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ジュディットの叫び声に、周囲の視線が一気にユスティーナ達に集まる。液体が掛かり濡れているジュディットを見て、騒がしくなった。するとレナードが駆け寄ってくる姿が視界に入った。
「ジュディット、どうしたんだ⁉︎」
「レナード‼︎」
白を基調としたドレスは、赤く染みになっている。それを見たレナードは目を見張り眉根を寄せた。
「聞いて頂戴!ユスティーナ様ったら酷いのよ⁉︎私が飲み物を差し上げたら、私などから受け取った物なんて飲めないって仰って、中身を私に掛けたの。しかもレナードと婚約解消になったのは私の所為だって怒っていらして……私、怖くて……」
涙を浮かべ上目遣いでジュディットはレナードに訴えた。
「ユスティーナ、それは本当なのか」
レナードは、ユスティーナを訝しげな表情で見てくる。そんな彼にユスティーナは唇をキツく結んだ。
もう彼と婚約は解消されたのに、どうしてこんな事になるのだろう。どうしてジュディットは未だに自分に構おうとするのか、分からない。そもそも婚約している時だってそうだった。そんな事をしなくても、レナードがジュディットしか見ていない事は彼女自身がよく分かっている筈だ。
もう、私に構わないで欲しいー。
「それを聞く意味は、ありますか?」
思わず口を突いて出た。ずっとずっと我慢に我慢を重ねて来た。無意識に語尾が強くなるのを自分でも感じた。
「それは、どう言う意味だ」
「もし、私が否定したとしてレナード様は私を信じてくれますか?ジュディット様の言葉ではなく、私の言葉を信じてくれますか?きっと信じてくれませんよね……私が何を言ってもレナード様は、ジュディット様を信じるに決まっています。だって、これまでもずっとそうでしたから……。なので私などに意見を聞く意味はないと、そう言う事です。何か違いますか?」
ユスティーナの言葉に、彼は呆気に取られた様子で、口を半開きにしたまま黙り込んだ。それはそうだろう。ユスティーナだって、自分で驚いている。これまで、彼がどんなにジュディットを庇い優先しようとも文句一つ言わなかった。精一杯作った笑顔で受け入れてきた。だからまさか、自分がこんな事言うなんて思わなかった……。
そんな事を考えている内に少し冷静さを取り戻したユスティーナは、反省をした。
幾ら腹が立ったとはいえ流石に無礼だったかも知れない。だが言ってしまったものは今更どうしようも出来ない。
「ユスティーナ様、もしかして嫉妬なさっているんですか?レナードが私にばかり優しいから……。でももうユスティーナ様はレナードの婚約者でもなんでもないんです。貴女とレナードはただの他人。その事を理解した上で身の程を弁えて下さらないと、困ります。レナードを忘れられない気持ちも分からなくはないですけど、余り執着されると彼も迷惑です」
「違います、私は……」
「あぁ、でも。ユスティーナ様はもうレナードの事なんて興味はありませんでしたね。おかしな事を言ってしまい、ごめんなさい。何しろユスティーナ様は、今はもうヴォルフラムに夢中になられていらっしゃるみたいですものね」
ジュディットはワザと声を張り上げる。そして周りは彼女の言葉に更に響めいた。ユスティーナは目を見開き、口を噤む。心臓が早鐘の様に脈打つ。
「実は私、先日ヴォルフラムと貴女が抱き合っている所を見てしまったの。これって浮気、ですよね?酷いですわ、ユスティーナ様。ご自分がレナードと婚約解消になってしまったからって、まさか私からヴォルフラムを奪おうとするなんて……。あぁ、でも、もしかして……レナードと婚約解消する前からだったりもするのかしら……それならレナードに対しても酷い裏切りですわ」
頭が真っ白になる。まさかあの時、ジュディットに見られていたなんて思わなかった……。不可抗力にしろ、客観的に見れば彼女の言う通りだ。それに以前の事まで指摘され、後めたさを感じる。
黙っている事は肯定した事と同義だ。ユスティーナは何か言わなくてはと焦るが、余りの事態に声が出ない。そもそもどう反論していいかも分からない。だがこのままでは自分だけでなくヴォルフラムの立場まで危うくなってしまう。
周囲からの視線が痛いくらいに刺さり、息苦しい。
「ユスティーナ様、どうなさったの?顔色が悪いですね。で、私に何か仰っる事はないんですか?」
「っ……」
「今この場で、私に跪いて泣いて赦しを乞うなら、今回の件は特別に忘れて差し上げても良いと思っています。私って優しいと思いませんか?」
ジュディットはいやらしい笑みを浮かべ、ユスティーナを見た。周囲から嘲笑する声が聞こえてくる。冷たく蔑む視線が突き刺さる。誰も助けてくれない……誰一人味方などいない。当たり前だ。自分が悪いのだから……。
ユスティーナは軽い目眩を感じ、蹌踉めいた。
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