冷徹秘書は生贄の恋人を溺愛する

砂原雑音

文字の大きさ
19 / 21
番外編

黒木貴仁の独白2

しおりを挟む


「は……、佳純……力抜け」

 彼女の中が、絡みつくように蠢いている。温かい蜜の中に沈んでいる感覚に加えて、全体を締め付けられていて理性が飛びそうになる。

 だから言ったのに、佳純は浅く息を吐きながら、どこか拙い動きで俺の身体に手を回し、しがみついてくる。

「……くそ。かわいい」

 うわごとのように零れた呟きを、佳純に聞かれただろうか。気を散らさなければと思うのに、無意識に煽ってくるのだから、堪らない。

「黒木、さ……くろき、さん、すき」
「ああ、聞いてる。わかったから……」

 細い腕が絡みつく。息を大きくひとつついてから目を開けると、小さな頭がすりすりと胸に擦り寄ってくるのが見えた。

 顔を擦って、少し首を傾けて、それで見えた彼女の顔は、とろりと溶けて目の焦点が合ってない。

 そこで、ぷつ、と我慢の糸が切れた。
 大切に、気持ちの良いことだけをしてやろうと思っていたのに、こっちの我慢を全部無駄にしたのは、彼女の方だ。

「……くそ。責任取れよ、お預けにされた分も全部払ってもらうからな」

 そうだ。これまでの責任も、全部ここで払ってもらおう。


 彼女の中をかき混ぜ揺らす。その度に、声を漏らす濡れた唇を見ていると、触れたくなって親指を下唇に当てた。赤い舌が覗くのが見え、しゃぶりつく。それだけで身震いした彼女が……もう、どうしようもなく。

「……佳純」
「ああっ、ああ……」

 頬を上気させ、汗と涙でぐちゃぐちゃになった佳純を撫でる手は、どうしても優しくなる。裏腹に、繋がる場所は容赦なく責め立ててしまう。

 汗ばんだ首筋に顔を伏せ、口づけながら穿ち、彼女の中が収縮する。
 一度目は、呆気なかった。寧ろ、一度達してしまわなければ、自分の欲ばかりを優先してしまいそうなほど、自分が昂っているとわかっていた。

「あああああっ」

 俺の背中にある華奢な手が爪を立てるが、汗で滑って擽ったい程度のことで、そんなことすら可愛らしい。
 蠕動する彼女の中の誘惑に逆らわず、二度、三度と強く腰を押し付けると、身震いするような快感に息を止め、吐き出した。

「……は、あぁ」

 しばらく、彼女の上に覆い被さったまま身動きせずにいると、彼女の身体が小さく痙攣を繰り返し、やがてぐったりと力を抜くのが伝わってくる。
 首筋、耳、目元とキスをしてから一度、彼女の中から抜いて身体を離す。熱冷めやらぬ己の分身に苦笑しながら、それでも少し頭は冷えた。

 彼女を見れば、どこかぼんやりとした目でこちらを見ていて、彼女の足の間から動かない俺を不思議に思っているのかもしれない。思わず口元が笑みを作る。

 一度で終わるわけないだろう。

 ふたたび蜜口にあてがって、彼女の腰を片手で撫でる。

「ふあ」

 佳純の目が、一瞬心地良さげに細くなる。しかし次には、驚いたように見開かれた。

「……あの、黒木さん?」
「ん?」

 案の定戸惑う彼女を他所に、腰を撫でていた手を下腹に当て、そこで止める。彼女が苦しくない程度に軽く圧迫すると、自身の先を潜り込ませた。上側の壁を擦るようにして、今度はゆっくりと奥へ進む。

「あ、あああ……」

 深くなるにつれしなる身体を見下ろし、その反応と表情をつぶさに見つめる。ある一点で、彼女の顔がくしゃりと歪んだ。

「ひぁんっ……あっ」

 ひくん、と釣ったように上がった片足を、抱き寄せる。下腹は変わらず抑えて中からの刺激が彼女に伝わりやすいようにしながら、腰を軽く前後させると喘ぐ声が一層高くなった。

 「今度はゆっくり、良いところを探そうか」

 寝かさないと言ったしな。そう確認したが、彼女には届いていなかったかもしれない。

 彼女の中の『良いところ』を見つけて刺激して、そこが『良い』のだと彼女自身にも刻み付ける。
 少し浅いところを腹側に向けて擦り付けると、身を捩りながら良く鳴いた。

「佳純」

 快感が過ぎて苦しげに顔を歪ませる彼女の名前を呼びながら、少し緩めてやればほろほろと涙を溢す。

「ここがいいか? もう少し?」

 尋ねるとこくこくと素直に頷き、甘い責め苦を受け止める。その姿にまた、いとおしくなる。息を乱し汗を滲ませる身体を何度も撫でてやりながら、口づけて宥めながら、幾度か達した後。

 両足を掴み胸に押し付け、彼女の一番奥深くまで己を沈ませる。

「……そこ、だめ、っ……」
「ここは慣れないか?」

 これまでで一番、苦しげな表情をした。慣れないせいで痛みがあるのかもしれないと一度腰を引く。
 しかし、そこがどの場所よりも敏感であるということでもあり。

 子宮口を思い切り突きたい衝動を堪えて、小さく叩く程度に、数度押し上げる。

 それだけで彼女の中が強く収縮し、搾り取るような動きをみせる。背筋を反らせて戦慄く身体を押さえるように、握り合わせた手に力を込めてシーツに押し付けた。


 彼女の一際細く続いた矯声の後。部屋に響くふたり分の乱れた息づかいは、徐々に穏やかになる。
 達した直後を責め立てられて、彼女の身体は腕の中で脱力しきっていた。閉じ込めるように抱きしめながら、首筋にキスをして汗に濡れた肌を撫でる。疲れきった身体はそれでも、その度にひくひくと小さく反応していた。それがたまらなく、どうしようもなく、こちらの恋情を煽る。耳許に唇を寄せ、たまらず名前を呼んでいた。

「佳純………」

 この温もりは、もう離せない。

「好きだ。必ずそばに置く」
 
 気づけばそう囁いていた。彼女に届いていたかは知らないが。
 この先のことを知れば戸惑うに違いない佳純を、どうして口説こうか。






 
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

諦めて身を引いたのに、エリート外交官にお腹の子ごと溺愛で包まれました

桜井 響華
恋愛
旧題:自分から身を引いたはずなのに、見つかってしまいました!~外交官のパパは大好きなママと娘を愛し尽くす ꒰ঌシークレットベビー婚໒꒱ 外交官×傷心ヒロイン 海外雑貨店のバイヤーをしている明莉は、いつものようにフィンランドに買い付けに出かける。 買い付けの直前、長年付き合っていて結婚秒読みだと思われていた、彼氏に振られてしまう。 明莉は飛行機の中でも、振られた彼氏のことばかり考えてしまっていた。 目的地の空港に着き、フラフラと歩いていると……急ぎ足の知らない誰かが明莉にぶつかってきた。 明莉はよろめいてしまい、キャリーケースにぶつかって転んでしまう。そして、手提げのバッグの中身が出てしまい、フロアに散らばる。そんな時、高身長のイケメンが「大丈夫ですか?」と声をかけてくれたのだが── 2025/02/06始まり~04/28完結

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。