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しおりを挟むあれから数日、リゼットの熱は下がり回復した。今日は遂に、国王立会の元、正式に手続きをする。
朝早くからリゼットは準備に追われていた。
結局高熱は十日程続き、二日前にようやく熱は下がった。予定より少し遅くなってしまったが、今日クロヴィスと離縁し、そのままアルフォンスと婚姻を交わす。
「……」
リゼットは部屋を見渡した。荷物は外に運び出されて、がらんどうになっている。今日この部屋を出て屋敷を出たら、此処に戻る事はもうない。手続きが済んだら、そのままアルフォンスが用意した屋敷に行き、そこで暮らす。
夜会の夜以降、クロヴィスとは会っていない。結局彼はリゼットが寝込んでいる間、一度も見舞ってくれる事はなかった。それでも彼が酷く恋しい。だから今日久々に彼に会える事が嬉しくて仕方がない。だが彼と会うと言う事は同時に彼とお別れする事を意味する……。不思議な気分だ。胸が高鳴りながらも締め付けられている。目の奥が熱くなり、身体が小刻みに震えた。
泣いてはダメだ、泣いてはダメー。
最後くらい確りしないと。彼にもう子供ではなく、立派な女性に成長したのだと思って貰えるくらい凛として堂々と振る舞う。もう自分に出来る事は他にない。
「リゼット様……お時間です」
シーラに連れられ、外に出るとヨーナスを始め屋敷の全ての使用人達が並んでいた。笑みを浮かべてはいるが皆一様に複雑そうな表情をしている。そして彼等は深々と頭を下げた。
「今までありがとう、そしてさようなら……これからもクロヴィス様を、宜しくお願いします」
リゼットはめいいっぱい笑って見せた。
◆◆◆
見知らぬ異国の地に一人やって来た。大人達からの奇異の目に晒されて、幼いリゼットは怯えた。
リゼットは侍従に連れられ、この国の国王と謁見をした。国王はため息を吐き、明らかに困り果てている。
『アリシアからの献上品なんだろう』
『まだ小さいのに、可哀想に……』
『陛下はどうなさるのかしら』
『迷惑極まりないな』
ヒソヒソとリゼットを見て、嘲笑したり哀れんだりする大人達からの冷ややかな視線が突き刺さる。
怖いー。
その後、城の中庭へと連れて行かれそこで待つ様に言われた。リゼットは白いベンチに座る。
どれくらい経ったか分からないが、時間の流れが異様に遅く感じた。
何をするでもなく、リゼットはずっと顔を伏せ地面ばかりを見ていた。これからどうなるのだろうか、もう国には帰れない……そんな不安と恐怖ばかりが押し寄せる。
そんな時、フワリと風を感じた。反射的に顔を上げるとそこには、美しい少年が立っていた。
暗めの金色の髪が風に揺れている。彼はリゼットを見て優しく微笑む。
『初めまして、リゼット王女』
そして彼は、リゼットの前に跪いた。
『僕はクロヴィス・ルヴィエです。今日より貴女の夫になりました』
これまで色褪せていた中庭の咲き誇る薔薇の花々が、この瞬間色を付けリゼットの視界を埋め尽くした。甘い薔薇の香りと美しい薔薇の花、そして御伽噺に出てくる様な王子様……。
私は彼に恋をする。だが、それはもう少し先の話だ。
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