか? パンを持たせて職員室に売り込みをかけるんだ」
「……確かに効果は絶大そうだけど、あまり繰り返すと悪感情を抱く先生も出てきかねないわね」
実希子の意見具申をやんわりと撥ね退け、しかし好美も効果的な対策は打ち出せず。
「とりあえず普段通りに売って、様子を見るしかないんじゃない」
店主らしくそうまとめた葉月は、それよりもと三人の愛らしい天使を見つめる。
「頑張って働いてくれた子供たちにお給料を払わないとね。茉優ちゃん」
「待ってましたぁ。デザートだよぉ」
普段より少なめの昼食の最後に、茉優が持ってきたのは甘いミルクに浸した食パンだった。
これならまだ一歳の二人も食べられるし、朱華も好物だ。
案の定、わあいと喜んでスプーンやら手掴みで食べ始める朱華と穂月。
しかし希は黙って実希子を見つめるばかり。
「もしかして、あまり手伝えなかったのを気にしてるのかしら」
目立っていた二人と比べて、基本的に希は眠そうに椅子に座っていただけだった。
愛想の欠片も見せなかったが、逆にそれがいいと言っていた女子高生も少なくなかったのだから人間は不思議である。
だが尚の呟きに、実希子は目を閉じて首を左右にゆっくり振った。
「こいつがそんな玉かよ。これは自分で食べるのを面倒臭がってやがるだけだ。まだ一歳児だってのに先が思いやられる」
そう言いながらも実希子が食べさせてやろうとする気配を見せると、真顔のまま希はすかさず口を開いた。
――ではなく。
この日のムーンリーフで早朝から買物客を喜ばせているのは、三人の看板娘たちだった。
「いらしゃいせー」
元気に母親の真似をする朱華の舌足らずな挨拶に、年配のご婦人が嬉しそうな皺を刻む。
頭を撫でられる朱華も笑顔で、実に楽しそうだ。
きちんと歩けるようになり、もう少ししたら走れるのではないかという穂月も、懐いている朱華の後ろをちょこちょこと付いて回る。
その様子がとても可愛らしく、やはり朱華同様にお客さんを喜ばせている。
「穂月ちゃん、大きくなったわねえ」
「はい。この夏でもう二歳になります」
「あらあら。それじゃ私も歳をとるわけだわ」
「アハハ。菅野さんはまだ若いですよ」
ご近所さんも多いので、常連客の名前は大体葉月の頭に入っている。
お客様と呼ぶより、名前を呼んだ方が常連客は喜んでくれる。
好美曰く、お客さん側でも特別感が増すのではないかということだ。
「皆、悪さもしてないみたいで良かったー」
常連客を見送ったあと、店内できょろきょろする愛娘たちにほっこりすると同時に、葉月は心から安堵した。
追加のパンを並べるためと、店内の様子を見るために顔を出してみたのだが、どうやら心配は杞憂に終わったようである。
「実希子ちゃんの突飛なアイデアには苦労するわね」
レジで会計はパンの袋詰めを行いながら、子供たちの動きもチェックしなければならない尚はややお疲れ気味だった。
発端は彼女の言った通り、すでに配送に出発している実希子の言葉だった。
『子供たちも大きくなってきたし、ちょっとだけでも店に出してみたらどうだ? 意外と客を呼び込むかもしれないぞ』
子供嫌いのお客さんもいるので一概にその通りとは言えないのだが、他ならぬ好美が少しだけ試してみようと賛同した。
「もしかしたら好美ちゃんも、朝に子供の面倒を見るのが疲れてたのかしら」
「まあ……好美ちゃんの部屋、事務所兼休憩所兼託児所みたいになってるもんね」
「考えてみれば、一番の功労者よね」
なんて感謝している間にも、続々とお客さんはやってくる。
「いららー」
朱華みたいに振舞いたかったのか、笑顔の穂月が両手を挙げて大はしゃぎする。
三十歳をとっくに過ぎた葉月には眩しすぎる制服姿の女子が、途端に大きな目を輝かせた。
「可愛いー!」
「わー、葉月さんの娘さんですか?」
声に惹かれて、店の前の通りを歩いていた人たちがぞろぞろと集まってくる。
売上に繋がるかは微妙なところだが、話題になっているのは間違いない。
「まだ子供だから、SNSとかに上げるのだけは勘弁してね」
「はーい!」
葉月の注意に、元気の良い返事が返ってきた。
中心地にいるのは南高校のソフトボール部員で、実希子がたまにだが、またコーチに復帰した関係上、顔見知りも増えている。
なにせ差し入れはほぼムーンリーフのパンなのだ。
部員たちが感謝して直接お礼を言いに来てくれたり、親御さんと一緒に買いに来てくれたりするので、仲良くなるのも早い。
人が集まりだすと、気になるのは世の常である。
野次馬も増えたところで、勢いよく制服に着替えたばかりと思われる好美が店に出てきた。
「葉月ちゃん! 試食の準備よ!」
*
カレードーナツやあんドーナツ。
ムーンリーフでも売れ筋のパンを小さく切り、急遽店前に用意した机に乗せる。
爪楊枝が刺さったパンは瞬く間にお皿から消えていき、美味しいという声が多数上がる。
「お昼用に少し買って行こうかしら」
「私もおやつ用に」
「太っても知らないよ」
「じゃあ、アンタはいらないの?」
「もちろん買うに決まってるじゃん」
男性は遠巻きに見たりするだけなので、子供の可愛らしさに引き寄せられてくれるのは女性が多い。
予想外の売上にはなってくれているが、このままでは不味い。
そう思った葉月は女性陣の相手を看板娘たち――というより尚――に任せ、両手にパンを抱えて店の外でため息をつきそうな男子高校生に声をかける。
「おはよう。いつものパンでいいのかな?」
「あっ! あざーっす」
「おはようございます」
調子の良さそうな茶髪の子やら、真面目そうな顔つきの子やら、色々な生徒が朝食代わりに買ってくれるのも朝の恒例だ。
けれどこれだけ女子が店前にわらわら集まっていたら、ナンパ目的で近づいては尚に睨まれている男性以外は、なかなか店舗で欲しい商品を物色できない。
「今日はなんか凄いっすね」
「うん。娘たちがいてね、お客さんが可愛がってくれてるんだ」
「あー……葉月さん、結婚してるんですもんね……」
「失恋したなら慰めてやろうか」
「ち、違うって!」
「アハハ。こんなおばさんにそれはないよー」
本気で言ったつもりだったのだが、そんなことはないと全力で否定されて戸惑わずにはいられない。
年齢を重ねて急に美容を気にし出した和葉の気持ちも、三十歳を過ぎてなんとなくわかるようになった葉月だが、無理に若作りをするつもりはなかった。
だからなのか、繰り返し褒められるとほんの少しだが嬉しくなる。
「ありがとう。でも、そういう誉め言葉は、いずれ本当に好きになる女の子に贈ってあげてね」
だが感情と好意は別物だ。
葉月が笑顔でそう言うと、心なしかガックリした様子で男子高校生は頷いた。
*
「ほー、そんなことがあったのか」
県内各地を回る和也に比べ、市内回りの実希子は戻るのも比較的早い。
昼過ぎ用の仕込みは葉月と茉優、それに遅れて出勤する和葉が担当するので、実希子はその間に使い終わった器具の清掃やメンテナンスをしてくれる。
そうして一段落着くと、今のように好美の部屋に集まって休憩を取る。
子供たちと外で遊んだりする場合は抜けだしたりもする。
毎日、好美の部屋でばかりだと、人の好い彼女もきっと息が詰まる。
「う好美ちゃんが素早く指示を出してくれたおかげで商機を逸しなくて良かったよ」
「さすが……と言いたいところなんだが、その好美はどうして難しそうな顔をしてるんだ? 穂月たちを客寄せに使ったことに罪悪感でも抱いてんのか? 好美にも人の心があったんだな」
「人を鬼か悪魔みたいに言わないで。それに子供たちを店頭に出すと発案したのは実希子ちゃんだったでしょう」
ハアとため息をついて、頭痛を堪えるようにこめかみをグリグリする好美。
「そうだったな。じゃあ何で喜んでないんだ?」
「喜んでるわよ。ただ……お昼の売上に影響しないか悩んでたの」
「ああ、そういうことね」
子供たちの昼食を、代表して見守ってくれていた尚が訳知り顔で頷いた。
いまだ理解できていない実希子は噛みつく――というほどではないが、それでも不満げに唇を尖らせる。
「一人だけで納得してんなよ。つーか、本当にわかってんだろうな」
「実希子ちゃんじゃあるまいし、当然でしょ。
いい? 確かに予想外の売上にはなったけど、購買者の大半は女子高生だったの」
「それのどこが問題なんだ? あっ、男子の売上が減ったってことか?」
「そこは葉月ちゃんが的確に対処してくれたから、問題ないわ。
好美ちゃんが気にしてるのは、本来昼に買う予定だった子たちが、単に朝に買っただけじゃないかってことよ」
「ほーん」
腕を組んで真面目そうな顔つきはしているが、その返事から実希子が理解していないのは明らかだ。
「つまり高校生に対する売上はトータルであまり変わらず、逆に私が声をかけ損なった、店に入れなかった本来のお客さんの分だけ損失を出したんじゃないかってことだね」
「うおっ、葉月までわかってんのか!」
「何、言ってるのよ。学生の頃から好美ちゃんは別格にしても、葉月ちゃんと柚ちゃんは成績上位者だったでしょ。
下位者で苦労した挙句、スポーツの力に頼ったのは私と実希子ちゃん」
「そんなに褒めるなよ」
「さすが成績下位者ね」
半眼で睨まれても、トレードマークのポニーテールをゆらゆら揺らす実希子はまったく動じない。
「それなら学校にも看板娘を連れてくか? パンを持たせて職員室に売り込みをかけるんだ」
「……確かに効果は絶大そうだけど、あまり繰り返すと悪感情を抱く先生も出てきかねないわね」
実希子の意見具申をやんわりと撥ね退け、しかし好美も効果的な対策は打ち出せず。
「とりあえず普段通りに売って、様子を見るしかないんじゃない」
店主らしくそうまとめた葉月は、それよりもと三人の愛らしい天使を見つめる。
「頑張って働いてくれた子供たちにお給料を払わないとね。茉優ちゃん」
「待ってましたぁ。デザートだよぉ」
普段より少なめの昼食の最後に、茉優が持ってきたのは甘いミルクに浸した食パンだった。
これならまだ一歳の二人も食べられるし、朱華も好物だ。
案の定、わあいと喜んでスプーンやら手掴みで食べ始める朱華と穂月。
しかし希は黙って実希子を見つめるばかり。
「もしかして、あまり手伝えなかったのを気にしてるのかしら」
目立っていた二人と比べて、基本的に希は眠そうに椅子に座っていただけだった。
愛想の欠片も見せなかったが、逆にそれがいいと言っていた女子高生も少なくなかったのだから人間は不思議である。
だが尚の呟きに、実希子は目を閉じて首を左右にゆっくり振った。
「こいつがそんな玉かよ。これは自分で食べるのを面倒臭がってやがるだけだ。まだ一歳児だってのに先が思いやられる」
そう言いながらも実希子が食べさせてやろうとする気配を見せると、真顔のまま希はすかさず口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる