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しおりを挟むアルフォンスに連れられリゼットは中庭へと出た。暗がりの中、星と月明かりがアルフォンスとリゼットと照らし出す。
「リゼット、こっちにおいで」
小さな噴水の縁にアルフォンスは腰掛けると、手を伸ばしリゼットを招く。彼に言われるがまま、隣に座った。
「ようやく、二人きりだね」
「……アルフォンス様」
手に手を重ねられ握られる。彼の手は、とても熱かった。
「誰か気になる男はいた?」
「いえ……正直、よく分かりません」
「そっか。でもレンブラントとは随分と仲良く話していたね」
確かにレンブラントとは話していて愉しい。でもそれは学友でもあり昔から良く知っているからであって、彼の妻になりたい訳ではない。
「レンブラント様は、大切な友人ですから」
「ならさ、僕は?僕の事、リゼットはどう思っている?好き?嫌い?」
何とも答え辛い質問の仕方だ。アルフォンスは学院では二つ歳上の先輩で、関係性は甥と叔母になる。無論彼の事も昔から良く知っている。好きか嫌いかと言われたら、嫌いではない……。
「嫌いじゃないです……」
「なら、好きって事になるけど良い?」
「は、はい……」
良いのかなぁ、と少し悩むが確かに間違いではない。答えがどちらかしかないので、嫌いじゃないなら、必然的に好きという事になる。
「じゃあ、クロヴィス叔父上の事、どう思っている?好き?嫌い?」
そんな事、言うまでもない……決まっている。
黙り込むリゼットに、アルフォンスは苦笑する。
「そうだよね。君を捨てる男の事なんて、好きなんて言えないよね」
捨てる……その言葉に胸が苦しくなる。目をキツく閉じ俯いた。
「でも本当酷い人だなぁ。十年連れ添った妻をこんなにも簡単に捨てるなんて、薄情だよ。でもやっぱり理由は、あれかなぁ……他に好きな女性がいるからとかかな」
リゼットは弾かれる様にして顔を上げアルフォンスを見た。
「ご存知、なんですか……」
「あぁ、うん、まあね。相手が誰かまでは知らないけど……。リゼットは誰から聞いたの?」
「クロヴィス様から、直接……」
半信半疑だった。クロヴィスに言われても、もしかしたら嘘なんじゃないかと、心の何処かで思っていた。だが、アルフォンスが知っていると言うならやはり事実なのだろう……。
「好きな方がいらっしゃって、その女性と結婚したいから私がいると困ると……」
情けないが、自分で言った言葉に落ち込んでしまう。
「それでも、私は……」
「リゼット!」
言葉を言い終える前に、リゼットはアルフォンスに抱き締められた。
「今は辛いかも知れない。直ぐに忘れる事も難しいよね。だから無理する必要はないんだよ。リゼット……僕ならそんな君の全てを受け入れる覚悟がある。君が叔父上の事を想っていても構わない。その君ごと愛するよ。だから……僕を選んで」
彼は耳元で、そう刹那げに囁いた。
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