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さらに孫たちの学生時代編
夏休みは海にお芝居にと大忙しです、そして新主将となった陽向のモットーも知ることができました
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「海だーっ!」
インターハイを最高の形で締めくくり、穂月は毎年恒例の家族旅行を全力で楽しもうと海にダイブする。
住んでいる地方から車で移動すること2時間と少し。穂月が小さい頃から、祖父が穴場として知っていたこの海にはよく遊びに来ていた。
「ほっちゃん、幾ら準備運動をしたからといって、最初からそんなに飛ばしたら足を吊るかもしれないです!」
穂月の勢いに危険を感じたらしく、セパレートタイプの水着を着た沙耶が慌てておいかけてきた。そのすぐ後ろには悠里がいる。フリル付きのワンピースタイプが可愛らしい容姿に、とてもよく似合っていた。
「春也たちも盆前に来られてよかったな」
うりうりと陽向に頬を肘で小突かれた弟が顔を顰めた。そのわりに態度はあまり嫌そうでないことから、2人の仲の良さが窺える。
「どっちかって言うと、来られない方が良かったんだけどな」
8月上旬に行われた東北大会で、弟のチーム――去年まで穂月たちが在籍していた中学校は早々に敗退してしまった。さぞ悔しがってるかと思いきや、戻ってきたと思ったらどこかに出かけて行って、やたら艶々した顔になっていたのが印象的だった。理由は聞いても教えてもらえなかった。
「いつもは穂月たちの大会が終わるのを待って、盆が過ぎてからだったから、8月下旬になることが多かったもんな」
指を折りつつ、思い出すように希の母親が瞳を上に向けた。
「インターハイは開催時期が早かったもんねー。道理であーちゃんやまーたんが、よく穂月たちの応援に来てくれてたわけだよ」
沙耶と悠里とひと泳ぎしてから、穂月は母親からバスタオルを受け取って濡れた髪を拭く。立てられたパラソルの日陰では、水着になりながらも希がチェアで優雅に眠っていた。
「去年まではいいとこまでいっても予選で負けてたからね。応援の時間はたっぷりあったのよ……」
砂浜に弟の胴体を埋めて遊んでいた朱華がどこか遠い目をした。
「その分、今年の夏に喜びを持ち越せたと思えばよろしいのですわ」
「可愛いこと言ってくれるじゃない。……体つきはちっとも可愛くないけど」
「変なところを睨まないでいただけます!?」
朱華と凛のやり取りに、誰より速く反応したのは悠里だった。
「あーちゃんの言う通りなの! 今すぐゆーちゃんと体を交換して可愛くなるの!」
「ひいっ!? 目が血走ってますわ!」
「りんりんとのぞちゃんだけずるいの! ついでにさっちゃんも反則なの! お勉強キャラなのに胸が1番とかとんだチート野郎なの!」
「私は女性なので野郎ではないのですが……それに勝手に大きくなったものをあれこれ言われても……」
「うわあああん、さっちゃんがいじめるのー! ほっちゃんに慰めてほしいの!」
「虐めてないんですが!?」
「おー」
*
「さあ、まだ夏休みだからって気を抜いてちゃ駄目よ!」
腕を組んで部員の前にデンと立つ朱華に、インターハイ後から新主将の座を譲られていた陽向が怪訝そうにする。
「留年したところで、来年のインターハイには出られないぞ?」
「誰がそんな話をしてるのよ! 受験勉強だって当然するけど、私たちにはまだやるべきことがあるのよ!」
自慢の長髪を払い、胸を反らした朱華が親愛たっぷりの視線を向けたのは他ならぬ穂月だった。
「ほっちゃんなら忘れてないわよね。夏が終われば秋。そう、文化祭よ! そして文化祭といえば――」
「――演劇だね!」
「その前に新人戦だ! お願いだから本業をついでにしないでくれ!」
陽向が思い止まらせようと肩を掴んでくるが、その程度では走り出した情熱を止められない。
「諦めた方がよろしいですわ。ほっちゃんはそもそも演劇部で活動したがっていたのですもの」
「うぐぐ……りんりんに諭されると微妙に納得いかないが、確かにその通りなんだよな……」
「相変わらずまーたん先輩のわたくしへの評価は散々ですわね……」
こちらはすでに諦めたようだが、もう1人過去に未練を残す者がいた。
「……アタシも帰宅部だった。ほっちゃんだけじゃなく、アタシの希望も叶えて欲しい」
「のぞちゃんは俺が何言っても、そこらへんで寝てんじゃねえか! たまには練習中ずっと起きててくれよ!」
「……ここに鬼がいる」
「当たり前のことを言っただけだぞ!?」
「さあさあ、お喋りはこのくらいにして練習をするんだよ!」
気温の高い夏というのもあり、グラウンドの練習が短めに終わっていたので、それ以外は穂月と協力してくれる部員の時間になる。もしかしたら美由紀もこのために、わざわざそうしてくれたのもしれない。
「インターハイ制覇をした今、ほっちゃんに抜けられたら悲惨だもの。しかも慕われてるから合計で4人も退部しかねないからね。美由紀先生が気を遣うのも十分にあり得るわ」
「そういうことよ! だからこの機会におもいきり堪能してちょうだい! もちろんメインはソフトボール部だけどね!」
朱華が事前に借りておいてくれた視聴覚室に、ジャージ姿の美由紀までもが乱入してきた。承諾した部員だけとはいえ、ソフトボール部の活動なのだから顧問が必要になるという理由からだった。
「春はソフトボール部は何やってんですかって笑われたけど、精神を鍛えるためだったとインターハイ制覇後に言ってやったら無言になってたわ。野球部の監督なんだけどね。フン、日頃からチラチラと見てる報いよ。どいつもこいつも年増だと思ってバカにしやがって!」
ダンダンと床を踏み鳴らす美由紀。とても教師とは思えない振る舞いである。
だがそんなことよりも穂月には気になった点があった。
「野球部の監督さんって、美由紀先生をよく見てるの?」
「そうなのよ。昼とかわざわざ自分で作ったお弁当なんかを見せてきて、苦手なら得意な人に任せたらどうです、なんて相手がいないことを知りながら言ってきたりすんのよ! 性格悪いったらないわ!」
「まったくその通りなの! 徹底抗戦すべきなの! そっちの方が絶対面白――もがもが」
いきなりタハイテンションになった悠里の口を、沙耶が慌てて塞いだ。
「ひとつ聞きたいんですが、野球部の監督さんはご結婚は……」
「してるわけないでしょ! 40過ぎて独身よ! まだまだ体力には自信があるとか、意外と家事も好きだとか言ってアピールしてるけど、もう手遅れだっての!」
「手遅れなのは拗らせBBAの頭――ふんがふんが」
今度は凛が悠里の口を両手で押さえていた。
「さ、さあ、演劇の練習を始めますわよ! どうしても演劇部と比べられるでしょうから、気合を入れないと大変なことになりますわ!」
「りんりんの言う通りだよ! 演劇部先輩も楽しみにしてるって言ってたんだよ!」
「演劇部先輩って……人の名前をあまり覚えようとしないのは遺伝なのかしら」
考え込むように呟いた朱華に、どうかしたのか尋ねてみたが気にしないでと微笑まれた。
*
夏休みが明けると、それまでになかった活気が学校全体を包み込むようになった。それはグラウンドで部活に励んでいても感じられる。
「いつまでも休み気分でいるんじゃねえぞ! 特にのぞちゃん! 休みでなくても寝てるのは知ってるが、せめてもう少し起きててくれ!」
「……夏の日差しはお肌の大敵」
「今日まで気にしてるの1度も聞いたことねえけどな!?」
陽向に引き摺られ、仕方なしに希も守備練習に加わる。捕手が本職ではあるが、遊撃に入っての強いゴロも難なく捌いてみせる。あまりの上手さに、チームの主力となった2年生からも歓声が上がる。
そのうちの1人が「これが才能か」と小声で零した。そしてそれを聞いた瞬間、陽向が目を吊り上げた。
「ふざけんな! そういう台詞は、才能のせいにできるだけ練習をしてから言え! じゃなきゃ努力してる人間全員に失礼だ!」
弱音を吐いた2年生が慌てて謝ると、今度は一転して微笑を浮かべる。
「俺の文句を素直に聞けるんなら、まだ大丈夫だよ。確かに上手い奴に嫉妬することはあるだろうが、そういう奴らだって1人じゃ勝てねえんだ。俺らがいてやんなきゃ、試合にすらならねえんだよ。そうやって考えりゃ、差なんてあってないようなものじゃねえか」
「おー! さすがまーたんだよ!」
「わかってくれるか、ほっちゃん!」
「お芝居も1人じゃ……できるような気もしてきたよ。そうだ! 試すためにもちょっとランニングに行ってくるよ!」
「絶対嘘だ! こっそり遊ぶ気マンマンじゃねえか!」
「……アタシも付き合う」
「のぞちゃんはほっちゃんの隣で寝たいだけだよな!? そうはいくか!」
「ふおおっ!?」
強烈なタックルで、穂月は希もろとも倒される。夏休みにたっぷりお芝居できた感動そのままに、2学期も楽しもうとしたところ早速阻止されてしまった。
「練習後に俺が付き合ってやるから、まずはソフトボールの練習だ!」
「おー」
「……イメージトレーニングなら任せて」
またしても陽向が鬼みたいになりかけたところで、朗らかな笑い声が近づいてきた。様子を見に来たらしい朱華だ。
「インターハイ制覇後だからプレッシャーになってないか心配してたけど、しっかりキャプテンをやってるみたいね」
「当たり前だろ。ほっちゃんたちとは小学校からの付き合いなんだ。嫉妬なんてとっくに通った道だしな。楽しんで笑いながら厳しく。それが俺のモットーだぜ」
「ふふ、頑張って」
「もちろんだ。皆、わざわざ元キャプテンが練習に参加しに来てくれたぞ!」
「えっ!? 今日はそのつもりなかったんだけど……」
「いいじゃねえか、新人戦のためにも打撃投手をしていってくれよ」
「仕方ないわね。じゃあ、まずはまーたんからよ。新主将として部員に見本を見せないとね」
茶目っ気たっぷりに朱華が笑うと、陽向はとても嬉しそうにバットを取りに走り出した。
インターハイを最高の形で締めくくり、穂月は毎年恒例の家族旅行を全力で楽しもうと海にダイブする。
住んでいる地方から車で移動すること2時間と少し。穂月が小さい頃から、祖父が穴場として知っていたこの海にはよく遊びに来ていた。
「ほっちゃん、幾ら準備運動をしたからといって、最初からそんなに飛ばしたら足を吊るかもしれないです!」
穂月の勢いに危険を感じたらしく、セパレートタイプの水着を着た沙耶が慌てておいかけてきた。そのすぐ後ろには悠里がいる。フリル付きのワンピースタイプが可愛らしい容姿に、とてもよく似合っていた。
「春也たちも盆前に来られてよかったな」
うりうりと陽向に頬を肘で小突かれた弟が顔を顰めた。そのわりに態度はあまり嫌そうでないことから、2人の仲の良さが窺える。
「どっちかって言うと、来られない方が良かったんだけどな」
8月上旬に行われた東北大会で、弟のチーム――去年まで穂月たちが在籍していた中学校は早々に敗退してしまった。さぞ悔しがってるかと思いきや、戻ってきたと思ったらどこかに出かけて行って、やたら艶々した顔になっていたのが印象的だった。理由は聞いても教えてもらえなかった。
「いつもは穂月たちの大会が終わるのを待って、盆が過ぎてからだったから、8月下旬になることが多かったもんな」
指を折りつつ、思い出すように希の母親が瞳を上に向けた。
「インターハイは開催時期が早かったもんねー。道理であーちゃんやまーたんが、よく穂月たちの応援に来てくれてたわけだよ」
沙耶と悠里とひと泳ぎしてから、穂月は母親からバスタオルを受け取って濡れた髪を拭く。立てられたパラソルの日陰では、水着になりながらも希がチェアで優雅に眠っていた。
「去年まではいいとこまでいっても予選で負けてたからね。応援の時間はたっぷりあったのよ……」
砂浜に弟の胴体を埋めて遊んでいた朱華がどこか遠い目をした。
「その分、今年の夏に喜びを持ち越せたと思えばよろしいのですわ」
「可愛いこと言ってくれるじゃない。……体つきはちっとも可愛くないけど」
「変なところを睨まないでいただけます!?」
朱華と凛のやり取りに、誰より速く反応したのは悠里だった。
「あーちゃんの言う通りなの! 今すぐゆーちゃんと体を交換して可愛くなるの!」
「ひいっ!? 目が血走ってますわ!」
「りんりんとのぞちゃんだけずるいの! ついでにさっちゃんも反則なの! お勉強キャラなのに胸が1番とかとんだチート野郎なの!」
「私は女性なので野郎ではないのですが……それに勝手に大きくなったものをあれこれ言われても……」
「うわあああん、さっちゃんがいじめるのー! ほっちゃんに慰めてほしいの!」
「虐めてないんですが!?」
「おー」
*
「さあ、まだ夏休みだからって気を抜いてちゃ駄目よ!」
腕を組んで部員の前にデンと立つ朱華に、インターハイ後から新主将の座を譲られていた陽向が怪訝そうにする。
「留年したところで、来年のインターハイには出られないぞ?」
「誰がそんな話をしてるのよ! 受験勉強だって当然するけど、私たちにはまだやるべきことがあるのよ!」
自慢の長髪を払い、胸を反らした朱華が親愛たっぷりの視線を向けたのは他ならぬ穂月だった。
「ほっちゃんなら忘れてないわよね。夏が終われば秋。そう、文化祭よ! そして文化祭といえば――」
「――演劇だね!」
「その前に新人戦だ! お願いだから本業をついでにしないでくれ!」
陽向が思い止まらせようと肩を掴んでくるが、その程度では走り出した情熱を止められない。
「諦めた方がよろしいですわ。ほっちゃんはそもそも演劇部で活動したがっていたのですもの」
「うぐぐ……りんりんに諭されると微妙に納得いかないが、確かにその通りなんだよな……」
「相変わらずまーたん先輩のわたくしへの評価は散々ですわね……」
こちらはすでに諦めたようだが、もう1人過去に未練を残す者がいた。
「……アタシも帰宅部だった。ほっちゃんだけじゃなく、アタシの希望も叶えて欲しい」
「のぞちゃんは俺が何言っても、そこらへんで寝てんじゃねえか! たまには練習中ずっと起きててくれよ!」
「……ここに鬼がいる」
「当たり前のことを言っただけだぞ!?」
「さあさあ、お喋りはこのくらいにして練習をするんだよ!」
気温の高い夏というのもあり、グラウンドの練習が短めに終わっていたので、それ以外は穂月と協力してくれる部員の時間になる。もしかしたら美由紀もこのために、わざわざそうしてくれたのもしれない。
「インターハイ制覇をした今、ほっちゃんに抜けられたら悲惨だもの。しかも慕われてるから合計で4人も退部しかねないからね。美由紀先生が気を遣うのも十分にあり得るわ」
「そういうことよ! だからこの機会におもいきり堪能してちょうだい! もちろんメインはソフトボール部だけどね!」
朱華が事前に借りておいてくれた視聴覚室に、ジャージ姿の美由紀までもが乱入してきた。承諾した部員だけとはいえ、ソフトボール部の活動なのだから顧問が必要になるという理由からだった。
「春はソフトボール部は何やってんですかって笑われたけど、精神を鍛えるためだったとインターハイ制覇後に言ってやったら無言になってたわ。野球部の監督なんだけどね。フン、日頃からチラチラと見てる報いよ。どいつもこいつも年増だと思ってバカにしやがって!」
ダンダンと床を踏み鳴らす美由紀。とても教師とは思えない振る舞いである。
だがそんなことよりも穂月には気になった点があった。
「野球部の監督さんって、美由紀先生をよく見てるの?」
「そうなのよ。昼とかわざわざ自分で作ったお弁当なんかを見せてきて、苦手なら得意な人に任せたらどうです、なんて相手がいないことを知りながら言ってきたりすんのよ! 性格悪いったらないわ!」
「まったくその通りなの! 徹底抗戦すべきなの! そっちの方が絶対面白――もがもが」
いきなりタハイテンションになった悠里の口を、沙耶が慌てて塞いだ。
「ひとつ聞きたいんですが、野球部の監督さんはご結婚は……」
「してるわけないでしょ! 40過ぎて独身よ! まだまだ体力には自信があるとか、意外と家事も好きだとか言ってアピールしてるけど、もう手遅れだっての!」
「手遅れなのは拗らせBBAの頭――ふんがふんが」
今度は凛が悠里の口を両手で押さえていた。
「さ、さあ、演劇の練習を始めますわよ! どうしても演劇部と比べられるでしょうから、気合を入れないと大変なことになりますわ!」
「りんりんの言う通りだよ! 演劇部先輩も楽しみにしてるって言ってたんだよ!」
「演劇部先輩って……人の名前をあまり覚えようとしないのは遺伝なのかしら」
考え込むように呟いた朱華に、どうかしたのか尋ねてみたが気にしないでと微笑まれた。
*
夏休みが明けると、それまでになかった活気が学校全体を包み込むようになった。それはグラウンドで部活に励んでいても感じられる。
「いつまでも休み気分でいるんじゃねえぞ! 特にのぞちゃん! 休みでなくても寝てるのは知ってるが、せめてもう少し起きててくれ!」
「……夏の日差しはお肌の大敵」
「今日まで気にしてるの1度も聞いたことねえけどな!?」
陽向に引き摺られ、仕方なしに希も守備練習に加わる。捕手が本職ではあるが、遊撃に入っての強いゴロも難なく捌いてみせる。あまりの上手さに、チームの主力となった2年生からも歓声が上がる。
そのうちの1人が「これが才能か」と小声で零した。そしてそれを聞いた瞬間、陽向が目を吊り上げた。
「ふざけんな! そういう台詞は、才能のせいにできるだけ練習をしてから言え! じゃなきゃ努力してる人間全員に失礼だ!」
弱音を吐いた2年生が慌てて謝ると、今度は一転して微笑を浮かべる。
「俺の文句を素直に聞けるんなら、まだ大丈夫だよ。確かに上手い奴に嫉妬することはあるだろうが、そういう奴らだって1人じゃ勝てねえんだ。俺らがいてやんなきゃ、試合にすらならねえんだよ。そうやって考えりゃ、差なんてあってないようなものじゃねえか」
「おー! さすがまーたんだよ!」
「わかってくれるか、ほっちゃん!」
「お芝居も1人じゃ……できるような気もしてきたよ。そうだ! 試すためにもちょっとランニングに行ってくるよ!」
「絶対嘘だ! こっそり遊ぶ気マンマンじゃねえか!」
「……アタシも付き合う」
「のぞちゃんはほっちゃんの隣で寝たいだけだよな!? そうはいくか!」
「ふおおっ!?」
強烈なタックルで、穂月は希もろとも倒される。夏休みにたっぷりお芝居できた感動そのままに、2学期も楽しもうとしたところ早速阻止されてしまった。
「練習後に俺が付き合ってやるから、まずはソフトボールの練習だ!」
「おー」
「……イメージトレーニングなら任せて」
またしても陽向が鬼みたいになりかけたところで、朗らかな笑い声が近づいてきた。様子を見に来たらしい朱華だ。
「インターハイ制覇後だからプレッシャーになってないか心配してたけど、しっかりキャプテンをやってるみたいね」
「当たり前だろ。ほっちゃんたちとは小学校からの付き合いなんだ。嫉妬なんてとっくに通った道だしな。楽しんで笑いながら厳しく。それが俺のモットーだぜ」
「ふふ、頑張って」
「もちろんだ。皆、わざわざ元キャプテンが練習に参加しに来てくれたぞ!」
「えっ!? 今日はそのつもりなかったんだけど……」
「いいじゃねえか、新人戦のためにも打撃投手をしていってくれよ」
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