愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。

秘密 (秘翠ミツキ)

文字の大きさ
18 / 29

17

しおりを挟む


「兄上、リゼットに何をしたんですか」

責める様にレンブラントがアルフォンスに詰めるが、彼は意に返す事なく鼻を鳴らす。

「人聞きの悪い事言わないでよ。何もしてないよ」

少し前、リゼットを連れアルフォンスが広間に戻って来た。すると、リゼットはクロヴィスの前へ来ると、笑みを浮かべた。そして……。

『クロヴィス様、私アルフォンス様の元へ嫁ぎます』

そう言った。クロヴィスは暫し呆然としたが「それが君の意思なら」とだけ返した。
その後直ぐに夜会はお開きとなった。リゼットの夫選びの目的は済んだので、参加者等は肩を落としながらも早々に帰って行った。
リゼットは部屋に下がらせたので、残っているのはクロヴィスとレンブラント、アルフォンスだけだ。

「そうだ、聞きましたよ。叔父上には愛する女性がいらっしゃっるそうですね。初耳で驚きました。リゼットという妻がありながら、ずっと浮気されていたんですね。全く酷い人だ、彼女が不憫でならない。まあでも、これで叔父上は彼女を厄介払い出来てその女性と結婚出来て幸せになれますね。僕は愛するリゼットを妻に迎えられて幸せになるし、正に皆ハッピーエンドだ」

クロヴィスはグッと堪える様にして拳を握った。レンブラントが怪訝そうな顔をする。

「叔父上、随分と悔しそうな顔されますね。それはそうか。何しろ僕だけには何があってもリゼットを渡したくなかったんですから」

「っ……」

「それに、こんな夜会は茶番だ。本当は初めからレンブラントをリゼットの夫にするつもりだったんですよね?レンブラントならリゼットを溺愛なんてしない。かと言って蔑ろにもしない。付かず離れずの夫婦になれる。貴方は、狡い人だ。本当は彼女を誰にも奪られたくない。だが自分で一度決めた信念を曲げる事も出来ない臆病者だ。リゼットの幸せを口では願いながら、自分じゃない男と幸せになるのが赦せないんでしょう?僕が彼女を心から愛していると知っているから……彼女が僕のその愛に応えるのが耐えられないと思ったんだ。僕を除いた今夜の参加者の中なら、リゼットは絶対に友人であり昔から良く知るレンブラントを選ぶと踏んだ。でも予定外に僕が現れ、結局リゼットは僕を選んだ。残念な話ですね、叔父上」


何も反論が出来なかった。意図的では無かった。無意識だったが、全てアルフォンスの言う通りかも知れない。

あの日、彼女の兄代わりになると誓い、でも何時しか男として彼女を愛する様になり、結局兄にはなってあげられなくて……もう、どうすれば良いのか分からなくなってしまったんだ……。




◆◆◆


十年前ー。

『兄上、いきなり嫁を娶れとはどう言う事ですか⁉︎』

クロヴィスは国王である兄コンラートに急遽呼び出され、学院を早退して城に向かった。

『実はな、アリセアから服従の証として献上品なるものが送られて来てな』

『献上品、ですか……』

話が全く見えない。何故自分が嫁を娶る事と、アリセアからの献上品が関係しているのか……。クロヴィスは眉根を寄せる。

『アリセアは、弱小国故此方から出向く前に先手を打ち我が国に服従する意思を見せた。アリセアは貧しく経済力も乏しい。貢ぐ物が無く仕方が無かったのだろうな』

『はぁ……?』

やはり、何が言いたいのかさっぱりだ。思わず間の抜けた声が洩れてしまった。コンラートはワザとらしい咳払いをする。

『兎に角、ついて来なさい』

訳の分からないままコンラートの後をついていくと、中庭に出た。

『クロヴィス、あそこに居るのがアリセアより送られて来ただ』

『なっ、献上品ってまさか……』

『そのまさかだ』

兄の視線の先にあった、いや居たのは小さな少女だった。白いベンチにちょこんと腰掛けている。

『リゼット嬢だ。まだ五つになったばかりらしくてな……。流石に私は娶る事は出来ん』

それはそうだろう。クロヴィスと兄ですら十五歳も離れているのだ。あの少女となら親子以上に離れている事になる。何の躊躇いもなくコンラートが妃に迎えたら、それはただの変態だと周りから思われるだろう。そんな事になったらクロヴィスも軽蔑するかも知れない。

『でしたら何処かの家に養女に出されたら如何ですか』

普通に考えて、その方が現実的だ。彼女が十五、六の少女だったならば、娶るというのも分かる。だがまだ五歳だ。無理矢理結婚させる理由が分からない。

『……それはダメだ。幾ら弱小国と言えど、向こうにも体裁があるだろう。無下には出来ん』

『どういう事ですか』

『彼女は、アリセア国の王女だからな』


しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。

石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。 七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。 しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。 実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。 愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む

佐藤 美奈
恋愛
公爵家の広大な庭園。その奥まった一角に佇む白いガゼボで、私はひとり思い悩んでいた。 私の名はニーナ・フォン・ローゼンベルク。名門ローゼンベルク家の令嬢として、若き騎士アンドレ・フォン・ヴァルシュタインとの婚約がすでに決まっている。けれど、その婚約に心からの喜びを感じることができずにいた。 理由はただ一つ。彼の幼馴染であるキャンディ・フォン・リエーヌ子爵令嬢の存在。 アンドレは、彼女がすべてであるかのように振る舞い、いついかなる時も彼女の望みを最優先にする。婚約者である私の気持ちなど、まるで見えていないかのように。 そして、アンドレはようやく自分の至らなさに気づくこととなった。 失われたニーナの心を取り戻すため、彼は様々なイベントであらゆる方法を試みることを決意する。その思いは、ただ一つ、彼女の笑顔を再び見ることに他ならなかった。

処理中です...